第6話 休憩からの大群攻略
南の森ダンジョン内のセーフティーゾーン。2人の少女が座っていた。
「アヤネ、さっきのムカデ、結構おいしかったよね。」
「それ、マジでおいしかったよね。」
「おいしかった」と2人とも言っているがそれは決して味のことではない。経験値のことである。
「私は5になりました~。そして3分の2溜まりました~。」
「私は11で5分の2くらいかな。」
「スキルも貰えたけど嬉しいスキルじゃない。」
「何が貰えたの?」
「【囮】。パーティを組んでいるときに囮になると全ステータスが1.5倍になるんだって。持続時間は2分でクールタイムが5分。」
「強いじゃん。」
「強いけど囮にならないといけないんだよ?嫌だよ、私。」
「取得条件は?」
「パーティメンバーに囮にさせられて生き残ること。」
「なんか、ごめん。」
「大丈夫。アヤネは何かあった?」
「私は【忍術I】が【忍術Ⅱ】になって新しく【分身】と【変わり身】が増えたよ。」
「効果は説明聞かなくても分かるわ。自分が3人とかになるやつと誰かと居場所を変えるやつでしょ。」
「まあ、だいたい正解かな。【変わり身】は自分のところに薪が現れて私は半径10メートル以内に任意で移動できるの。ダメージを受けたあとに発動してもダメージは0にできるよ。」
「うわあ、チートだ。チート忍者だ。」
「チートじゃないよ。まだまだこれからだからね、忍術スキルは。」
「忍者なら地味に生きろよ。」
「いーや、プレイヤー最強が忍者っていうのも面白いじゃん。結構、話したし、休憩はもう大丈夫そう?」
「うん、大丈夫だよ。」
「じゃあ、降りようか。」
2人は立ち上がり、階段を降りていく。
「次はどんなのがでてくると思う?」
「ムカデやミミズが同時に2匹とかムカデとミミズが両方とか。」
「いやだ。そうなったらアヤネよろしく。」
「なんで!?」
「分身できるし、スキルが豊富じゃん?だから勝てるじゃん?」
「どう考えたらその答えに辿り着くのか分からないけど却下。そもそも攻撃力はユアの方が高いからね。」
「ぐっ、そ、そこをなんとか━━━━━」
「なりません。ほら、行くよ。」
「は、はい。」
「ん?なんか来る。」
「まじ?気持ち悪くありませんように。」
「今までとはまた違う意味で気持ち悪いやつらが来たな~。」
「やつら?気持ち悪いやつが複数ってことか。」
「違う。前見て。来てるから。」
「なるほど。次はそういう感じですか。」
前方には大量の小さな虫型モンスターがうごめいていた。
「今度はアレだね。個々は弱いけど数で圧してくる面倒な敵だね。」
「どう攻める?」
「もうちょっと準備してから来れば良かったかも。でも、まあ、とりあえず【分身】」
アヤネが3人になり、内2人が虫の大群に突っ込む。その2人は虫の前まで行くと片方は【火遁】、もう片方は【水遁】を使い、大量のダメージを入れる。それでもまだまだ残っている虫の大群に今度はそれぞれ使ってない【火遁】、【水遁】を使う。これでようやく全体の3分の1を倒せた。
その後は分身2体が装備している双短剣で斬り伏せていくが、1度攻撃を受けると消滅するためあまり減らすことは出来なかった。そうなると虫の敵はアヤネとユアだけになるためこちらに走って近づいてくる。
「うわあ、来たよ。どうしよう、アヤネ。」
「【囮】使って、ステータス上げて。私は【火遁】と【水遁】を使って分身が再使用可能になるまで時間稼ぐ。」
「【囮】は囮にしてくれないと使えない。」
作戦会議の間にも近づいてきていた虫たちは作戦会議が終わった時には10メートル手前ほどまで迫っていた。
「【火遁】」
火のカーテンにそのまま突っ込んで来た虫が次々とダメージを受ける。
「ならさ、ユア、何か遠距離から攻撃できるスキルない?」
「ないよ。だって今日ログインしたばっかりの初心者だよ?あるわけないでしょ。」
「それを言ったら私だって昨日ログインしたばっかりの初心者ですけど?【水遁】」
【火遁】の効果が切れたところで【水遁】を使い、ダメージを与えていく。
「レベル10未満に非ずんば初心者に非ず。」
「非ずって.....清盛かよ。じゃあ、【囮】を使えるようにしてあげよう。」
「っ!!嫌だ!!やめて!!可哀想だとは思わないの?」
「それじゃあ、ファイト!!」
「ちょっと?アヤネ?」
ユアを鼓舞するとアヤネは虫がいない方向に走り出す。ユアもアヤネに続いて走り出す。
「アヤネ、ちょっとお話しようか。」
ユアさんはお怒りになられている。ユアを怒らせたアヤネは
「一旦、セーフティゾーンまで逃げよう。」
ガン無視である。これに更に怒りのボルテージをあげたユアさんは
「セーフティゾーンで1回死んでもらうからね。」
とアヤネに告げる。それにアヤネは
「私、何かしたっけ?」
もうダメだ。ユアの怒りはマックスになった。
「アヤネ、あの虫の中に放り込んでやる。えい、くっ、あとちょっとで腕が届かない。」
ボコッ
突然アヤネが止まったのに反応できず、ユアはアヤネの背中に勢いよくぶつかった。
「イタタタタタ。アヤネ、どうしていきなり止まるの?」
「セーフティゾーンに着いたから以外に何かある?」
「着いたの。じゃあ、お話しようか。」
「なんのお話?もう1回聞くよ?私、何かしたっけ?」
「私を囮にして逃げたでしょうが!!」
「え?ユアのことだし、絶対付いてくるよなー、と思ってたから走ったんだけど。だから1人では逃げてない。」
「私が付いていってなかったら?」
「【火遁】が使えるようになるまでは頑張ってもらってた。」
「はあ、なら走る前にちゃんと、逃げるよ、とか言ってくれないかな?」
「ごめんって、信頼の証だからさ。」
「はいはい。それで、どうするの?」
「どうしようかな。範囲攻撃を使えたら良いんだけど、持ってないし。」
「なら戦わずに走って突破しちゃおうよ。」
「そんなことでき......る!!私の隠密なら!!でも、それだとユアは?」
「ほら、【火遁】か【水遁】使ったら私も行けるでしょ?」
「あ、確かに。じゃあ、どっちかを使えるようになったら行こうか。」
「そうどね。あとどれくらい?」
「あと2分くらい。」
「じゃあ、待とうか。」
━━━━━2分後━━━━━
「使えるようになったよ。」
「よし、行こうか。」
さっき進んだ道をもう1度進んでいく。そしてさっきと同じくらいのところでさっきと同じように大量の虫が現れる。
「じゃあ、作戦通りにね。」
「りょーかい。ちょっと待っててね。」
「オッケー。」
「【分身】【隠密】」
アヤネは【分身】を使い、2人の自分に虫の気を引かせ、自分は【隠密】を使い、2人の自分に付いていく。分身が同時に【火遁】を使ったところでアヤネは火のカーテンに突っ込む。反対側では虫も突っ込んでいてどんどん消えていく。そのすきにアヤネが虫だらけの地面の虫のいないところを踏んで突破していく。時には壁を蹴り、時には天井近くまで跳び、時には2本の短剣を顔の前で交差して構えながら走ったりして、ついに虫の大群を突破した。
「ユア!!行くよ!!【火遁】」
【火遁】を発動した直後、アヤネの隣にはユアが立っていた。
「成功したみたいだね。」
「おかげさまでね。」
「それにしても10秒もかかるんだねこの大群抜けるのに。」
「じゃあユアも突破してみなよ。ノーダメージで。」
「できない自信しかないからやめとくよ。」
「そう、それじゃあ先に進もうか。」
「そうだね。あの虫たちが追ってくるかもしれないからね。」
そして進んだ先にはまたもやセーフティゾーンと下に続く階段があった。
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