第5話 ミミズからのムカデ

「━━━━━━そろそろこの森の正規のダンジョンを攻略しに行こうか。」




「正規のダンジョン?アヤネがクリアしたのは?」




「私がクリアしたのは隠しダンジョンだよ。あれが正規だったら見つからないよ。」




「なるほど。その正規はクリアしたの?」




「いいや、ユアと攻略しようと思って場所の確認だけした。」




「へえぇ、でも、どうして?」




「そりゃあ、レアアイテムとかレア装備がドロップしたらユアにあげるためだよ。」




「アヤネは?いらないの?」




「私は忍者で充分。まあ、できればユアにも忍者みたいな装備をとってほしいんだけどね。」




「え~?それはキツいよ~。」




「まあ、この装備は私以外の誰も持ってないけどね。」




「そうなの?」




「そう、この装備は【ONLY ONEシリーズ】っていって、このゲームで唯一無二の存在なの。それで、そのうちのひとつをユアにも取ってほしいの。」




「なるほど。つまり、今、行ってるダンジョンにあるかもってこと?」




「正解。最初に攻略したら貰えるかもしれないと思って。」




「なるほど。でも私たちより先に攻略した人はいないの?」




「多分いないと思う。ここまで来るのに結構、戦闘あるから。」




「そうなんだ。でも、私たちは全然戦ってないよ?」




「AGIが高いからじゃない?」




「そんなものなのかな。」




「わかんない。でも、はい、到着。ここだよ、正規ダンジョン。(私の推測)」




「推測なんかい。なんか自信満々で言うから完全な情報かと思った。」




そう話す2人の前には地下へと続く階段がある。




「ごめんごめーん。でも、いかにもって感じでしょ?」




「まあ、そうだけど。」




「じゃあ、早速入ろう。」




「うん!!」




ユアが同意するとアヤネから先に階段を降りていく。そして2人とも降り終わる。




「これでクリアしてもなにもでなかったら1人で入ってみて。」




「え?!なんで?」




「ソロクリアに限るって条件かもしれないから。」




「わ、わかった。出てきますように。お願いします。お願いします。」




「いや、そんなに懇願しなくても。」




「モンスター来たら戦ってね。」




「出てこなかったらユアが1人で攻略するんだよ?ちょっとでもレベル上げないと。」




「うん、が、頑張る。」




「よろしい。噂をすれば、ほら来たよ。」




「え?」




アヤネが指を指した方向にはミミズに似たモンスターがいた。




「うぇ、気持ち悪い。」




「激しく同意。防御とユアがヤバくなったときの救助はちゃんとするから斬っておいで。」




「わかった。防御と救助は任せたよ。」




「うん、任された。」




ユアがミミズのモンスターに真っ直ぐ突っ込むとミミズのモンスターもユアに気付いたのかユアの方に向かってきた。ユアは「ひいぃ。」と声を出すが後ろにいるアヤネに「気を引きしめて!!」と叫ばれた。


ユアは長剣を持っている両手を前に突き出し、そのままミミズのモンスターにぶっ刺した。


ミミズのモンスターは赤いダメージエフェクトを散らしながらのたうち回る。ユアは振り回されながらも長剣を刺したままでなんとか喰らいついていた。しばらくするとパリンッと音をたてて消滅していった。




「ふう、あ、レベル4になった。」




「お疲れ~。良かったね。」




「うん、でも次のミミズはアヤネが戦ってね。私、ミミズはもう無理。」




「はいはい。じゃあ、ミミズ以外はちゃんと戦ってね。」




「うん。全部が全部気持ち悪いやつじゃないだろうし。」




「そうだといいね。って言ってたら来るよ。」




「え?う、うん。」




「「うわあ、気持ち悪い。特に足が。」」




「ミミズじゃないからよろしく。」




「えっ、わたし?」




「うん、だってミミズじゃないもん。防御と救助はするから。行ってらっしゃい。」




「そんな~。じゃあ、防御と救助は任せた。」




「任された。あと、そいつ毒あるかも。」




「えっ!!」




走り出していたユアは毒と聞いて足を止める。




「ほら、前見て。来てるよ。」




「もう、毒とか先に言ってよ。」




「ごめんごめん。」




ユアは右の壁に跳び、そこからムカデの頭上に跳ぶ。両手に持っている長剣を思いっきり降り下ろし、両断できると思った瞬間、カキンッ、と鉄と鉄がぶつかったような音がして長剣は弾かれた。




「っ!!」




予想外の出来事に驚いているとムカデの尾がユアに向かってきていた。尾がユアを突き刺す寸前にユアが信じた人の声が響いた。




「【火遁】」




その声が聞こえたと同時にユアの視界を火が埋め尽くした。そしてムカデが凄まじい声を出している。


ピギャアアアアアア


耳を塞いだユアだが直後、ユアはムカデと火から離れた地面に落ちた。




「痛っ!え?なんで?」




「ギリギリだったね。」




「アヤネ?」




顔をあげるとムカデを眺めるアヤネが立っていた。




「アヤネさんよ。どうした?」




「どうした?じゃないよ。超絶ギリギリだったんだよ?わかってる?」




「わかってるよ~。ちゃんとユアも助けたし、嬉しい誤算もあったし許して?」




「嬉しい誤算?」




「そう。【火遁】でダメージが入ったこと。」




「それってダメージなかったら私、死んでたんじゃないの?」




「いや、そこは大丈夫だよ。」




「どうして?」




「どうしてってユア、どうやってここに来たの?」




「え?.....あ、」




「そう、【火遁】の効果。使うときにパーティーメンバーの内の誰に使うか決めれるんだけど、使われた人?守られた人がランダムでパーティーメンバーのところに転移するの。私が一人の時に使ったら、ただ火のカーテンが出てくるだけなんだけどね。」




「なるほど。じゃなくて、あいつめちゃくちゃ硬い。」




「そりゃあ、まあ、ムカデだし。硬いでしょ。」




「分かってたんなら最初に言わない?」




「いや、分かってるんだなって思って。」




「分かってなかったときのために確認の意味も含めてしようよ。」




「そ、そう、だね。次からは気を付けるよ。」




「それでどうする?」




「どうするって、何を?」




「あいつ硬いでしょ?だからどうする?」




「そんなの簡単じゃん。頑張るしかないよ。」




「だ・か・ら、どう頑張るの?」




「じゃあ、私が隙を見つけたら攻撃するからユアは適当に動いてて。それじゃ、お互い頑張ろう。【隠密】」




「え?アヤネ?おーい、適当にってどう動くの?......はあ。なら本当に適当に動いてやる。」




ユアはムカデめがけて一直線に走り出した。そしてそのままムカデの上を走って脚の関節を狙って斬りながらムカデの上を走りきる。




「やっぱり、ノーダメージか。」




ユアが少し残念に思っているとムカデが叫びながらのたうち回り始めた。




「え!!どうなってんの?」




困惑しているととっても聞き馴染みのある声で恐ろしい内容を聞いた。




「どう?目潰しって。」




完全に苦しんでるのを見て楽しんでいる。ユアは思った。こいつ、絶対に関わったらダメなやつだ、と。


そんなことを思われているとは知らないアヤネはムカデの目を潰したあと他に攻撃が入るところがないか観察していた。




「うーん、どこも硬いな~。目を潰して正解だったかな。うわっと、そろそろ危ないし、離脱しよう。【水遁】」




アヤネはユアの横に現れる。




「結構、ダメージ入ったでしょ。」




「入ってるけどさ、言動が思いっきりサイ○パスだったよ。」




「マジ?」




「マジ。現実では気をつけてね。」




「もちろん。というかサイ○パスじゃないから。気をつけるも何もないから。」




「それじゃ、どこ攻撃する?」




「目」




「どれだけあのムカデの目に恨みがあるの?」




「ないよ。ダメージが入りそうなのが目しかないんだもん。」




「わかった。じゃあ、左右に分かれて脚の関節ならダメージ入るかもだから脚の関節を攻撃しつつ頭に向かおう。」




「おっけぇ。」




アヤネの応答と同時に2人はムカデに近づく。計画通り、カキンッ、と音を出しながら脚の関節を攻撃しつつ頭に向かう。2人ともムカデの潰れた目の前に戻ってくるとアヤネは片方の短剣を、ユアは長剣を、ムカデの片目に刺す。刺して直ぐにユアは後ろに下がる。アヤネはユアが5メートル以上離れたことを確認すると十八番のスキルを使った。




「【火遁】」




アヤネの目の前に火のカーテンが現れ、ムカデにダメージを負わせていく。アヤネはユアの場所まで転移してムカデを眺めていた。するとパリンッと消滅していった。




「はぁ、やっと勝てたね。」




「うん、結構、疲れたよ。」




「じゃあ、あそこの階段がなかにあるセーフティゾーンで休憩しようか。」




そのセーフティゾーンの中には下に続く階段があった。

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