第98話 健一さんと文化祭 何から見たいっすか?
膝枕をして頭を撫でていると、真緒は幸せそうに顔を歪ませる。そんな顔を見られるだけで今日は文化祭に来て良かったと思う。
文化祭は今日と明日二日間あり、午後からは真緒のフリータイムが始まる。
キンコンカンコーン
そんな事を考えていると久しぶりに聞く、学校のチャイムが教室に鳴り響く。
「あ、真緒ちゃん。そろそろお昼だから交代して大丈夫だよ」
「もうそんな時間なんすか、でももう少しこのままが良いっすね」
「俺もあとちょっとこうしていたいかな」
「ここは家じゃないんだからね」
涼香はそう言って、俺達をジトっとした目で見て来る。まぁ、家じゃないのはその通りなので何も言い返せないが、もう少しだけこのままで居たいと思ってしまう。
俺は涼香から目線を膝の上で気持ちよさそうに目を瞑る真緒に向ける。
「真緒、どうする?」
「うーん、そうっすね。お昼からは健一さんと色々回る予定っすし、着替えてくるっすね」
「分かった、じゃあ俺は廊下で待ってるよ」
「了解っす!」
そう元気な声で返事をした真緒だったが、俺が頭を撫でているからか椅子から降りようとしない。俺としても、このまま頭を撫で続けて…
「お兄ちゃん」
いたいと思っていたが、後ろから怒りの籠った低い声で呼ばれ手の動きを止めてしまう。
すると真緒はまだして欲しいのか何も言わずこちらを見て来る。
お、俺はどっちの選択を取ればいいんだ…
*****
「お待たせしましたっす健一さん」
「全然大丈夫だよ。どこ行こうか」
俺はあの後、涼香にお願いして一分ほど真緒を撫でさせて貰い幸せな時間を強制終了させられた。
少し名残惜しさの残るメイドな真緒とはお別れし、廊下で待っていると数分もしないうちに制服姿の真緒がやって来た。
「健一さんは何から見たいっすか?」
「うーん、そうだなぁ」
真緒の問いかけに歩きながら考える。
周りを見渡すと、窓の外では模擬店がやっており楽しそうに話している生徒達の声が聞こえて来た。
真緒とは色々回る予定をしているが、基本的に体験系が多くそこまで時間は取られないと思うが待ち時間はそれなりに掛かるだろう。
「そう言えば真緒はお昼食べたのか?俺はオムライス食べたから少しは落ち着いているけど」
「まだ食べてないっすね。一応、職員室でお弁当を貰えるみたいなのでそれでも良いんすけど、文化祭でお弁当って言うのもあれっすよね」
真緒の言いたい事はわかる、せっかくのお祭りなのだいつでも食べれるような弁当よりも文化祭だからこその楽しみ方をしたいもの。
「なら、せっかくだし何か見に行こうか。模擬店色々やってるみたいだしさ」
「良いっすね。まだ模擬店は何があるか知らないので楽しみっす」
そう言って楽しそうに俺の手を引く真緒と階段を下りていく。
どうして真緒が模擬店で何をしてるかを知らないかだが、この高校は当日までシートか何かで模擬店のテントを隠し生徒と一般の方に期待感を与えるという、昔からの風習があるのだ。
俺も高校生の時はワクワクしていた。真緒と出会う前の事であまりいいイメージはないがそれなりに楽しかったのを覚えている。
「最初は何が食べたい?」
「そうっすね」
手を繋ぎ昇降口を出ると、お肉やソースの匂いがぐっと強くなる。さっきオムライスを食べたが少々涎が出てきそうだ。
出てきたオムライスも経費を抑えているのか大きなものでは無く、一人前にも満たないサイズだった事も相まってお腹が空き始めている。
ここは少しお腹に溜まる物を食べたい所だけど…
「あ、健一さんあれとかどうっすか?」
そういう真緒は繋いでいない手で一つの模擬店を差し始めた。俺は真緒の指す先を見ると看板に大きく書かれた『お肉』の文字が。どうやら、真緒もお腹が空いているみたいだ。
「ちょっと行ってみるか。俺もお肉食べたかったところだし」
「良かったっす、午前中働いてたのでお腹空いてたんすよね」
「お疲れ様、頑張ったご褒美にここは奢るな」
「お、奢りがご褒美なんて安すぎるっすよ。頭ナデナデが付いてないと…」
「気に入ったのな」
俺は真緒の言った事に少し笑ってしまう。これは頭を撫でる機会が増えそうだな、そう思いながら目当ての模擬店へと足を運ぶのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第99話 健一さんと文化祭 誰…っすか?
応援、☆☆☆レビューよろしくお願いします!励みになります。
現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます