第97話 健一さんと文化祭 次はこれっす!
メイド服姿の真緒と手を繋ぎながら、オムライスを食べさせて貰えるなんて幸せすぎる。
次は、どんな特別サービスが受けられるのだろうか。そんなワクワクで胸が昂り、オムライスが後少しで食べ終わろうとした所で後ろから話しかけてくる声が聞こえて来た。
「ねぇ安達さん。もしかしてその人が彼氏さん?」
「あ、そ、そうっす…」
「へぇ、優しそうな人ー」
「えへへ、そうっすよね」
真緒はクラスメイトなのか黒髪ボブの女子生徒に呼ばれ少し狼狽えていたが、俺の事を褒められたからか嬉しそうに顔を歪めている。可愛い。
人見知りでも、好きな人を褒められると素の反応を見せるのは一つの魅力だよな。
隣で真緒の事を眺めてそんな事を考えていると、その女子生徒は次に俺をターゲットにしたようだ。
「えっと彼氏さんは安達さんの何処が好きなんですか?」
初対面でそんな事を聞いてくるのは驚きだが、改めて真緒の好きな所を考える。真緒の好きな所は沢山あり過ぎるから一言では言い表せそうにない。でも、強いて言うなら。
真緒は気になるのか、繋いでいる手にぎゅっと力が入り俺の事をじっと見つめて来る。そんな真緒を見ながら口を開く。
「そうだな、強いて言うならちゃんと好きって伝えてくれる所かな」
「それなら私も伝えてるよお兄ちゃん!」
そう言って俺達の会話を盗み聞きしていたのか涼香が話に割り込んできた。
「お前は対象外だ」
「そんなぁ…」
俺の言葉に分かりやすく落ち込んだようにガックシと首を下に向ける。そんな涼香を見て、俺と黒髪ボブの子はくすっと笑ってしまう。
でも、1人だけ笑っていない子が存在した。それは…
「健一さん…」
「どうかした?真緒」
「私も健一さんの好きなところ言っても良いっすか?」
真緒はこちらに身を寄せ、俺の胸の音を聞こうとしているのか耳を当てて来る。ピタッとくっ付く真緒の感触に鼓動が早くなるのを感じた。
「ふふ、健一さん今ドキドキしてるっすね」
「当り前だよ、真緒がこんなにも近くに居るんだから」
「もう付き合って半年近く一緒に居るのに慣れないんすね」
「あぁ、ドキドキッしっぱなしだ」
真緒の居る生活にはもう慣れている。出会ったあの日からなんだから1年と半年は一緒に居るんだ、慣れて当たり前。
でも、傍に居る安心感とそれを失いたくない気持ちが交差して緊張する毎日。真緒が居る生活が当たり前で、当り前じゃない。
大切にしたいと心から思うからこそ、一日一日が濃厚で濃密な時間になっていく。
「私、健一さんの何処が好きかって言うと……」
「うん」
凄くドキドキする、真緒はなんて言ってくれるのだろうか。どんな事でも喜んでしまうんだろうな。
そんな事を思っていると真緒は俺の胸につけていた顔を離しコテッと膝の上に落とした。
「やっぱり、言わないっす」
「なんだよ、それ」
「今は2人じゃないっすから、家に帰ったら言うっすね」
「……分かった、楽しみにしてる」
少しお預けを食らった気分になったが、今は文化祭の最中なのだから十分楽しんだ後でもいいはずだ。
「そう言えば、特別サービスって他には何があるんだ?」
「ふっふっふ、次はこれっす!」
そういう真緒は膝の上でくるっと顔をこちらに向けて俺の左手を頭の方へと動かし始めた。
「次は、頭なでなでと膝枕っす!」
「これって普通逆じゃないか?」
「それもそうっすね、変わるっすか?」
「いや、このままが良いかも」
「えへへ、気持ちいいっす」
真緒に膝枕される経験をした事はあったが俺がというのは無かった。あまりない経験をする好奇心からそう言ったのか、真緒の幸せそうな顔を見ているからなのかは分からない。
でも、永遠にこの時間が続けばいいのにとは思ってしまう程には幸福な瞬間だった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第98話 健一さんと文化祭 何から見たいっすか?
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現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
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