第95話 健一さんと文化祭 ご注文決まったっすか?

 メイドな真緒に手を引かれてやってきた外を背にした中央部分の席。真緒はやけに楽しそうに聞いてくる。


「ご注文は何にするっすか?」

「まだメニュー見てないから」


「そ、そうっすよね」


 そう言った真緒は照れくさそうに笑みを浮かべる。真緒の笑顔はよくみるが、メイド姿というのは初めてで高校生でもないのにはしゃいでしまいそうだ。


 そんなことよりも注文注文。俺は机に置いてあるメニュー表を手に取り何があるのかをみる。


 内容としては、オムライスが大きく描かれていて他は飲み物のみに近い。どれにしようか、そう思っていると区分されこちらからは見る事のできない教卓側から真緒を呼ぶ聞いた事のある声が聞こえてくる。


「安達さんちょっといい?」

「はーい。健一さんちょっと行ってくるっすね」


「あ、あぁ」


 そういう真緒は裏の方へと歩いて行った。おそらく何かしらのヘルプがあったのだろう。


 この教室に入ってきた時からしていた匂いは真緒の料理に近しいものを感じていたから、レシピか真緒が直接作っているかのどちらじゃないかな。


 そんなことよりも、早く決めないとな。俺以外の人も利用するんだ、居座り続けるのは迷惑行為になってしまう。


 そう思い俺はメニューを再度見る。とりあえずオムライスは頼むか。


 それにしてもしっかり作られている、メイド喫茶に行った事はないが雰囲気というかメニュー表に関しても文字のフォントも見やすくあしらわれており、学生の文化祭とは思えない。


「ご注文決まったっすか?」


 教室の内装を見たり、メニュー表に目を通していると真緒が帰ってきたようだ。


「あぁ、オムライスお願いするよ」

「了解っす!じゃあ作ってくるっすね」


 そういう真緒は敬礼のポーズをとる。


 そこはメイドさんやってくれよ…そう思うが気になることもあった。


「真緒が作ってるのか?」

「いえ、基本は調理班の人が代わり番こにやってるっすね。それに私調理班じゃないっすから」


「え、違うの?」

「はい、調理監督やってるっす。危ない事はしてないかとか材料の配分が間違ってないかって感じっすね。因みに私はクラスの人とまだ話せないので川峯さんを間に入れてるっす」


 最後の所は必要だったのか怪しいが、調理監督をしているのは素直にすごい。真緒から率先して立候補したとは到底思えないが、さっき呼ばれたのを見るに自分の仕事を全うしているのだろう。


 真緒の成長を感じられて俺としては嬉しい限りだ。


「健一さん…じゃなくてご主人様っすね。オムライスを頼むと受けられるサービスがあるっすけど、どうするっすか?」


 受けられるサービス、それは萌え萌えきゅんとか書いて欲しい文字のリクエストとかだろうな。


「お願いしようかな」

「かしこまりましたっす!」


 そういった真緒は一度裏に行こうとして踵を返し戻ってくる。何か言い忘れていた事でもあったのだろうか。


 そう思っていると真緒は俺の耳に顔を近づけて、こう言ってくる。


「健一さんだけの特別サービス付きっすからね」


 それと言うと真緒は今度こそ裏へと歩いていく。

 その後ろ姿を眺めてしばらく、特別なサービスについて思考を巡らすのだった。


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ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:第96話 健一さんと文化祭 えへへ、美味しいっすか?


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現在連載中

『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』

https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174


甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!

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