第94話 健一さんと文化祭 私もやるんすか!?
俺は真緒がメイド服を着ないと聞いてすぐさまクレームを入れようとある所に電話を掛けた。
『もしもし、どうしたのお兄ちゃん』
「真緒が文化祭でメイド服を着ないってどういう事なんだ?」
『1番最初に言うセリフがそれなんだね。まぁ、お兄ちゃんならそう言うと思ったよ、でも着るのは接客する人だけになるんだよね』
普通はそうだろうな、無駄な経費になるだろうし調理班になるのなら汚れたりするリスクもある。
だが、凄く見たい。
「なぁ涼香、裁縫する子を紹介してくれないか」
『どうしたのお兄ちゃん』
「学校とは別に俺個人がお金払うから、作ってもらう」
『そこまでして見たいの!?』
「当たり前だろ、別にコスプレ用を買って家で着て貰うと言うのもいいが、文化祭という特別な場で真緒に接客して貰う事に意味があると思うんだよ」
『お兄ちゃんも真緒ちゃんの事になると急に早口になるよね』
そうだろうか、意識していなかったが指摘されるということは本当なのだろう。もし、そうなら少しキモいな。だがこんな機会はそうそう無いのだここで引くわけにはいかない。
「頼む涼香、何かお礼はするからさ」
『お礼…ね。分かった、ちょっと裁縫の子に聞いてみるよ』
「助かるぅ⤴︎」
涼香に相談して良かった。俺に何を要求するのかは分からないが、これで真緒のメイド姿が見れるのならなんだって受け入れよう。
それじゃあ次は真緒に聞かないとだよな。俺は、洗い物をしている真緒に今回のことを聞かなくてはと話かける。
「真緒、文化祭でもしメイド服を着れるって言ったらどうする?」
「え、普通に嫌っすけど」
「嫌なの!?」
嫌なら無理強いは出来ないが理由くらいは聞いておきたい。俺は見たい気持ちを抑えきれず涼香に相談したんだ。
「り、理由を教えてくれないか?」
「だって着たら接客しなくちゃいけなくなるじゃ無いっすか。私健一さん以外の人を持て成すなんて出来る気がしないっすよ」
「それはつまり、俺の接客なら出来るって事なんだよな?」
「?まぁそうなるっすね」
真緒は分かっていないらしく首を傾げている。これは真緒のメイド姿を拝める機会かもしれない。
「真緒、文化祭当日俺専属メイドになってくれ」
「……何言ってるんすか健一さん、大丈夫っすか?」
案外乗り気になるかと思っていたが、不思議られ心配される始末。これはきちんと伝わっていないな。
「さっき涼香に真緒用のメイド服を頼んだから、これで当日着れると思うんだ」
「え、私もやるんすか!?」
「いや、真緒は接客嫌だろうし別にしなくていいよ。でも、俺の時はして欲しいかなってだけで」
「あー、そう言う事っすか!分かったっすよ。全力でお持て成しするっす」
こんな俺個人の我儘を叶えようとしてくれるのは凄くありがたいな。これはデザインも頑張らなくては!
そう思いながら真緒の勉強を見る準備を始めるのだった。
*****
数日が経ち文化祭当日になった。
テスト対策で勉強を見てあげたおかげか返ってきた点数も悪く無かったのは嬉しい事だ。
さて今日の予定なのだが、まず午前中メイド喫茶に行ってぶらりし午後から真緒と色々回る。一応涼香からパンフレット貰っているし昨日真緒とどこに行きたいか話したから楽しみで仕方がない。
奏功していると、真緒に行くと言っていた時間になってしまっていた。
「メイド喫茶は確か、3階だったか」
俺は楽しみな気持ちを抱え真緒のクラスへと足を運ぶと朝も早いというのにすごい行列が出来ていた。
やっぱりメイド喫茶は人気があるのか、ちらほら楽しみにしている声が聞こえてくる。
「ここ美味しいらしいぞ、卵がふわふわでもう一度食べたくなるって」
「そんなにかよ、早く食いてぇ」
「それに可愛い子もいっぱいでさ…」
ずいぶん楽しそうな話を友達としているみたいだ。ふと周りを見ると2人か3人で来ている人がほどんどらしく俺みたいに1人で訪れているのは見当たらない。
いつもの俺なら恥ずかしいと言って、絶対に入らないが今日は真緒に会いに来たのだ。今日のために真緒のメイド姿は拝む事を避け、当日になってウキウキな気分でやって来た、そろそろ我慢の限界に近いので早い所拝見たいが…
そう思っていても列は進まない、5,6分に1グループは入っているペースではあるが前にはまだまだ人が居て入り口すらも見えない。
この繁盛具合、お昼から真緒と回るのは少なめにしておいた方がいいかもしれないな、ずっと料理しているのであれば疲労も溜まるだろうし。
そんなことを考えながら30分ほどメールチェックなどをして時間を潰し、ようやくあと1組となった。
「あ、お兄ちゃん来たんだね」
そう言ってクラスの入り口で話しかけてきたのはテスト前にも会った涼香だ。自作したのか可愛い文字で『おかえりなさいませ♪』と書かれた看板を持っている。無論メイド姿だ。
「涼香、可愛いな」
「え!?お、お兄ちゃんもしかして私に惚れて…」
「メイド服の方だよ」
俺がそういうと一瞬赤らめた顔を伏せ「そうだよね…」と分かりやすく落ち込んでしまう。
少しだけ申し訳ないと思ってしまうが、仕方がない俺は真緒一筋なのだから。
「まぁいいや、お兄ちゃんご指名はやっぱり真緒ちゃんなの?」
「それ以外の選択肢があるのか?」
「うんないね。そもそも指名式じゃないし」
「じゃあなんで言ったんだよ!」
涼香があははと軽く笑っていると前の人が入ったらしく前に誰もいなくなった。涼香と軽く雑談をしていると俺の番がやって来る。
「やっとだね、ちょっと待ってね呼ぶから」
「あぁ」
「真緒ちゃーん!!」
「はいっす!」
聞き慣れたこれが俺の耳に届くと教室の中から可愛いメイドさんが登場する。
「おかえりさないませ、ご主人様。会いたかったっすよ」
そう言って真緒は俺に抱きついてきた。これもサービスの一環なのだろうか、やけに教室の中から視線を感じるが、いつもと違う真緒との抱擁は軽く一時間程待った価値はあるなと感じされるものだ。
「それじゃあご主人様、案内するっすね」
そう言う真緒は俺の手を引き教室の中に連れて行ってくれるのだった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第95話 健一さんと文化祭 ご注文決まったっすか?
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現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
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