テスト明けは文化祭

第93話 健一さんと文化祭 ご褒美が欲しいっすよ

 台風が過ぎ涼香が帰って数日、文化祭前のテスト期間が始まった。


 このテストが終われば楽しい文化祭、真緒はどんな役職を任されるのか不安ではあるがなんとかなるだろう。


 それよりもテストの方が問題だ。やる気はあるみたいなのでそのまで不安視はしていないが、なに分前回のご褒美くれくれがあるからな。


 今回は真面目にやってほしいところ。


 そんな事を考えて仕事をしていると、お昼過ぎくらいで真緒が帰ってきた。


 テスト期間で帰ってくるのが早くなり、一緒にいる時間が増えたのは嬉しいことだ。だが…


「健一さんただいまっす!」

「おかえり」


「テスト頑張ったので、ご褒美が欲しいっすよ」

「はいはい」


 靴を脱いだ真緒は勢い良く抱きついてきた。そしていつものただいまのキスを軽く済ませる。


 キスをしても真緒はなかなか離れてくれない、こう言う時は頭を撫でてほしい時なのだ。


 そう思い、俺は真緒の頭に手を置き軽く撫でてあげると「健一さぁん」と嬉しそうに名前を呼んでくる。疲れた時や頑張った時はいつもしてあげるが、幸せそうにする真緒を見ていると仕事の疲れが取れそうだ。


「ありがとうございますっす」

「あぁ、こっちもありがとう」


「ご飯作るっすね」


 そう言う真緒は俺から離れ、台所へ向かう。少し名残惜しさを感じ、料理をする真緒の背中を見て我慢する。


「早く納品するか…」


 ご飯を食べた後はテスト対策として、真緒の勉強を見る予定なので今のうちに終わった仕事の納品を済ませておきたい。


 俺は後ろから料理の音を聞きながら、メールを開き納品を進めていく。


 暫くして納品を済ませるとタイミングよく真緒も終わったのか、振り返ると机の上にご飯を運ぶ姿が見えた。


「今日もありがとう」

「いえいえ、健一さんも頑張ってるっすからね。私も力になりたいんす」


 真緒は笑顔でそう言い両手を胸の前で握り、やる気の強さを感じ取れた。一緒にいてくれるだけで力になっているのに、そんな風に思いながら席につき真緒とご飯を食べ始める。


 今日のお昼は、カルボナーラで厚く切られたベーコンが美味しい。この焦げに近い絶妙な焼き加減が香りを引き立たせている。上手い以外の言葉が出てこない。


 台風の一件以来、美味しいご飯を食べられる事が前に比べてより幸せに感じるようになった。本当に真緒と一緒に暮らせることを許してくれたご両親に感謝だな。


 そんな美味しい料理に感銘を受けつつ食べ続け、もう少しで食べ終わろうとしていると何か話があるのか真緒は話し始める。


「健一さん」

「ん?どうかした?」


「文化祭の話なんすけど…」

「あぁ」


 そういえば真緒が学校に行ってから数日経っているが、詳細な情報が無かったな。どんな話なんだろうか。


「えっと、その…」


 何やら真緒は言いずらそうに、というか恥ずかしそうに続きを話し始めた。


「メイド喫茶やる事になったんすよ」

「な、なに…。メイド喫茶だと」


 それはつまり真緒の料理とメイド姿を拝めると言う事か、楽園じゃないか。よし絶対に行こう!!


「それでなんすけど、健一さん絵描けるじゃないっすか」

「ん?うん、それが?」


「うちのクラスで絵を描ける人がいなくてデザインが出てこなくてっすね」


 なんだろうすごくいい予感な気がするぞ。


「健一さんにメイド服のデザインを描いて欲しいんす」

「描く!!」


 即答だった。真緒の着るメイド服をデザイン出来るなんて滅多に出来ることじゃないし、元々胸の小さい子の服のデザインをするのは好きなのだ。


 これは気合いが入るな。


 もう、仕事そっちのけでやってしまおうかな。


「因みに私は着ないっすよ」


 その言葉に俺のやる気はすぐさま消え去るのだった…


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ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:第94話 健一さんと文化祭 私もやるんすか!?


応援、☆☆☆レビューよろしくお願いします!励みになります。



現在連載中

『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』

https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174


甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!

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