第92話 健一さんと急な来訪者 今日だけっすからね?
涼香が泊まり翌日、朝目が覚めると真緒も丁度目が覚めたのか目が合う。昨夜は出来なかったからいつもより起きるのが早くなってしまった。
取り敢えず朝の真緒とのキスを静かにして涼香が起きないように小声で話し始める。
「おはよう真緒」
「おはようございますっす」
「今日は真緒、何するんだ?」
「そうっすね…ご飯作れないとなるとゲームくらいっすかね。健一さんと何かしたいっすけど、お仕事あるっすから」
「そうだなぁ、真緒と過ごせる休日なのに仕事しないといけないのは辛いよ」
今回のはアシスタントだから早急にしないと楓先生が困る。いつもの仕事ならクオリティを上げるために寝かせたり出来るがそうもいかない。
量も多く真緒と遊ぶ暇もなさそうだ。
「今日は忙しくなりそうだから、真緒と色々出来るのも今かご飯食べる時くらいかな申し訳ないけど」
「全然良いっすよ、健一さんが頑張ってる姿見るのも好きっすから」
「そう言ってくれるのは嬉しいな。でも、急なことだったからいつか埋め合わせさせて」
「そこまで言うなら分かったっす。じゃあ今度の文化祭来て欲しいっすね」
「文化祭か、もうそんな時期なんだな」
「そうっすよ、まだ何するか決まってないっすけどもう少しっす」
この台風が過ぎれば、テストを迎えて文化祭だろうか。果たしてどんなものをするんだろうか、真緒が出来る物といえば模擬店の調理くらいかな。
俺の文化祭は劇と模擬店をした覚えがある。裏方で背景を描いたり、模擬店の看板作りしていた。
となると…
「文化祭って事はテスト近いんじゃないのか?」
「うっ…」
真緒はテストと聞くと苦い顔をして、分かりやすく嫌な雰囲気を感じる。文化祭前のテストって嫌なのはわかるわ。終われば楽しい事が待っているけど、その前の試験は辛いだろう。
「また勉強見てあげるから」
「健一さんに見て貰えたら点数上がるからありがたいっす」
勉強は嫌いだけど、俺が教えるときちんと頭に入るから責任重大な所ではある。でも、真緒に勉強を教えるのは普通に好きだから良い。
俺だって勉強は好きではないが、真緒の為になるのなら少し苦痛でも耐えられる。
「じゃあ今日仕事早く終わらせるから、待っててな」
「はいっす」
そう言って微笑む真緒を見ていると、勉強が嫌いでもやりたくない訳は無いと分かるから安心する。これでやりたくないと言っていたら、やる気のところから考える事になるからな。
そんなことを考えながら真緒と甘い時間を涼香に悟られないように過ごした。
*****
「健一さん、今日だけっすからね?」
「分かってるよ」
ある程度仕事も終わり、昼食のカップ麺を食べていた。いつも食べている真緒のご飯とは違い少し塩味を強く感じる。
真緒がうちに来るまでは週に何度も食べていた物なのに、飽きとは違う意味であまり食べたくはない。確実に健康を害する味がする…
こんなのよく週何度も食べていたな。一口一口啜る度に真緒の作るご飯が愛おしく感じてしまう。
「冷蔵庫買うか…」
今回は冷蔵庫が小さくて元々の食材がなかったから起こってしまった。なら最初から冷蔵庫の中身が減りすぎないようにすればいい。
以前真緒に相談を受けたが、部屋の問題でと言って断った。だがもうそんなことを言っている場合ではない。
引っ越しを考えるべきだろうか。真緒は俺の好きなタイミングでいいと言ってくれていたし、そろそろ考え出すのも良いかもしれない。
今は9月に入ってすぐ、引っ越しに良い時期といえば10月から年末にかけてとなると真緒のテストと文化祭が終わった後くらいになるかな。
「お兄ちゃん、冷蔵庫買うの?」
「んー、いや引っ越そうかなって」
「え、引っ越しちゃうの!?」
涼香は食べる手を止めて驚いたように聞いてくる。そんなにびっくりする事だろうか?真緒は顔色ひとつ変えず啜っていると言うのに。
「うん、もう少し広いところに行きたいなって真緒と少し前に話してて」
「そうっすね、その時も冷蔵庫が原因だったっすよね」
「ほんとだよ、買うなら大きな冷蔵庫買わないとな…それに物件探しも進んでないし」
「出来れば駅に近いのが良いっすね。ギリギリまで健一さんとイチャイチャ出来るじゃないっすか」
「よし、条件に追加だな」
「涼香も大丈夫っすか?」
「うん、全然いいよ」
なぜか真緒は涼香に了承を得ている。涼香もたまに来るなら駅から近い方が訪問はしやすいだろうしな。
そんな話をし、真緒のご飯がまた少し恋しくなりながらも昼食をとり続けるのだった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
台風とお泊まり 編 完
テスト明けは文化祭 編
次回:第93話 健一さんと文化祭 ご褒美が欲しいっすよ
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現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
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