第91話 健一さんと急な来訪者 健一さん大好きっす
俺が貰ってきた寝袋を見るや誰が寝るんだと3人で話し始めた。別に誰が寝てもいいが、できる事なら真緒にはベッドで寝てもらいたい。
寝袋に慣れていないと体が痛くなるのは目に見えている。
真緒には毎日ご飯を作って貰っているんだ、そんな体を痛める可能性のあること頼めるわけがない。
となれば俺と涼香のどちらかになる。
「さぁ涼香どうする。寝袋で寝るか真緒と寝るか選んでくれ」
「なんで真緒ちゃんベッド確定みたいな言い方するのお兄ちゃん」
「当たり前だろ、真緒に辛い思いはしてほしくないからな」
「それって私ならいいって事!?」
涼香は驚いたように俺に言うがそれに深く頷く。これは仕方のない事なのだ、真緒に体を痛めてほしくないし、辛い顔も見たくはない。
「私こそ健一さんが、辛い思いするの嫌っすよ」
そう言う真緒は俺の両手を握る。
「涼香が寝袋なのが良いと思うっす」
「真緒ちゃんまで!?」
「すまんな涼香、それが真緒の意向なら俺は逆らえないわ」
「いつから真緒ちゃんは権力者になったの…」
「俺は真緒の犬みたいな物だしな」
「い、犬っすか」
そう言う真緒は俺のことをじっと見て少し危ない笑みを浮かべる。それを見た俺は背筋がゾワっとする感覚に襲われ訂正しようと口を開く。
「こ、言葉の綾だからな?」
「そんな事わかってるっすよ」
「それならいいんだけど」
以前SMグッズがウィッシュリストに入っていた事があったから冗談のように感じないんだよな。ちょっとした発言でも真緒は本気にしてしまうかもしれない。次から気をつけよう。
まぁそんな事よりも、目の前の問題の方が先だな。時間ももう遅いし、寝るにはいい時間だ。
今日は楓先生の部屋で作業をしていて慣れない環境のせいか疲れが溜まってしまっている。だからできるだけ早く休みたいんだけどな。
そう思っていると真緒は俺の眠気に気付いたのか「健一さんは先に休んでいてくださいっす」と言ってくれた。
ここはお言葉に甘えてたい所。
「涼香健一さん眠たそうなので譲ってくれないっすか」
「え、えぇ」
真緒はどうしても俺をベッドに寝かせようだけど、さすがに客人である涼香を床でと言うのはやはり気が引ける。
「いいよ真緒、俺が床で寝るから」
「で、でも…」
一向に引こうとしない姿を見て何か思うことでもあるのかと思い、俺は真緒にだけ聞こえるくらいの声で聞いてみる。
「真緒、もしかして何か理由があるのか?」
「そ、それは…」
真緒は少しもじもじしながらこう言ってくる。
「今日は、健一さんとあまりイチャイチャできてないので、寝る時くらいはそばに居たいんす。ダメ…すか」
「よし涼香、寝袋使ってくれ」
「え、今の一瞬で何があったの!?」
真緒に上目遣いでそんなことを言われては仕方ない。折角の休日だと言うのに真緒とあまりイチャつけなかったのは少し思う所があった。
俺1人思っているだけなら良かったのだが、真緒もそう感じていたのなら選ぶ選択は一択になってしまう。
「健一さん大好きっす」
「俺も好きだよ、真緒」
本当に申し訳ないが、真緒をとる以外の選択肢を選ぶくらいなら涼香に今向けられている半分軽蔑の視線だって耐えられる。
「涼香こればかりは譲れそうにないわ」
「はぁ、分かったよ。お兄ちゃん」
そう言う涼香は半分諦めたように、俺から寝袋を受け取った。可愛い真緒のためにも今日も優しく抱きしめてあげよう。
「それじゃあ寝るか」
「はーい」
「了解っす!」
みんなの言葉を聞き、俺は電気を消しに向かう。涼香は寝袋に入り真緒はベッドで布団を温めてくれている。
パチっと音を立てて、電気を消し真緒の待つベッド中へ。
中に入るといつものように胸の中で丸まり、真緒の温もりを感じる。俺は真緒を優しく抱きしめて、今日も心地よい眠りに入っていく。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第92話 健一さんと急な来訪者 今日だけっすからね?
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現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
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