第90話 健一さんと急な来訪者 分かんないっす
健一さんが連絡すると言ってから数分が経ち、涼香がトイレから戻ってきた。それと同時か健一さんは、立ち上がり「ちょっと隣行ってくる」と一言残し外へ出て行ってしまう。
玄関が開くとビュービューゴーゴーと雨風が強く音を立てている。こんな中外に出る理由が分からない私は取り敢えずトイレから戻ってきた涼香に目を向ける。
涼香は私のいつも着ているパジャマを着ていて凄くモコモコだ。私が水色と黄色で涼香がピンクと黄色のラインが入ったパジャマ。
夏でもモコモコなのは寝る時に暖かい方が好きなのと、健一さんに簡単に脱がして貰えるようなものだとこれくらいしか持っていなかったからと言う理由がある。
普段脱がされて裸のまま健一さんと寝るから実質着ていないのと変わらないから、涼香の場合暑いと感じるかもしれない。
そんなことを考えていると涼香は健一さんが外に出て言ったことが気になるのか話しかけてきた。
「ねぇ真緒ちゃん。お兄ちゃん何しに行ったの?」
「分かんないっす。お仕事の修正?とか言ってたっすからそれなんじゃないっすかね」
「こんな時間に?ってまだ10時ちょっとなんだっけ」
「そうっすね。いつもこの時間くらいから寝てるっすね」
「健康的だね、私なんて夜の2時とか3時になっちゃうからビックリだよ」
「結構遅いんすね、まぁ私たちも遅くなっても12時には寝るようにしてるっすね。流石にそれ以上すると翌日に響くっすからね」
「ねぇ真緒ちゃん、今からの寝るって睡眠の方だよね?」
つい普段の事を滑らせてしまい、涼香に変な質問をされてしまう。もし、涼香がいなかったらしてたかもしれないというのは黙っておく。
「当たり前じゃないっすか。私も少しは恥じらいってものがあるっすよ」
「もうその発言から心配になってくるよ…」
そういう涼香は呆れた様子で私の事を見てくる。何か間違ったことでも言っただろうか。
私はよく分からず首を傾けると玄関の方から音がした。
涼香も音に気付き2人して目を向けると健一さんは黄色い何かを持って戻って玄関の扉を閉め始める。
「ただいまー」
「お帰りなさいっす」
「お兄ちゃんそれ何?」
「これはだな」
涼香は私以上に気になるのは健一さんに近づき、おかえりも言わずに手に持っている物に釘付けだ。
私も気になるので耳を傾けようと健一さんに視線を向けると、手に持ていた物をばさっと広げて見せてくれた。
「寝袋っすか?」
「あぁ、楓先生の借りてきたんだ」
「なんで借りて来たの?楓さんの所に行くんなら私が行けば良かったんじゃないの?」
涼香は自分がカエデ先生の所に泊まりに行けないかと言ってるのだろうか。それは私も思った事だし、そっちの方が今夜も健一さんと出来るし…
「あー、それなんだけど…楓先生の方が今日は無理みたいでさ」
そう言う健一さんは何か言いづらそうにしている。もしかしたら涼香を泊められない理由でもあるのだろうか。
そう思っていると健一さんは私に向かって手で手招きをしてくる。
私はよく分からないまま健一さんの元へと行くと耳元で囁いてきた。耳に掛かる息が気持ちいい…時間も時間でそう言う気分になっちゃいそう。
「えっと、俺も一応聞いてみたんだけどさ。涼香が…」
健一さんはどうして無理なのかを説明してくれた。
以前、涼香が泊まりに来た事があったらしいが一緒に寝た際の寝相の悪さに驚愕したのだとか、あとお兄ちゃんお兄ちゃんうるさいとかも…それは私も嫌だわ。
私も涼香と寝たことはあるが、私はすぐに深い睡眠に入るから知らなかった。
それを考えると私も寝相すごかったりするのか気になってしまう。
「け、健一さん。私の寝相ってどんなっすか?」
「真緒のか…凄く可愛いよ。体を寄せてきたり軽く抱き付いてきたりしてさーー」
「は、恥ずかしいっすよ健一さん」
健一さんにそんな赤裸々に話されると恥ずかしくて顔を手で覆ってしまう。でも可愛いって言って貰えたことは純粋に嬉しかった。
「ご、ごめん。でも本当に可愛いから安心して」
そう言う健一さんも照れているのか顔を逸らしている。なんだか恥ずかしいけど凄く幸せ…キスしたいな。
私は健一さんの名前を呼び目を瞑る。健一さんも私の名前を呼んでくれて、肩に手が添えられ唇に柔らかい感触が…
「な、何やろうとしてるのお二人さん!」
来る前に後ろの方から声がして阻まれてしまった。後少しだったのに、そう言う思い込めて涼香を黙って睨むのだった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第91話 健一さんと急な来訪者 健一さん大好きっす
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現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
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