第88話 健一さんと急な来訪者 外す訳ないじゃないっすか!
台風が今日直撃すると言うことで窓の外ではすごい音がしていた。シャッターを閉めて、多少はマシになっていると思うがそれでもガタガタと激しく響いている。
それはそうと今は晩ご飯を真緒が作ってくれているのだ。
「健一さんソース付けていくっすね」
「あ、あぁ」
美味しそうなソースの香りと生地の焼ける匂いが鼻孔くすぐる。今晩はお好み焼き。
真緒の作るお好み焼きは食べたことはないが絶対に美味いに決まっている。
だが、まぁ雰囲気というか俺と真緒2人だけの場合なら最高な思い出として出来上がっただろうに…
「真緒ちゃん私にも食べさせてー」
「ダメっすよ、あんな事してたんすから食べさせないっす」
「じゃあせめてこの縄外してよー」
「外す訳ないじゃないっすか!また変なことしないとは証明できないんすから」
「そ、それはそうだけどさ…」
「涼香そこはきちんと否定しないと」
そこは嘘でも否定しておこうよとほんの少しだけ涼香の肩を持ってみたが、真緒に少し睨まれてしまったのでご飯に集中しよう。
涼香よ…不甲斐ないお兄ちゃんで申し訳ない、とは思うが流石に俺の下着を被っていた事に関しては若干引いている。前も俺の匂いを嗅いでいたがそんなにいい匂いするのだろうか?
「健一さん何考えてるんすか?」
「あー、いや。どうして涼香って俺の匂いを嗅ぎたがるかなって」
「それはお兄ちゃんの匂いが、私の興奮をさそーー」
「涼香は少し静かにしてて欲しいっすね。本当に外に追い出すっすよ」
今の真緒なら台風の中に放り捨てそうで怖いわ。涼香は真顔で言う真緒を見て冗談じゃないかもと察したのか黙ってしまう。
「えっと、健一さんの匂いでしたっけ」
「あ、あぁ。変な匂いとかしてないよな?」
「うーん、そうっすね。なんて言えばいいか分からないんすけど私的には大好きな匂いっすね。修学旅行の時に感じたんすけど、私健一さんの匂い嗅いでないと不眠症気味になるんすよ」
「なに俺の体臭って睡眠促進の効果あるの」
「多分私だけっすね」
そう言う隣に座る真緒はホットプレートにヘラを置き、俺の首元まで近づきスンスンと匂いを嗅ぎだす。真緒とはいつもこれ以上の距離感でいるはずなのに、今この状況が凄く緊張する。
ドキドキして、変な汗が出てきそうだ。
「やっぱり良い匂いっすね」
「そ、そうか」
俺は恥ずかしさを誤魔化すように真緒から顔を逸らすと、首筋にピトッと生暖かい物が当たり這う様に動き始める。
「ま、真緒なにして…」
「健一さんを味わってるんすよ」
「い、いや。こういうのは寝る前で…」
俺は食事前にすることでは無いと思い真緒を止めようと体を後ろに仰反る。だが、その程度の抵抗で許してくれる彼女ではないので下がった距離以上身を寄せてきた。
「健一さん逃げないで下さいっすよ。私は少し汗を舐めたいだけなんすから」
「いや、逃げるだろ。って言ってる最中も舐めないで!?」
真緒は一度注意しても止まらないのは知っているが、ぺろぺろと犬の様に舐めて来るのは少し異常だ。だが、真緒にならどれだけ舐められてもいいかもと思ってしまい顔がにやけてしまう。
ふと縄で縛られている涼香に目を向けると俺たちの事を見て困惑しているのか眉を八の時にし凄い顔で引いていた。
さっきあんな事をしていた妹に引かれるのは癪だが、している事があれなので文句を言いずらい。
このまま真緒に舐められるというのもいいが、今は食事中だこんな事をしている場合ではない
「ま、真緒そろそろご飯食べたいな」
「……健一さんがそういうなら分かったっす」
「今じゃなければ別にいつでも」
俺がそう言うと真緒は渋々と言った形で離れたが、最後にはニヤッと笑みを零していたからたまに舐められるのだろうな。
まぁ今はご飯だな、そう思い真緒の作ってくれたお好み焼きに舌鼓を打つのだった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第89話 健一さんと急な来訪者 美味しいっすか?
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『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
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