第85話 健一さんと急な来訪者 ちょっとしたコミュニケーションの一種っすよ
涼香に真緒と一緒にお風呂に入っている事がバレそうになり、言い訳をしようとした所でお風呂先に入ってるっすねーと脱衣所の方から聞こえてきた。
目の前に座る涼香は俺の事をきっと睨むと行かないの?と低い声で聞いてくる。普段なら何も考えずに入りに行くのだが、こう見られているとなると行きずらい。
「行ってくるから涼香は何かしてて、イヤホンとかつけてさ」
「…お兄ちゃん、もしかしてお風呂の中でしたりしないよね?」
「す、するわけないだろ!?まだ涼香入っていないのに、音だって…」
「その口ぶりからして普段はしてるって事なんだね」
「…」
俺は黙ってしまう。否定しようとも思ったが、もう半分バレているような物だし隠す必要もないと思い、俺は静かに頷く。
「はぁ、お兄ちゃん。今日は我慢して」
「……わ、分かってる。真緒にも言っておくよ、涼香は適当に何かしてて」
「はーい」
俺は涼香に素直に従おうと脱衣所に向かう。服を脱ぎ、浴室に入ると頬を膨らませた真緒が文句を言って来る。
「遅いっすよ健一さん!何してたんすか、寒いんすけど」
「ごめん。でも、それなら湯船に浸かってればいいだろ?」
「ダメっすよ、健一さんに洗ってもらうのが目的なんすから」
自分で身体を洗うのくらいはして欲しいと言いたい所だけど、俺自身真緒の身体を洗うのが好きなのでそんなことは言えそうにない。
それからはいつも通り髪をシャワーで濡らし、シャンプーで髪を洗っていく。真緒の髪の毛は短くて洗いやすい、涼香の髪は長いから洗うのが面倒に感じていた事を思い出す。
「真緒って、髪伸ばさないのか?」
「うーん、髪を乾かすのに時間が掛かるのは嫌なんすよね」
「だからか、たまに乾いていない時があったのは」
こうやって一緒に風呂に入る前は生乾きな時があった。だが、今は出たら俺がきちんと乾かすようにしている。自分ではやろうとしないのに俺がすると嬉しそうに委ねてくれるからしているこっちは特に疲れたりはしない。
「それよりもどうしたんすか健一さん、私に髪を伸ばして欲しいんすか?」
「ううん、ちょっと聞いてみただけ。変に伸ばされたら洗うの面倒になって辞めそうだし」
「そ、それは困るっすね。定期的に切らないと」
そんな雑談をしていると、髪を洗い終わり身体を洗っていく。毎日のように洗っているから手慣れたものだ。細くて白い腕を丁寧に垢すりを使って擦っていくと毎度のことながら
そこで真緒に言って置かなくてはいけないことを思い出した。
「真緒今日はだめだからな」
「?あー、そんなの当り前じゃないすか。涼香が居るんすよ?するわけないっすよ」
「そ、そうなのか?」
「なんすか、健一さんはしたいんすか?」
そういう真緒はニヤニヤしながら振り返ってくる。普段俺からしたいとはあまり言わないからだろうか嬉しそうだ。
だが、真緒の言う通り今日は涼香が居る。ここは我慢しないと明日は本格的に台風が来るみたいだし妹にバレてしまえばどうなるか…
「し、しないからな?」
「えぇ、そんな事言ってほんとはしたいんすよね。ちょっとしたコミュニケーションの一種っすよ?大丈夫っすよ声を抑えれば聞こえないっすから」
ゴクリッ
そ、そうだよな。聞こえなければ…良いんだよな。
*****
「お兄ちゃん達遅くない?」
私は真緒ちゃんとお兄ちゃんが一緒にお風呂に入っている間色々時間を潰すためにゲームをしたり、SNSチェックをしていた。
ふと、時間を見るとお風呂に行ってから1時間は経っているのに出てこない。長風呂だとしても2人裸でこんなにも長くというのはやはり怪しく思えて来る。
私は洗面所に繋がる扉の前まで足音を立てずに近づき、そうっと扉に耳を当てるとハッキリとは聞こえないが声がしているが分かった。
『け、健一さん…いっぱい出てるっすよ』
『出たな…まぁ良いだろ…もう少し開けて、入れるから』
『優しく…してくださいっすね』
『あぁ』
「もしかして、本当にしちゃってる…!?」
私は聞かなかったことにしようかとも思ったが、この後2人にどんな顔をして会えばいいか分からなくなりそうで意を決して扉の取っ手を握る。
お兄ちゃんには一度注意喚起として言ったのだ、大丈夫。そう信じて扉を開いた。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第86話 健一さんと急な来訪者 健一さん私のせいにするんすか
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現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
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