第83話 健一さんと急な来訪者 涼香泊まっていくんすか?

「ま、真緒ちゃん。アイテム奪わないでよ!」

「涼香この世は弱肉強食っす、甘えた事言ってたら今回も私が一位っすよ」


「くっ、真緒ちゃんがこんなにもゲームが上手いとは…」


 涼香が来てから数時間が経ち、真緒と楽しくレースゲームをしていた。その頃俺はというと仕事をしている。いつもの光景だ。


 朝は真緒といちゃついて全く進んでいないから、夕飯までには終わらせたいところ。


 そう思い、仕事に集中しているとピコンッと一つの通知がSNSから届いて来た。


「アシスタントかー」


 内容としては今から部屋に行ってアシスタントをして欲しいというものだった。頭を掻きながら考える。今はそこまで急がなければならない物は溜まっていないし、アシスタントはだいぶお金が貰えるだよなぁ。


「よし!真緒と涼香ちょっと隣の楓先生のところ行って来るわ」

「え、健一さん。浮気っすか」


「お兄ちゃん最低!」

「涼香は理由分かってるだろ。俺見たからな?」


「あはは、ごめんごめん」

「何の事っすか?」


 真緒が混乱しているみたいなので一応伝えておくが、今回楓先生から言われたのは涼香の宣伝でまたドカッと仕事が来たから手伝って欲しいと言うSOSだったのだ。


 その事を真緒に伝えると、じゃあカエデ先生にお弁当をと言って肉じゃがの入ったタッパーを手渡された。昨日の残りではあるが、激務な楓先生の事だからちゃんとしたご飯を食べていないのではという真緒の心遣いだ。


 俺も真緒が居なかったら碌なご飯食べていなかったからこれは確実に助かるだろうな。


「それじゃあ行って来るな。夕飯までには帰って来るよ」

「はーい。あ、健一さん行ってきますのします?」


「涼香居るしなぁ」

「大丈夫っす!多分気にしないっすよ」


 そう言う真緒はゲームをする手を止めて、玄関で靴を履き終わった俺の下へと近づいてくる。


 真緒の事だ、何か理由を付けようとすること自体は確定しているから、ここは素直に聞いて置くのが一番いい。


 そう思い真緒とキスをした。


「な、何やってるの…」


 と言った涼香の困惑する表情を玄関の扉を閉めるまで消える事は無かった。



*****



「ねぇ真緒ちゃん、お兄ちゃん遅くない?」

「そうっすね。まぁすぐ帰ってくるっすよ」


「真緒ちゃん、今日の晩御飯何なの?」

「ん?お好み焼きっすよ」


「そうなんだ、お風呂入ってきていい?」

「いいっすけど、涼香いつ帰るんすか?」


「あー、その事なんだけどね…」


 涼香はあれから私とずっとゲームをして遊んでいるけど、外はもう暗くなっているし健一さんが出る時に雨が降っていたから帰るなら早くしないと。


 そう思っていると、涼香は何か言いずらそうにしてゲームをしている手を止める。


「どうしたんすか?」

「えっとね――」


「ただいま」


 涼香が何かを言おうとしたところで健一さんが帰って来たようだ。帰って来た健一さんの肩はまだ雨が降っているのか濡れていた。


「健一さんおかえりなさいっす。服濡れちゃってるっすね、今タオル用意するっす」

「ありがとう。土砂降りでさ、風も強くなってきてて…ってあれ涼香帰ってなかったのか」


「そ、そうなんだよね…。お兄ちゃん今日泊めて貰っていい?」

「あぁ、この天気だと仕方ないしな」


「ありがとうお兄ちゃん」


 そう言う涼香はニコニコと健一さんに笑顔を向けている。


「え、涼香泊まっていくんすか?」

「うん、ごめんね真緒ちゃん。出来れば早くに帰りたかったんだけど、さっき確認した時には電車止まっちゃってて」


「なんで電車止まってるんすか?」


 私がそう言うと健一さんと涼香は驚いた顔をしている。良く分からないが、2人は知っているという事だろうか。


「真緒ちゃん天気予報見てないの?」

「天気予報っすか。見ないっすね、学校行って家で居れば必要ないかなって」


「「まじか」」


 なんだろう凄く馬鹿にされているように感じるのは気のせいだろうか。そう思っていると健一さんが話してくれた。


「真緒、天気予報くらいは見ておいた方が良いぞ?」

「そうなんすか?家に居れば健一さんとずっと一緒に居られるっすよ」


「う、うん。そりゃ真緒と一緒に居られるのは嬉しいけど、もし出かけるときに雨が降ったら困るだろ?今日みたいにこれから台風だと」

「たい…ふう?」


「真緒ちゃんほんとに知らなかったんだね。今日の夜から来てて、明後日だっけ?過ぎるの」

「あぁ、だから明日は外出できないと思うんだけど…真緒どうしたんだ、凄い顔してるぞ?」


 私は今日の夜から台風が来るなんて知らなかった。


「えっと、その…明日買い物に行く予定だったんすよ。だから…」

「だから?」


「明日、ご飯作れそうにないっす」

「「え゙…」」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:第84話 健一さんと急な来訪者 あれを出すっすか


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現在連載中

『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』

https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174


甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!

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