第80話 健一さんと夏祭り! 最高っす
涼香との
「健一さん、涼香とちゃんと話せたんすね」
「あぁ、真緒のおかげだよ。ありがとう」
「いえいえ、私も久しぶりに瑠々華と妹と話してみてやっぱり家族で険悪なのはいけないなって思ったんすよね。まぁ瑠々華の場合は自業自得なところあるんすけど…」
「あはは…瑠々華ちゃんはね」
射的の景品を当てた後よろしくない発言をしたとして真緒のお叱りがあった。涼香は赤面して暫く俺と真緒の顔を見ようとしていなかったが、案外耐性無いのかもな。
瑠々華ちゃんと涼香を先頭に後を付いて行くように俺と真緒は手を繋いでいた。逸れないようになんてセリフを初々しいカップルが手を繋ぐ口実として使うが真緒の場合、手が空いているからという理由で繋いで来る。
「こうやって手を繋ぐのもだいぶ慣れたな」
「そうっすね、繋いでないと不安になるくらいっすよ」
「ちょっと分かるかも。これから夏が終わって寒くなったら繋ぐ頻度も増えそうだしな」
「私は夏だろうと冬だろうと繋ぎたいっすけどね。いつでも健一さんを感じていたいっすから」
そう言う真緒は手を深く絡ませてきて恋人つなぎになる。細い指が強く結びついて来て真緒の温もりと触れる肩の感触が凄く安心するな。
「まぁ真緒ちょっと2人で抜け出さないか?」
「ふふ、良いっすよ」
*****
「ねぇ涼香ちゃん、チョコバナナ食べたい!」
「もう、瑠々華ちゃんさっきフランクフルト食べたでしょ?そんなに食べてると太っちゃうよ?」
「ぶー、お祭りの時くらい良いじゃん。これからお姉ちゃんになるんだしちょっとくらい甘えたいの!」
「お、お姉ちゃんってまだ気が早いと思うんだけど…ね、お兄ちゃんもそう思うよね…?ってあれ、お兄ちゃん?真緒ちゃんも居ない。瑠々華ちゃん2人何処行ったか知らない?」
「分かんない!そんな事より涼香ちゃんくじ引きたい!電動マッサージ機欲しい!」
「もう、はいはい走らないでね。人多いんだから」
チラッとだけどお姉ちゃんとお兄さんが2人で何処かに行くのが見えた。これは野外プレイか、と思ってたけど元々2人のデートだしね。今は邪魔しない様に2人目のお姉ちゃんの気を引いておかなくちゃ。
楽しんでね、お姉ちゃん。
*****
健一さんに連れられて屋台を楽しんでいる2人を置いて長い階段を登っていた。しばらく歩いていると屋台の光や食べ物の匂い、楽しそうな声が遠くなっていくのを感じる。
抜け出そうと言われた時人気のない所に連れ込まれてそう言う事しちゃうのかと思った、ゴムあるしね。でも、健一さんは階段を登るだけで一向に行き先を教えてくれない。
「健一さんどこ行くんすか?」
「もう少しだから待って」
再度聞いてみたけど、教えてくれない。健一さんの言う通り少しだけ待とうと思い、手を繋いだまま登っていく。
何段あるんだろう、そう思ってしまう程に多い。最近朝に一緒に歩いて体力が着いて来ているからか健一さんはだいぶ上がって来たけど弱音を吐かずにいる。
ちょっとした成長だけど嬉しい。
「着いたよ真緒」
「ここ…ですか?何もないっすけど」
「今はね」
連れられて辿り着いたのは特に珍しい物は無く、木に囲まれ一部分が柵で街が一望できる様になっているくらい。
健一さんは柵の所まで歩くと手を置く。今から何が始まるのだろうか。
「健一さん今はって――」
バンッ!
私が健一さんに聞こうとした瞬間大きな音と共に、眼前が鮮やかな光に包まれた。それに続くようにいくつ物花火が打ちあがる。
打ち上げ花火を見るのは久しぶりで、去年は健一さんの部屋で過ごしていた。でも今年は一緒に見る事が出来ている。
初めて見るわけじゃないのに、以前見た打ち上げ花火よりも綺麗に感じた。
「綺麗だろ?よく見える所探してたんだよ」
「はいっす、綺麗っすね」
「この前海でした花火はちゃんと見れてなかったから、夏休み中にもう一度真緒と見たくてさ」
「健一さん…」
前した手持ち花火は私の意識が違う所にあったせいで、うまく楽しめてなかった。それで今日こうやって。
「もしかして1週間前から計画してくれてたんすか?」
「うん、どう…かな?」
健一さんは自信がないのか少し不安そうに私の顔を見る。別に花火は特別好きではない、けど。
「最高っす」
今は何よりも綺麗で、胸に響く音と手から感じる体温が高校最後の夏休みの思い出。
「健一さん、しないっすか」
「…あぁ」
そして決して忘れる事の無い夏になった気がする。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夏休み到来! 編 完
ここまで読んでいただきありがとうございます!
台風とお泊り 編
次回:第81話 健一さんと急な来訪者 健一さん覚えてるっすか?
応援、☆☆☆レビューよろしくお願いします!励みになります。
現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
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