第79話 健一さんと夏祭り! きちんと話し合って下さいっすね

「ほんとに私も一緒に来て良かったの?お姉ちゃん」

「大丈夫っすよ、健一さんが瑠々華も一緒にって言ってくれたんすから」


「まぁそう言う事なら私は良いけど、でも、お金あまり持ってきてないよ?」

「そこは私が出すっすよ。だから瑠々華は遠慮しなくていいっすからね」


「え、いいの?うーん、まぁ久しぶりにお姉ちゃんと遊べるし頼らせて貰おうかな。あっお姉ちゃんあれ食べたい!」

「瑠々華走ると危ないっすよー」


 俺と真緒は夏休み最後の思い出として夏祭りに来ている。俺の想定では真緒と二人でと考えていたが、昨日の話を聞いてしまってはもう少しくらいは家族との時間を取ってあげたいと思い瑠々華ちゃんも誘ってみたのだ。


 このまま順調に真緒と関係を進めて行けば、瑠々華ちゃんと…家族と遊ぶ機会も減るだろうと気にしたからと言うのもあるが、お姉ちゃんな真緒をもっと見てみたいというちょっとした願望だったりもする。


 今来ているのは、真緒のご実家から少し離れたところにある大きめの神社。近くで花火大会もする様で屋台を回り終った後にきちんとリサーチしておいたスポットで花火を見る予定だ。


 今日の為にご実家に寄り浴衣を真緒と瑠々華ちゃんが着ているが、可愛いに尽きる。


 瑠々華ちゃんはピンク色に赤い色の帯と子供っぽい浴衣が好奇心旺盛な性格に良く似合っていた。


 真緒は紺の生地に青い大柄の花が少し大人印象を与え、髪には浴衣の花と同じ髪飾りを付けいつもの飾り気のない姿も好きだが、今日の真緒は一段と綺麗に俺の目に映る。


「ねぇ、お兄ちゃん。私まで来て良かったの?真緒ちゃんとのデートでしょ」

「ん?まぁ真緒が呼んだんなら仕方ないしな。と言いたい所だけど、涼香とは一度きちんと話しておきたかったってのもあるしな」


「お兄ちゃん名前…呼んでくれるんだ」

「兄妹なんだし、名前くらいな。それとありがとうな、真緒と出会わせてくれて」


「う、うん。でも頑張ったのは真緒ちゃんだよ、私は何もしてないし」

「そんな事ない。真緒から聞いたよ、俺の事ずっと宣伝してくれたあの人だったって事。そっちもちゃんとお礼を言いたかったんだ、涼香には感謝してもしきれない」


「怒らないんだね、私の勝手な行動でお兄ちゃんの学生生活奪っちゃって大学だって行かなくなったのに」


 俺と涼香は屋台ではしゃいでいる安達姉妹を遠目に眺めながら、少し離れたベンチに座って話していた。前々から一度向き合わないといけない、そう思っていたし真緒が呼びたいと強く押して来たからこうやって二人で話せている。


 真緒としても彼氏と親友が仲が悪いというのは気にしている所があったのだろう、ここに来る前『きちんと話し合って下さいっすね』と言うと相も変わらず瑠々華ちゃんと猥談していた。


「怒ってないと言えば嘘になるけど、今の方が楽しいし一生大切にしたい人とも出会えた。俺の生活も、彼女も全部涼香のおかげだしな。大学は前の彼女に合わせてただけで別に凄く行きたいとは思っていなかったから気にしてないよ」


「そうなんだ。良かった、私ずっとお兄ちゃんの人生台無しにしたんじゃないかって思ってて…真緒ちゃんにしか頼れなくて…」


 そう言う涼香は鼻を啜り目には涙を浮かべていた。そんなにも思い詰めていたのかと痛感させられる。


 怖いと思った学生時代から涼香を避けて生きてきた。でも、辛いと思った時に切っ掛けをくれるのはいつも涼香だったのを思い出す。


 仕事が高調して来たのも家を出てお金が無い状態だったし、真緒と再会したのだって体調を崩す寸前だったからどっちも無くてはならない物だった。


「改めて、ありがとう」

「う、うん…」


 隣で俯き嗚咽を漏らす涼香の頭を右手で撫でる。こうやって妹の頭を撫でるのはいつ以来だろうか、もう昔過ぎて思い出せないや。


 多分、俺は違う意味でも涼香を避けていたんだろうな、優秀だからとレッテルを張ってお兄ちゃんなのに妹の気持ちも考えず酷い言葉をぶつけて自分という存在が霞まない様にしていた気がする。


 だが今は違う、こうやってまた涼香ときちんと話せてるじゃないか。これは真緒の存在が大きい、普段は甘えてばかりだけど何かがあれば頼りになる。今回もこの時間を作ってくれた。


 ずっと助けて貰ってばかりだな。


 視線を涼香から屋台の方へ向けると、楽しそうに射的をしている真緒が見えた。


「涼香、俺に大切な物を作ってくれてありがとな。真緒と幸せになるよ、だからもう心配しなくて大丈夫。重荷に感じることはないから、安心してくれ」


 俺はそう言うと涼香はゆっくりと顔を上げて、クシャクシャになった泣き顔で溜まった涙を手で拭いながら頷く。


 女の子なのに…そう思いポケットの中からハンカチを出し手渡すと小さく感謝を述べて拭いだした。暫くして涙が止まり、一度落ち着かせる為か深く息を吸って俺の顔を見て来る。


「お兄ちゃん、私お兄ちゃんの事が大好き。それと同じくらい真緒ちゃんの事も大好き…だから、絶対に裏切っちゃダメだよ。真緒ちゃんと幸せになってね」

「あぁ、分かってる」


 涼香のその言葉に重く何かが伸し掛かるようなものを感じたが俺は即答した。裏切るなんて事はしない、真緒が俺を必要とする限り俺も真緒を必要としているから。


「さぁ、話は終わりにして今日は楽しもうぜ。真緒たちも待ってるだろうしさ」

「うん、そうだね」


 俺は立ち上がり涼香にそう言うと、笑顔で返してくれる。その笑顔が、久しぶりに可愛いと感じたのは多分気のせいでは無いだろう。


 涼香と歩き、射的をしていた真緒達の元へと歩いていく。


「あ、健一さん!ゴム当たったっすよ!2箱も」

「お姉ちゃんそれで今晩も…ぐへへ」


「何、射的で当ててるんだよ」


 というかよくそんなもの子供が集まる夏祭りに置いたな、おい。


「でも良かったじゃないっすか、昨日丁度無くなって買おうとしてたんすから」

「ま、真緒ちゃん…?昨日って…。お、お兄ちゃん…」


「涼香これには深い、深い事情があってだな」

「ほほう、深く絡み合ったって事ですね!」


「瑠々華ちゃん!?」


 そんな瑠々華ちゃんの爆弾発言でまた険悪な雰囲気が立ち込めようとしていた。


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ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:第80話 健一さんと夏祭り! 最高っす


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現在連載中

『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』

https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174


甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!

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