第77話 健一さんと前日のお昼 あるっすよ、子供の頃だったんすけど
「お、来たみたいだぞ」
「お姉ちゃんお肉焼いて焼いて!」
「慌てなくても焼てあげるっすよ。健一さんもちゃんと焼いてあげるっすからね」
「あ、あぁ。でも、真緒が食べられなくなるだろうし自分で食べる分くらい焼くよ」
「全然気にしなくてもいいっすよ?あ、それなら私が焼いていくので健一さんは私に食べさせて欲しいっす」
「いいねお姉ちゃん!そういうの待ってました!」
なぜか若干瑠々華ちゃんが興奮しているようにも見えるが、食べさせるくらいはよくしているので拒否することも無いだろう。
「分かった。でも何で瑠々華ちゃんはそんなに楽しそうなの…?」
「あー瑠々華は見て楽しむ人だからっすかね。街中歩いていると良くカップルを凝視してるっすよ」
「お、お姉ちゃん言わないでよ…。こういうのは自然体じゃないと楽しめるのも楽しめないんだよ?」
瑠々華ちゃんにも何かしらの拘りがあるらしく、真緒に対して少し怒り気味にそう言っていた。
「そう言うものなんすか…?」
「当り前だよ、ムフフなシチュエーションは偶然の産物で無ければいけないんだよ!海外の映画だって、アドリブ部分が話題になったりするでしょ?誰が見ても分かるような作られたお芝居エッチよりも、素人感のあるエッチの方が興奮するでしょ」
「瑠々華ちゃんは本当に中学生なんだよね?」
ちょっとだけ俺も納得しそうになったが、確実に中学生の発言とは到底思えない。しかもこれは相当見てる人の感想だし、もしかしたら真緒よりも詳しいかもしれないな。まぁ、真緒に関しては俺の薄い本で勉強してるような子だし元々の知識的にも瑠々華ちゃんの方が圧倒的に豊富だろう。
だが、その年で廃人レベルで見てるなら今すぐにでも止めないと将来が不安だ。最近の子はちょっと行き過ぎてる節があるし、真緒も妹も…まだまともなのが川峯さんだけという。いや、あの子も初対面で失礼なこと言って来たから同類か。
そんな話をしながらも真緒はお肉を焼いていく。この前バーベキューしたときにも思ったが、やはり真緒は焼くのがうまい。
「健一さんお肉焼けたっすよ。食べさせて欲しいっす」
「あ、あぁ。熱いからちょっと待てよ。ふぅ、ふぅ…」
焼けたお肉を冷まし真緒の口の中へ入れる。
チラッと視界に入る瑠々華ちゃんは瞬きせずにこちらを見ていた。
「んー、美味しいっす。健一さんご飯、ご飯も」
「ちょっと待てよ。はい、あーん」
「…ん、ありがとうございますっす。あ、お肉焼けたっすから健一さんもお口開けてくださいっす」
「あ、あぁ。でもその前にいいか?」
「?どうしたんすか」
「いや、瑠々華ちゃん大丈夫?」
「…甘い…これぞ私の見たかったもの…」
瑠々華ちゃんは胸に手を当てて此方を見ているが、どこか遠い目をして何かに浸っている模様。声をかけても正しい返答を貰えない辺り、自分の世界に入ってるのだろう。
真緒も瑠々華ちゃんの様子をチラ見するが、少し呆れたようにこちらに向き直した。
「健一さん、瑠々華は放っておいて大丈夫っすよ。それよりご飯食べるっすよ。時間があるんすから」
「あ、あぁ。真緒が良いならそうするか」
瑠々華ちゃんの姉である真緒が言うなら多分大丈夫だろう。という事で俺と真緒は食事を再開する。真緒と俺はタレよりも塩派なので三種類の塩が入った受け皿を一緒に使い、これが食べたいなどは言えば口に入れてくれた。
熱々のお肉をしばらく堪能し、真緒からも笑みが零れている。いつ見ても真緒の笑顔は可愛く、見飽きそうにない。
楽しく食べさせ合いをし、お肉も減ってきたタイミングで真緒はある物を注文した。届いたものを見て結構食べたのにも拘わらず、涎が出てきそうになる。
「次はサザエのバター醤油焼きっすよ」
「おぉ!サザエは久しぶりに食べるけどバター醬油は絶対うまいよなぁ」
「ふふ、ちゃんと美味しく焼いてあげるっすからね」
「焼く前からでも、もう楽しみだわ」
俺がそう言うと、真緒は再び笑みを零し注文したサザエを網の上に乗せる。
前にも気になったが、網での調理が手慣れている気がするんだよな。
「真緒はサザエ焼いたことあるのか?」
「あるっすよ、子供の頃だったんすけど。一度だけ…」
続きを言おうとする真緒は少しだけ寂し気というか何か喉に詰まらせたような重たい雰囲気を漂わせながら話してくれた。
「私が瑠々華のお姉ちゃんになる前…安達になる前に」
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第78話 健一さんと前日のお昼 ふふ、覚えてたんすね
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現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
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