第76話 健一さんと前日のお昼 ふ、二人居るっす

 酔って怒られた翌日、俺は真緒の実家へと来ていた。どうして来ているかと言うと明日の準備をする為、そして真緒の久しぶりの帰省も兼ねている。


 真緒との同棲の許可を貰いに行ったあの日以来帰って来ていなかったのだから、ご両親も心配しているだろう。


「久しぶり瑠々華ちゃん、元気してた?」

「はい!元気もりもりです!」


 そう言った瑠々華ちゃんは暑そうな着物をまくり二の腕で力こぶを作ると、白いが真緒よりも筋肉が付いてそうな腕で元気をアピールしてくる。


「瑠々華ただいまっす!元気そうでなによりっすよ」

「えへへ、お姉ちゃんおかえり。お姉ちゃんも元気そうだね」


「そりゃあもう、毎日健一さんと愛し合ってるっすからね!」

「愛し合ってる…お、お姉ちゃん詳しく!」


 相変わらず瑠々華ちゃんはそう言う事に興味がある用で、帰宅早々お仕事を放棄して真緒の話に耳を傾けている。


 話の内容としては確実に昼間に話すような事ではない。俺達は起きてランニングをし朝食後すぐに電車に乗り来ているので午前中だ。つまり昼前になんて話をしているんだと言う感じ。


 まぁ誰かが止めなければいけない訳だけど、話はもうだいぶ盛り上がっていて間に入る余地もなさそうだ。


 生憎、今はお客さんはおらず止められる人間も俺しかいない。だが、久しぶりに家族と話すのだここは邪魔をせず見守るか外をぶらっと歩いてこようか。最近真緒と運動しているから前に比べればマシになったと思うから、散歩という選択も悪くない。


「真緒、俺ちょっとこの辺り散歩でもしてくるよ。瑠々華ちゃんと話してて」

「え、何処か行っちゃうんすか?それなら私も行くっす」


「お姉ちゃん話の続きは!?気になる気になるー!」


 なんというかカオスだ。俺が離れれば真緒が付いてこようとするし、瑠々華ちゃんも半分仕事してないからもしかしたら付いてくるかも…サボった前科持ち出しな。


 少し散歩したい気分だったが、ここは引いた方が良いだろうか?そんなことを考えていると、それなら…と瑠々華ちゃんが話を切り出してくれた。


「私、もうすぐで休憩貰うので折角ですし三人でご飯食べませんか?」

「いいね。この辺りのお店とか一度行ってみたかったから助かるよ。真緒もそれでいいか?」


「はい!問題ないっすよ」


 瑠々華ちゃんの提案に全会一致という事で三人でお昼を食べる事となった。



*****



「瑠々華ちゃんはこの辺り詳しいの?」

「そうですね、学校の通学路なのでたまに友達と寄ったりしますね。大体のお店は分かるので食べたい物があれば案内しますよ」


「それは頼もしいな、何にしようかな」

「おかしいっす、私も通学路だったすけど。まったく分からないっすよ」


「お姉ちゃんは友達いないから仕方ないよ」

「うっ…ふ、二人居るっす」


 真緒はそう弱弱しく言う。瑠々華ちゃん案外あたりが強いのか真緒に対してだけ辛辣なのか分からないが、仲が悪い訳では無いからいいか。


 俺は逸れそうになる話を戻そうと真緒に質問してみる。


「真緒は、何食べたい?」

「そうっすね。お肉が良いっす、結構ガッツリ行きたいっすから」


「お、いいな。じゃあ俺もお肉で、瑠々華ちゃんおすすめのお店ある?」


 俺が瑠々華ちゃんに尋ねると、少し待っててくださいねと言いスマホで調べだした。暫くすると数店舗候補を作ってくれ、何処に行きたいかを話し合う。


「食べ放題いいっすね。お肉以外にも貝類もあるみたいっすし」

「俺もそれが良いかな」


「わかりました。ここから五分くらいですね」


 瑠々華ちゃんは場所と到着時間を軽く言うと、再び真緒の話を聞いていた。


「おおー興味深い、お姉ちゃん今度私にも見せて!」

「瑠々華には刺激が強すぎるからダメっすよ、もう少し大人になったらいいっすよ」


「やったー!生で見れるとかなかなか経験できないからね!出来れば私も混ぜて欲しいけど」

「ダメっす!健一さんは私だけのっすから、妹の瑠々華でもこれは譲れないっす」


「えー、けちー」


 二人は楽しく猥談している。だが、俺が隣に居るのにそう言う話をするのは辞めて欲しい。いや、俺の居ない所でもしないで欲しいけどな。


「あ、ここです」


 暫くすると瑠々華ちゃんが足を止め案内終了。着いたのは海鮮系もある焼肉食べ放題のお店。最近は真緒と外に出る事も増えてきているが食べ放題は初めてだ。


 入店して俺は店員さんに人数を言い、三人で食べ放題コースを頼む。席に案内され、タブレットで注文するシステムでまず最初に飲み物を頼もうかと思い、二人に尋ねる。


「ウーロン茶でお願いします」

「うーん、コーラっすかね。健一さんは何にするっすか?」


「俺も、ウーロン茶にするよ。注文するから何食べるか考えとけよ?」


 店に着いても真緒と瑠々華ちゃんの会話は止まらないので、一応注意という意味で話を変えようとそう言った。流石に店の中では下系の話はしなくなったは良いが、話の内容は俺と真緒の生活で起こった事やデートの話が大半だ。


 瑠々華ちゃんは興味深く聞いてるみたいだけど、そんなに面白いだろうか。


 飲み物を注文し終え、次は何を頼むか話す為に真緒にタブレット渡す。席はカウンターテーブルになっており、前に大きな網や鉄板がある。真緒を中心に左側に瑠々華ちゃん右側に俺が座っている状況だ。


 真緒は瑠々華ちゃんにも見えるようにタブレットを持ち、どれにしようか話し出した。


「瑠々華はどれが良いっすか?」

「うーん、私はお姉ちゃん程食べられないから薄いお肉を複数種類食べたいかな。あとライスも小盛りで」


「分かったっす、じゃあこの豚、鳥、牛それぞれ頼むっすね」

「うん!お姉ちゃんはどうするの?」


「そうっすね、タンを始めにどんどん味の濃い物を頼んでいくっすね」


 こうやって真緒と瑠々華ちゃんを見ていると仲の良さが分かってくるな。真緒は俺の前だと願望むき出しの妹系だけど、瑠々華ちゃんの前だときちんとお姉ちゃんやってるんだと分かる。


 瑠々華ちゃんも真緒と似て下ネタが大好きなのはどうかと思うが、俺の仕事を知ってもなおこうやって普通に接してくれるからありがたい。そんな仲の良い安達姉妹を見ていると頼むものが決まったのか真緒が話しかけてきた。


「健一さんはどうするっすか?私と同じでいいっすか?」

「あぁ、基本真緒に任せようかな」


「了解っす!じゃあ、これとこれとこれを…」


 俺達は一時間コースを頼んでいるのでこれから本格的に食べ放題が始まりそうだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:第77話 健一さんと前日のお昼 あるっすよ、子供の頃だったんすけど


応援、☆☆☆レビューよろしくお願いします!励みになります。




現在連載中

『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』

https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174


甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る