第75話 健一さんとお酒の味 一つ約束して欲しい事があるっす
「健一さんは私の身体の事どう思うっすか?」
真緒ははっきりそう言った。真剣な眼差しで、しかし何かに怯えているようにも見える。もしこれが、真緒を怒らせてしまった原因に関わる質問なのだとしたら、俺の仮説は間違っているかもしれない。
真緒が自身の事を尋ねて来る時は、自分に自信が無かったり他人と比べて劣等感からくるネガティブな思い込みが大半だ。
俺は毎日していても不満に感じた事はないし、それは真緒にもきちんと伝えている。だから俺が真緒を無理やり…というのは好きでなければありえない訳で、身体をどう思うかという質問が飛んでくる時点でおかしいのだ。
なら今回聞いていているのはもっと別の所にあるって事だよな。だが正直分からない、どう思うかなんて決まっているし。
「白くて細くて敏感でとてもエロいと思います」
「えぇ、健一さん私真面目に聞いてるんすけど、その返事は私以外喜ばないと思うっすよ」
真緒が喜ぶならそれでいいだろ、そう思ってしまうがどうやら俺の回答は好ましくなかったようだ。そもそもこの質問に正解があるのかすら分からない。
「もう単刀直入に聞くけど、真緒は何で怒ったんだ?」
「あー、それはっすね。えっと、ま…」
「ま?」
「丸くなったって酔った健一さんに言われて、最近に気にしてた事だったから傷ついたっす」
そう言う真緒はパジャマの上からお腹を摘まんでいる。俺そんなことを言ってしまったのか、女の子に対して大分デリケートな所を攻めたな。
これは全身全霊で謝らないと。
俺はお風呂の前にもしていた姿勢を再度取るようにして土下座した。
「申し訳ございません!!」
「け、健一さん!?そこまでしなくても…」
「いや、俺の発言で真緒を傷つけたのは事実だから謝る事はさせて欲しい」
俺は全力で謝罪をした。記憶が無いからと言っても発言には責任を持たないといけない。何が償いになるかは分からないが今はただ謝罪することしか出来ないんだと思う。
「そ、そうっすね。もういいっすよ、でも一つ約束して欲しい事があるっす」
「ありがとうございます!何なりと!」
俺はどんな約束でも守る気で強く返事をし、頭を上げ真緒の顔を見ると今日一笑顔でこう言った。
「お酒はもう二度との飲まないで下さいっす」
「はい!二度と飲みません!」
そして再び床に頭を擦り付けるのだった。
*****
「いやぁ、今思い返すとマジで情けないわ」
「ほんとっすよ、将来は私の尻に敷かれるんすかね」
「はは、物理的にも敷かれてるけどな」
「えへへ、健一さんのお膝の上は私専用っすから」
「真緒ならいつ座って貰っても構わないよ。まぁ、それは置いといて今日中に宿題終わらせるぞ」
「えー、今日はもう辞めるんじゃなかったんすかー」
「いやいや、明後日にはもう控えてるんだから。気兼ねなく楽しむ為にも終わらせておこうよ。明日から真緒の実家に行くんだし」
「それもそうっすけど、あー早く明日にならないっすかね」
「現実から逃げても後で辛い思いをするのは真緒自身なんだからな?登校日まであと1週間ちょっとだしラストスパートほら頑張って」
「ご褒美ー、健一さんご褒美欲しいっすよ」
「おい、まだ手を付けてないのにご褒美を要求しないで欲しいんだけど」
「そんなこと言って、してくれるんすよね?」
「はぁ、ほんと仕方ないな」
「えへへ…ん」
この時の味は少しほろ苦く、レモンの香りはするものの私にはまだ早いなと感じたのだった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第76話 健一さんと前日のお昼 ふ、二人居るっす
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現在連載中
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
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