第71話 健一さんの頑張れ肉体改造! ゆっくり、ゆっくりでいいんすから
海から帰って来た私と健一さん、時間帯としては午後4時。ご飯を作るにはまだ早く、帰りの電車までデートを楽しんでいたのだから疲れていると思う。けど、私は健一さんとの約束を果たす為に鬼になると覚悟を決めた。
睡眠だって電車の中で健一さんに膝枕して貰って十分取ったから大丈夫。そして健一さんに約束の事を聞くと少し怪しかったけど覚えていると言ってくれた。
だから今は腹筋のお手伝いをしているのだけど。
「ま、真緒ぉ」
「健一さん…」
健一さんの基礎体力を把握し、自分なりに無理のないトレーニングメニューを組み立てようと考えていた。けど、健一さんは力一杯という表情で腹筋を3回目を達成して倒れてしまう。
一回目から限界感あったけど、無視して続けた結果がこれって。これは筋肉がどうとかの問題じゃ無いかもしれない。
完全に体力不足だ。
ぜぇぜぇ言って倒れている健一さんを暫く見つめるが、動く気配を感じないので根本的な問題を対処しないといけないかも。
「健一さん!」
「うぅ…な、何…?」
「明日から朝付き合ってくれないすか?」
「突き合う?いつもしてるじゃん。小一時間程」
「健一さん何下ネタ言ってるんすか、ふざけないで下さいっす!」
「なんで俺怒られてるの!?いつも真緒から誘ってくるよね?」
「もう、だからそっちの『つきあう』じゃなくて!朝の散歩に付き合って欲しいんすけど」
「散歩?あぁ、それくらいなら別にいいけど。それは、あの…した後なの?」
私は健一さんの最後の言葉で少し考えてしまう。学校がある日は流石に一回までにしているけど、した後って健一さんいつも疲れた様に見えるし、そうなったら運動どころじゃ無いかも。ここは健一さんの健康の事を考えて覚悟を決めないといけない。
「……明日からしないっす」
「え!?」
健一さんはさっきまで一回の腹筋でゆっくり昇って来ていたのに、私の今した発言に驚いたのか直ぐに起き上がると目を見開いている。
私健一さんにどれだけ、欲求不満な女子だと思われているのか分からないけど朝くらいは我慢できるし…キスの時間を長くすればいいもん。多分、うん、きっと我慢できるはず。
「真緒、本気なのか?」
「本気っす」
「そっか…わかった。真緒が覚悟を決めたなら俺も腹を括らないとな」
そう言った健一さんは、私に近づくと優しく抱きしめてくれた。1週間後…と耳元で囁きながら。
*****
朝のウォーキングに誘われた翌日、俺は真緒と一緒に最寄り駅へと歩いていた。この駅は真緒が通学時に使っている物で家から約1キロ程距離がある。
引きこもりで少し前まで一切と言っても過言ではない程利用していなかったのに、最近はデートなどで目に見えて回数が増えて来ていた。
「なぁ真緒、駅まで本当にいいのか?もっと遠くまで歩いたりした方が体力は付くと思うけど」
「甘いっすよ健一さん!そもそも土台が出来てないんすよ。私は子供の頃からよく動いて来たっすから、少しの無理くらいなら大丈夫っすけど。健一さんは元々の体力無いじゃないっすか」
「そ、そうだな。だが、そこまではっきり言われると自分が惨めに思えてくるわ」
「これからっすよ、私はずっと隣を歩いているっすから。健一さんは自分のペースで体力を付けていって下さいっす。ゆっくり…ゆっくりでいいんすから」
隣で手を繋ぎながら歩いている真緒は可愛い笑顔を俺に向けそう言ってくる。その言葉からは、これからの俺達の関係と通づる物を感じた。
真緒に負担が掛かるかもと思い、いっその事ジムにお金を払って基礎的な体力作りをするのも有りだと考えていたが、思い過ごしだったようだ。
「ありがとな、何かお礼をしないと。あ、またあのカフェでケーキでも奢ろうか」
「もう健一さん、こんな事でケーキ貰ってたら私太っちゃうっすよ」
「その分一緒に運動すればいいんじゃないか?」
「…一緒って言えば私がなんでも許可すると思ってるんすか」
そう言う真緒は不服そうに頬を膨らませジト目を向けてくる。だが、
「でも、そうっすね。1回くらいなら貰ってもいいっすかね…」
甘い物の欲求には勝てなかったようで、カフェでケーキを3つテイクアウトして帰るのだった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第72話 健一さんとお酒の味 はあぁぁ、幸せっす~
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新作始まりました!
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
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