第70話 健一さんの頑張れ肉体改造! 10秒以内にもう一回っすよ
真緒と海で花火を楽しんだ翌日。帰宅し、暑さから冷房を入れ着替えている最中。真緒は俺の着替えを用意してくれたみたいだ。
「健一さんこれに着替えてくださいっす」
「ありがとう真緒。でもなんでタンクトップなんだ?」
俺が普段着ているのは、高校の時から着ているジャージ。着慣れてしまって他の服を部屋着にするのが面倒になっているので仕方がない。家で仕事をしている人なんてみんなジャージで生活しているとすら思っている。偏見かもしれないが…
「健一さんもう忘れたんすか?BBQする前にした約束を」
「BBQする前?」
何か約束なんてしただろうか…花火の最後に気持ちいいキスをした事くらいしか覚えていない。いや待てよ、そういえば運動がどうとかって。
「はぁ、健一さん嫌だからってすぐ記憶から抹消しないで欲しいっすね」
「し、してないぞ!?ちゃんと覚えていたからな?」
「そうっすか?まぁ覚えていたなら話が早いっす。早速着替えるっすよ」
「…」
「どうしたんすか?もしかして、今更やりたく無いなんて言わないっすよね」
正直やりたくない…昨日いっぱい遊んだんだ、筋肉痛になってはいないが疲労が凄い。そんな中で、運動なんてしたら明日は本当に動けなくなってもおかしくないだろう。
でも、真緒と約束したのは本当だし。ここでやらないなんて選択肢はそもそも無い。それに、これを期に運動が好きになるかもしれないしな!多分有り得ないけど。
「あぁ、やるに決まってるだろ?真緒とならな」
「おおー、その意気込みっすよ!私も健一さんの為に色々出来る事があれば考えるっすから」
真緒の期待に答える為にも頑張らなくてはな。だが学生時代から碌に運動なんてしてこなかったから何から始めればいいのか分からない。
「真緒、まず何からすればいいんだ?」
「うーん、まず健一さんの基礎体力を知りたいっすね」
「基礎体力か、じゃあ腹筋でもすればいいかな?」
「そうっすね、軽く腹筋10回からお願いしたいっす」
腹筋10回なんて楽勝じゃないか、流石に運動ができないからって高校の時は普通に出来ていたとは思うし。総合の成績は学年の中で下から数えた方が早かったのを覚えているが。
「楽勝だな!10回なんてすぐ終わらせてやる!」
「おっ!自信あるっすね、じゃあマット用意してくるっすから着替えたらすぐに来てくださいっすね!」
そう言うと真緒は扉を閉めて出ていく。真緒に伝えないといけない事があるから、パパッと終わらせたい所。俺は急ぐように真緒の用意してくれた服に着替えて脱衣所から出る。
部屋に入ると、中央に置いてあるローテーブルが動かしてあり赤色のヨガマットらしきものが敷かれていた。俺はこんなの買っていないからいつ購入したのか疑問だが、多分真緒の自腹なのだろう。ここまでしてくれると言う事は、俺の運動不足を相当気にしているんだなと窺える。
「あ、健一さん準備できてるっすよ!」
「うん、ありがとう。じゃあ、早速始めるか」
「はいっす!ちゃんと数えてるっすからね」
そう言う真緒は俺がヨガマットの上で体育座りをすると両足を掴み動かないように固定してくれる。俺は腹筋をする為に両手をクロスさせ、胸の前に持って来て床に背中を着ける。
「健一さん無理はしなくていいっすからね」
「安心しろ。流石に10回くらいはできるから」
俺は真緒に言ってからお腹に力を入れる…
が、起き上がれない!
いや、嘘だ。あれだけ真緒に余裕そうに息巻いて1回も出来ないなんて恥ずかしすぎるだろ!!こんな少しの力じゃ足りない、全身の神経を…今この一点に!今出せる最大の力を振り絞れ!!
「ふんっ!!」
「いーち。はい、健一さん10秒以内にもう一回っすよ」
真緒は俺の苦労など気にしていないのか、はたまた気にしないようにしているのかニコニコの笑顔で回数を数え、次を催促してくる。
鬼か!?
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第71話 健一さんの頑張れ肉体改造! ゆっくり、ゆっくりでいいんすから
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新作始まりました!
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662341789174
甘々作品なので気になれば是非読んでいただければ幸いです!
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