第68話 健一さんと二人だけの花火 ぶー、私の事バカにしてるっすね
「健一さん最初は何にするっすか?」
「うーん、何が良いかな」
俺と真緒はBBQを終えると買っておいた花火をする事になった。
海でBBQをして、最後には花火…なんて夏を満喫しているんだろう。これも去年までは成し得なかったことだからすごく楽しく感じる。
こうやって好きな人と一緒に夏の思い出を体験するのは小さな頃からの夢だった。それも真緒と出来るのだ、最高以外の何物でもない。
「健一さんこれなんてどうっすか?」
そんなことを考えていると、真緒が花火詰め合わせセットの袋から2種類のススキ花火を取り出した。
「ススキ花火か、いいな」
「最初はこれかなって。健一さんはい、こっちどうぞっす」
「ありがとう」
そう言って俺に青色の袋に入った花火を渡してきて、真緒は赤色だ。今回真緒が渡してきたのは変色のしないシンプルな奴。別に不満があるわけではないが、一緒にいろんな色に変わる姿を見て見たかったと言うのが俺の気持ち。
「健一さん、火つけるっすよ」
「あ、ちょっと待って真緒。先端の紙取らないのか?」
「え?これって取るんすか?ここ火を付ける所じゃないんすか?」
そう驚く真緒はススキ花火の先端に付いている紙を導火線か何かだと勘違いしているようだ。
「その紙は燃えやすくする為に付いてるんじゃないだよ」
「え、そうなんすか!?」
「あぁ、俺も最近まで知らなかったんだけど、違うらしい。真緒はなんだと思う?」
俺は最初、ススキ花火だから穂をイメージしてオシャレとして付けているのだと思っていた。さて真緒はどんな回答を出すんだろうか。
「うーん、設計ミスっすか?」
「ぷっ…」
俺は予想外の回答につい笑ってしまう。流石にもっとあっただろうと思うが、本来の役割がわからなかったらそんな回答になるのも、分からなくは…いや、設計ミスはないだろ。
「ぶー、私の事バカにしてるっすね」
「いやいや、そんなことは…ぷっ…」
「もー健一さん笑ってないで正解教えてくださいっす!」
変にツボに入ってしまった俺に対して、少し怒ってしまったのか頬を膨らませ正解を急かしてくる。俺も流石に笑い続けるのは真緒の機嫌を損ねてしまう気がし、深呼吸をし息を整え答えてを教えて上げることに。
「えっと、そのヒラヒラは中に入っている火薬が湿気無いように付けてるんだよ。だから本来はちぎって、火薬に直接火を付けるようになるかな」
「え、じゃあこれ捨てることになるってことっすよね。やっぱりこれゴミですよ。設計ミスじゃ無いっすか」
「ぷっ、真緒それやめてくれ。きちんと考えて作られてるから」
真緒が俺を笑わせに来ているのか天然なのかは分からないが、またツボに入りかけている俺は頑張ってこらえる。
「真緒、そんなことよりもそろそろ始めないか?」
「それもそうっすね。じゃあ、このヒラヒラはちぎって…っと。つけますね」
真緒はそう言うとススキ花火の先端から紙をちぎり、蝋燭へと近づける。少し火の上で待っているとシュッーと言う大きな音を立てて光出す。
こうして俺と真緒の花火は始まりを迎えるのだった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第69話 健一さんと二人だけの花火 もう私とのキス飽きちゃったんすか?
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