第62話 健一さんと海デート! 全力で此処まで来て欲しい

 健一さんにぬるぬるの身体で抱き着き、一緒にぬるぬるになると準備万端!大切な物はホテルに置いてきているからレジャーシートに軽く荷物を置き、健一さんの手を引きいざ海へ。


 静かに波が立つ塩水に入いると熱い砂とは対照的に冷たい感触が足に触れる。


「健一さん冷たいっすね!」

「そうだな、思ったより冷たくてびっくりしてるわ」


 泳げる私は少し深いところまで行ってみようと膝下くらいの辺りまで浸かると、案外身体もすぐに慣れてきてもう速く泳ぎたくて仕方がない。


 だが、ふと隣を見るも健一さんの姿がなく後ろを振り向く。


「健一さん!何やってるっすか?」

「えっと…足攣った」


「マジで言ってるんすか…」


 少し健一さんの身体が心配になってくる。食事に関しては私が徹底的に管理してるから問題はないけど、運動だよね。


 健一さんの身体は別に弛んでるとかそう言うのでは無い。ただ単に動かなさすぎなのだ。毎日夜にあれだけ激しく突いてくるのに他の事に関しては点でダメ。


 仕事上身体を動かさないのは知っているが、健康の為にももう少し動いて欲しい。そんな細やかな思いは実家でのトレーニング以来叶っていないので悲しくなる。


 デートか夜以外いつも座っているし、昇降機式だって言う机も機能を使っているのを見たことがない。これは私が一肌脱がなくてはいけないかも!


「健一さん頑張るっすよ!全力で此処まで来て欲しいっす!」

「真緒!」


「なんすか!?」

「俺にそんな体力ない!」


 情けねぇぇ!!私と健一さんの距離は約10メートル。勾配の激しい坂を上れと言っている訳でもないにそれでもダメなのかと少し呆れてしまう。


 でも!健一さんはやればできる人…のはず!


「健一さん諦めないで欲しいっす!私にかっこいい所を見せて下さいっすよ!」

「この短い距離で!?」


「何言ってるんすか!さっき音を上げたじゃないっすか」

「うっ…わ、分かったよ」


 私の言葉が効いたのか渋々と言った感じで近づいてくる。一歩一歩地に足を付けるのを確認しては進んでいく。3メートル程進むと健一さんは一度歩みを止め、深呼吸をする。


 なんだろう違和感。体力がないだけなら歩きながらでもいいのに。もしかして…


「健一さん、もしかして水苦手っすか?」


 私がそう言うと健一さんは「いや?」と少し声を上擦らせて目を逸らす。もうこれは正解だと言っていると変わらない。


 動かない健一さんの下に歩き、抱き着く。


「もう、苦手なら先に言ってくださいっすよ。健一さんのばか」


 ほんとばか。苦手なのに私の為に無理しようとして…そう言う優しい所本当に好き。夏休みに入る前だって私の宿題を見る為に普段より早く仕事終わらせるし、進みが遅い私を叱りもしないで見守ってくれるし、私がしたいって言った事叶える為にこっそりスケジュース変更するし。


 そんな小さな優しさから私の事を思ってくれているって分かるから増々健一さんの事を好きになる。


「健一さんもう無理しないでいいっす」

「で、でも真緒は泳ぎたいんだろ?」


 私は首を横に振り健一さんの言葉を否定する。


「私は一人で楽しみたいんじゃなくて、健一さんと楽しみたいんす。だから健一さんの楽しめることしないっすか?」


 私がそう言うと健一さんは優しく抱きしめてくれて「ありがとう」と耳元で囁く。いつもならくすぐったくて身体が反応しちゃうのに、今のはとても心地よく感じた。


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ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:第63話 健一さんと海デート! 何見てるんですか…


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