夏休み到来!

第60話 健一さんと鬼のような宿題

 俺の誕生日が過ぎ、3週間が経った今日。外では蝉の声が聞こえだし蒸し蒸しとした熱気の中エアコンを付けて俺と真緒は夕食を食べていた。


「健一さん!明日から夏休みっすよ!」

「もうそんな時期なのか。真緒は何かしたい事でもあるか?海に行きたいとは言ってたけど」


「そうっすね…夏祭りも行ってみたいっすし、バーベキューもしてみたいっす!」

「分かった。じゃあ俺は仕事早めに終わらせるよ、真緒もやらなきゃいけないことあるだろ?早く終わらせろよ」


「そ、そうっすね…でも徐々にやるっすから大丈夫っすよ」


 真緒は俺から目を逸らし、そう言ってくる。そんな真緒に少し違和感を感じて質問をした。


「なぁ真緒、どんな宿題があるのか全部見せてくれない?」

「え、えっと…は、はいっす…」


 そう言って見せてもらった宿題の量を見て愕然としてしまう。数冊のテキストとその他の課題を合わせると、大体国語辞典並みの厚さになっている。


「これ終わるのか?」


 真緒のテスト勉強などを見る事もある事から彼女の問題を解く速さは把握しているが、この量のテキストを一か月ちょっとで終わらせるとなると真緒には厳しい気がしてくる。


 そのことを真緒も理解しているのか乾いた笑みを浮かべて「無理っすね」と始める前から音を上げ始めていた。


 テキストのページ数は全5教科60ページ。真緒の場合10ページで半日は使いそうだし、他の宿題もしていたら夏休み中全部使っても終わるかどうか…


 真緒は不真面目では無いが勉強が嫌いだ。


「はぁ…」


 俺は深いため息を漏らし、真緒の山積みになった宿題を見て提案をする。


「よし真緒、寝る前にテキスト15ページ終わるまでやるぞ?毎日な」


 俺のその提案を聞いて先程まで無理やり口角を上げて笑っていたのが急に真顔に変化する。


 そして真緒は宿題の量を再度確認すると涙目になり全力で顔を左右に振りながら「無理ぃぃぃ!!」と叫ぶのだった。



*****



「真緒、ここ間違えてるぞ?」

「は…はいっす」


 ご飯を食べてお風呂に入り、1時間程経った真緒はセミの抜け殻のような虚無顔でテキストに向かっている。


 そんなに嫌なのかと思ってしまうが、俺も夏休みの宿題の量にはいつも泣かされていた気がするな。


 真緒はまだ国語が得意なので、現在国語を進めているのだけども…進みが遅い。


 1時間経ったのに3ページしか進んでいないと言う。俺が目の前にいるし、サボっているわけでは無いので気合が足りないとかの問題では無い。


 これほんとに終わるのか?そう思いながら真緒の宿題をする姿を眺める。


「はぁ、健一さん5ページ終わったっすよ。ご褒美欲しいっす」

「うん、何が欲しいんだ?」


 5ページでご褒美をあげて良いのか些か不安ではあるし、内容によっては却下だな。


「セック――」

「よし、続きやろうか」


「じょ、冗談っす!キス…キスさせてくださいっす!」


 真緒は俺の肩を掴むと必死になってそう懇願して来る。正直その元気を今はテキストにぶつけて欲しい所。


「真緒、俺も鬼じゃ無い。でも冗談を言うタイミングは考えような。そうじゃ無いとご褒美無しにするぞ」

「す、すみませんっす…」


 真緒は俺に叱られ、体を縮こませ力なく返事をした。別に叱りたいわけではので少しだけ申し訳ない気持ちになって来る。


「別に怒ってるわけじゃ無いよ、毎日ノルマ終わったら好きなだけ付き合うから、今は頑張ろ?」


そう言って俺は真緒の唇にキスを落とす。すると真緒は少し表情が緩み身体を寄せて来る。


「真緒、今はテキスト終わらせないと…」

「もう少し…もう少しだけ、健一さんを感じたいっす」


「仕方ないなぁ」


 甘えて来る真緒に今だけは優しくし置いても良いかなと思った。


 それから3時間ほど時間を使い15ページを終わらせ時刻は24時を回っている。


「健一さん、健一さん!」

「あ、あぁ」


 宿題が終わるとすぐに元気になる真緒が少しだけ怖いのだけど約束してしまったのなら仕方ないよな、そんな思いを胸に今日も真緒に深いキスを落とし身体を重ねる。


 あれから2週間程経って真緒の宿題が粗方終わり、さぼらなければ順調に終わりそうだ。


 そろそろ真緒のやりたい事や行きたい場所にも目を通しておいてもいい頃合いだろう。俺は今日の分が終わり気持ちよさそうに寝ている真緒を抱きしめて目を瞑るのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:第61話 健一さんと海デート!日焼け止めを塗ってもらう


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