第56話 健一さんに独り占めして欲しい
刻一刻と近づく健一さんの誕生日。
私は健一さんが絶対に喜ぶプレゼントを用意するために準備をしていた。
涼香にも協力してもらって、内容に関しては教えてないけど出来るだけ良い物を作る事が出来そうだ。
後は、健一さんが居ない時にでも完成させよう。
あれが完成すれば、仕事で使ってくれると思うし!今から楽しみ。
「安達さん?おーい」
「え、あ、はい」
「どうしたの?手が止まってるよ?」
「ごめん、少し考え事してたっす」
「ふふ、その顔はお兄さんのこと考えてたんでしょ。仕事中だよー、惚けるのは後にしてね。分量間違えると触感変わってくるから」
「す、すまないっす」
仕事中に健一さんの事を考えていると、川峯さんに注意を受けてしまった。
今回の健一さんの誕生日は失敗しない様にしないとと思うと段々緊張してきだして作業に集中できない。
去年の誕生日はケーキを買っただけだったけど、今年は恋人になって初めての誕生日。
良い物にしたいし、健一さんの記憶に残るような。
これから先ずっと一緒に居るんだから、こういう記念日は大切にしたい。
私の誕生日はずっと欲しかった物をくれると約束してくれた。
失敗はしたく無い。
「川峯さんもっと上手くなりたいっす」
「お、安達さんやる気だね。そうかもうあと1週間だもんね。一応涼香にも連絡は入れてあるから果物は大丈夫だよ、あとは安達さんの頑張り次第かな」
「頑張るっす」
川峯さんは今回の企画を考えてくれた人で涼香とも話して3人からのプレゼント。
涼香は料理が出来ないから、不参加だけど。
今こうして教えてもらっていることを使えば、今年こそは…
*****
今日は金曜日。
バイトに行った日から真緒は平日もバイト先に行っているらしい。
前よりも帰るのが遅くなって、最近は疲れているのかお風呂に入る時もしてる時も眠たそうにしてるし。
俺の誕生日の為に色々してくれているのは知っているが、真緒の体調が心配だ。
真緒は無理をする癖があるからな。
そんな事を考えながら、仕事を進めていると玄関の扉が開く音がした。
「おかえり真緒」
「ただいまっす。健一さんただいまのして欲しいっす」
真緒は帰ってくると、手に持っていた袋を床に置きそう言ってくる。
「あぁ、うん」
いつもは部屋の中心くらいでキスを
真緒にキスをすると背中に強く手を当てられ、いつもより長くキスをして来た。
「真緒、どうしたんだ?何かあったか?」
「最近健一さんに集中できてなかったっすからね。今日、明日は健一さんに独り占めして欲しいっす」
そんなことを真緒が言うとは思っていなかった。
最近真緒が居ない時間が増えて寂しい気持ちがあったが、それを気にしてくれたのだろうか。
「ありがとう、じゃあ今日と明日は真緒を独り占めしようかな」
「はいっす、何でも言うこと聞くっすよ」
「な、なんでも…だと」
「ふふ、健一さんの好きなように私を滅茶苦茶にしてもいいんすよ?」
真緒を滅茶苦茶に…
一瞬いけない妄想をしてしまったが、冷静になって考えると真緒に変な性癖を覚えさせるのは良くない。
たまに俺の本を見せてきては「これやってみたいっす!」と大分ニッチなプレイを求められたことがあった。
この前なんて、やば目な道具を買おうとしてたりしてて危なかったし。止める事が出来たが。
SMプレイ用のガチの奴がカートに入ってた時もまじで焦った。
真緒は勝手に購入したりはせず、事前に確認をしてくれるからまだ俺たちはノーマルなプレイしかしていない。
いやする気はない。
真緒は疲れていてもやりたいと言ってくるような性欲の強い女の子だ。
今以上に性に詳しくなってしまったら、戻れなくなってきそうで怖い。
真緒は俺の知っている中では俺の薄い本以外は購入していないのだとか。
今からでも作るの辞めた方が良いのかな…
そう頭によぎるが、俺が真緒のストッパーになれば健全なお付き合いが出来るというもの。真緒に以前我慢はしないで欲しいと言ったが、これに関しては我慢してほしい。
「健一さん私をどうするっすか?」
「どうもしないよ、いつものでいい。でも今日は早く寝ようか、真緒も疲れてると思うし明日は朝からずっと一緒に居たいから」
「健一さんが良いならそれでいいっすよ。じゃあこれ冷蔵庫に入れるっすね」
そう言う真緒は靴を脱ぎ、床に置いた袋を持つと冷蔵庫の方へと歩き出した。
「真緒それ何?」
「ふふ、明日のお楽しみっすよ」
そう言う真緒は俺に微笑むと「晩御飯作るっすね」とエプロンを付け始めるのだった。
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次回:第57話 健一さんの誕生日 朝
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