第49話 健一さんとアトラクション

 1時間半の待ち時間だったが、真緒と話しているとすぐに順番が来て室内へと入室することが出来た。


 今来ているのはハウステンボス人気アトラクションのバハムートディスコという場所で、VRアトラクションなのに眼鏡が必要ないという。


 調べて公式によると、メガネのいらない世界初のVRアトラクションだとか。


 家にVRゴーグルが無いのでそう言ったゲームを体験したことがない。


 真緒も同じなのか俺と順番が近づくつれ少しそわそわした感じを醸し出していた。


「真緒楽しみだな」

「そうっすね!」


 真緒も楽しみなようだ。入室時に渡されたメタリック且つほんのり光るスティック型のコントローラー。


 コントローラーによって光る色が異なり、俺は赤色で真緒は黄色だ。


 室内は四方の壁と床の450度がスクリーンになっており、映像が映し出される。


 ダンスアレンジされた「J-POP」「アニメ」「ボーカロイド」の人気楽曲が流れ、映し出される映像と光る中fpsでよく見る画面真ん中の照準みたいな的に合わせてコントローラーを振るリズムアクションゲーム。


 普段音ゲーをしない俺でも楽しめるのだろうか、そう思いながら真緒と一緒にコントローラーを振っているとアナウンスがあり、本格的にゲームが始まるようだ。


 このゲームのストーリーとしては、眠ってしまったバハムートを音楽の力で呼び起こすというもの。


『さ、皆さん!自分のピーツキャッチャーと同じ色のターゲットの前に立ってください!』


 このコントローラー、ピーツキャッチャーって言うのか。自分の赤く光るコントローラーを見ながらそう思った。


 真緒は待ちきれないのかゲームをスタートするために、アナウンスの指示に従って既にもう立っている。


「健一さん早く!早く!」

「あぁ、今行くよ」


 真緒に呼ばれ、赤と黄色のターゲットの前にそれぞれ立つとゲームがスタートした。


 スクリーンに表示された大きなターゲットに向かってターゲットと同じ色の水の球みたいなのが飛んでくる。


 ターゲットにその球が綺麗に重なったタイミングでコントローラーを振ると反応して始める仕組みになっているようだ。


 リズムに合わせて、動くターゲットに対して歩き、楽しくゲームを進めていく。


「健一さん楽しいっすね!」

「楽しいな!」


 真緒も楽しんでいるのか声が弾んでいる。一番最初にここを選んで正解だったな。こういう受け身の体験じゃない物を一緒に出来ると、より一層一緒にしているという感じがあっていい。


『最後はー!!』


 というアナウンスが聞こえてくると赤と黄色のターゲットが混ざり合い、真緒と一緒のタイミングで振った。


「おおー、一緒に出来るのいいっすね!」

「わかる、一体感あるよな」


 先ほどので曲の間奏に入ったようだ。映像が進み、次のステージへと変わっていく。


 暫くすると曲がまた始まりだし、ターゲットに合わせてリズムよくコントローラーを振っていく。


 次の曲はテンポがやや速く、個室の中をぐるぐる回りタイミングよく振っていくのだけど結構疲れる。


 まだ開始して3分くらいだと思うけど、軽く汗が出てきている気がする。


 真緒は後ろの方で楽しそうな声が聞こえてくるので、疲れなんて感じていないのだろう。


 やべぇ年かな?まだ21なのに…自分の体力不足を改めて実感しながらも、ゲームを進めていくとそろそろ終わりそうだ。


 眠ていたバハムートは目を覚まし、『ラスト、盛り上がっていきましょう!』というアナウンスでよりテンポも早くなっていく。


 途中息を切らしながらも、最後は真緒と一緒にフィニッシュ。


 ゲームが終わり、スコアとランキングが表示されるのだが…


「は?真緒100%って何!?」

「わぁ、なんか出ちゃったっすね…」


 真緒はゲームに関して俺よりもうまい。音ゲーもうまいとは思わなかったが、このスコアを見ると苦手なゲームが無いんじゃないかと思ってしまう。


「け、健一さんだって凄いじゃないっすか。93.3%って!」

「真緒のスコアを見ると煽りにしか聞こえないよ…」


「す、すまないっす」

「いや、俺も真緒と並べるくらいにゲーム上手くなればいいだけの話だしな!今度何かゲーム一緒にしような、その時にでもコツ教えてくれ…」


「任せてくださいっす!でもまず休憩っするっすか?汗凄いっすよ」


 俺が若干落ち込んでいるのをみて下手なフォローを入れてくれて、汗を掻いているのを見つけるや休憩を提案してくれる。


「なんかもう、俺真緒が居ないとだめかもしれないわ…」

「ど、どうしたんすか急に!?嬉しいっすけど…」


 そう言う真緒は俺の手を引っ張り施設を後にすると近くのベンチへと誘導してくれた。


「いつも思ってたっすけど、何か競う系のゲームやるとテンション下がるっするよね」

「真緒が強すぎるんだよ…勝てる気がしない。俺が真緒に勝てるものあるのかなって最近探してるんだけど、無い気がしてきたわ」


「何言ってるっすか!健一さんに勝てない物私あるっすよ!」

「そんなものあるか?家事全般出来ないしさ、運動だって…」


「あるっすよ!一度だって勝った事無いっす」

「俺が一敗もして事なんてあるか…?」


「最近よくしてるじゃないっすか。忘れたんすか?修学旅行前にもしたっすよ?」


 最近よくしてる事?修学旅行前にした事って…まさか。


「真緒、その先は言っちゃいけない気がする」

「ダメなんすか?でも健一さんには自信をつけて欲しいっすよ」


「ここには子供もいるんだぞ?」

「私は気にしないっす!」


「気にしてくれ!もし、続きを言うならその口塞ぐからな」

「っ!…塞いでほしいっす!!!」


 そう言った真緒は目を瞑ると顔を近づけてきた。人目がある所でするのは少し抵抗があるが、自分から言ってしまった手前しないなんて言えないし。


 意を決して真緒の唇にそっと唇を重ねる。顔を離すと、ニコニコにしている真緒が居て羞恥心が無いのかと思ってしまう。


「真緒、人が見てる所でするのはやっぱり恥ずかしいんだけど…」

「健一さんから言ったんすからね?口を塞ぐって…でも、まだ言うかもしれないっすよ?塞がなくていいんすか?」


「はぁ、やっぱ真緒には敵わないわ」


 そう言って再び目を瞑る真緒にキスをすると、首に手を回してくる。これ止まらない奴ですわ…


 それから真緒が満足するまで身体を寄せ合い、キスをしているとポケットの入ったスマホが振動した。


「真緒ちょっとごめん」

「むぅ、今は私に集中してほしいっすね」


「ごめんごめん、でもちょっと確認するだけだから」

「あ、わかりました!焦らしプレイって奴っすね」


「真緒、そう言う言葉は外では言わないで欲しいかな」


 はぁ、真緒は変に知識を付けてきているせいで最近、発言と行動が女子高生じゃないんだよな。


 まぁそんなことは今は置いといて、急な仕事の依頼だったりすると対応しないとだし…そう思いながらスマホを確認すると妹からのメッセージだった。


『お兄ちゃんのスケベ』


「何のことだよ…」

「健一さんどうしたんすか?」


「い、いやなんでもない」

「なんでもないなら続きするっすか?」


「真緒…今度にしような。そろそろ次行かないか?アトラクションまだ行くんだろ」

「それもそうっすね。じゃあ、夜までのお預けって事っすね…」


「あ、うん。人目が無ければ夜じゃなくてもいいけどな」


 流石に夜まで我慢させてると、襲われそうなので適度に発散させないと。そう思いながら、立ち上がり次の施設まで行きお昼の時間まで一緒にアトラクションを楽しむのだった。



*****



「ねぇ、涼香ーあれお兄さんじゃない?」

「え?どこ?」


「あそこで、安達さんと抱き合いながらキスしてるの」

「あ、真緒ちゃん羨ま…じゃなくて、ちゅ、注意しないと。人が一杯居る場所であんな濃厚なのは駄目だよ!」


「あはは、涼香もお兄さんの事好きなんだね」

「当り前だよ!物心付いた頃からお兄ちゃんの事が大好きで、まだお兄ちゃんの為にファーストキスだってしてないんだよ!?当然、真緒ちゃんと違ってしょ、処女だし…それに!」


「あはは…」


 涼香も安達さんに負けないくらいお兄さんの事話すよね。どこがそんなにいいんだろ?


 そう思いながら、涼香の話を聞き流すのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回:第50話 健一さんとお昼


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