第48話 健一さんと待ち時間
俺と真緒はフラワーロードから抜けすぐにあるアトラクションタウンに来ていた。
体験型の施設が多くあり、残りの午前中はここでいろんな物を体験したのちご飯も近くで食べる予定だ。
「健一さん最初はどこがいいっすかね。最近リニューアルしたやつ行くっすか?」
「そうだな、混み具合にもよると思うけど多少は並ぶよな。となれば最初に一番混む奴を攻めてから後でお昼に余裕を持って行けるようにあまり混んで無さそうな所を選ぶか」
「そうっすね…って事は、バハムートディスコっすかね。結構な人並んでるっすよ」
「みたいだな、ハウステンボス人気アトラクションだしな。でも、何気にハウステンボスのアトラクション初めてだから楽しみなんだよな」
「私もっすよ!でも一番は健一さんと一緒に体験できることっすけどね」
「俺も真緒と色んな事を体験してみたいから、その気持ちわかるな」
これから行くアトラクションを決めたところで施設がある場所まで歩き、長蛇の列に並ぶ。
1時間待ちくらいだが、真緒と一緒なら退屈と感じることは無いだろう。今のうちにお昼をどうするか決めておくのもいいかもしれない。
「真緒、お昼どうする?この近くで食べるのは決まってたけど、何食べたいとかは言ってなかったし」
「そうっすね…ちょっと調べるっすね」
そう言った真緒はスマホでこのあたりのお店を検索し始め、うーんと難しい顔をしながら唸っている。
「どこ行くか迷ってるのか?」
「バーガーもいいっすけど、バーベキューもいいっすよね…あ、チーズフォンデュもいいなぁ」
真緒はお昼をどうしようか熟考しているようだ。スマホを一生懸命凝視している姿は勉強を教えている時よりも真剣で、真緒らしいなと思ってしまう。
「うーん決まらないっす。健一さんどれがいいとかないっすか?」
「そうだな、夜まで時間あるだろうしガッツリ食べるのもありかもしれないから、軽食っていうよりもレストランとかで食べた方が良いと思うな。真緒は肉と魚介系ならどっちがいい?」
「断然に肉っすね!」
「わかるわー!ガッツリ行くなら肉だよな」
「そうっすよね…となるとハンバークステーキでペーパランチか、BBQテラス コリーダ…は高いし…」
「真緒もしかして今日も割り勘なのか?奢るくらいならしてもいいけど」
「ダメっす!特別な日とかじゃないと奢るのは無しっす!そうじゃないと一緒に楽しんだって感じがしないっすから」
「そういうものかな?」
「私の気持ちの問題っすね。私は健一さんと対等でありたいっすから」
「対等ね、そう言われるとそうだな。これからは誕生日とかじゃないと気軽に奢るなんて言わないようにするな」
「ふふ、そうして貰えると嬉しいっす。健一さんはすぐ奢りたがるっすからね、私が家計を管理した方が良いっすか?」
「無駄遣いはしてないから良いと思うけど、不安になるなら共有の口座とか作るのもいいかもな」
「それもいいっすね、私たちが結婚したらそう言うもの考えないといけないっすね」
「まぁ、それは籍入れた後でも出来るから今はお昼を考えようよ」
「はっ、そうでした。何がいいっすかね…」
真緒とお昼はどこにしようかと話して、値段も高過ぎず普段あまり食べない物という事でチーズ系のお店を選ぶことにした。
店が決まった後にハンバーガーもよかったっすよねと言っていて、真緒はファーストフードなどはあまり食べないイメージだったのだが、どうやら違うらしい。
「涼香と遠出したときとかは結構な頻度で食べてたっすよ?涼香は料理が出来ないらしいのでお勧めのお店やらメニューを教えてくれたっすね」
「あー妹はゲテモノ作るからな、昔バレンタインでめちゃくちゃまずいもの出されたから、あれは良い思い出だよ」
「壊滅的っすね…初心者は市販のチョコ溶かして固めるだけなのに、どこの工程間違えたらまずくなるんすか…」
「さぁ?他にもあるけどな、カレーとか凄かったな」
「カレーっすか!?誰が作っても美味しくなるあのカレーっすか?」
「あぁ、妹は料理できないのにアレンジしまくるからな。カレールー使ってたはずなのにカレーの味しなかったんだよな…今でも不思議だよ」
「何入れたらあの強いカレールーに勝てるんすか…想像できないっすね」
「はは、ほんとだよ。だから真緒の美味しい料理を食べられる今が凄く幸せなんだよな。改めて実感するよ」
「変な
「変な物って…真緒も涼香に対して大分酷い言いようだよな」
「いつもの事っすよ?涼香はMっけあるっすからね暴力以外なら大抵喜ぶっすよ」
「それはお兄ちゃんとして心配になるわ…」
あいつ変な仕事に就いたりしないだろうな?少しだけ妹の将来が心配になるけど、勉強も運動も率なくこなすらしいから職探しに関して変な道に行かなければ問題ないと思う。
だが、多少は相談に乗るくらいはした方が良いかもな。
「そう言えば妹ってどういう仕事がしたいとか真緒聞いてる?」
「うーん、色々言ってたっすね。服が好きだからアパレル系、食べるのが好きだから宣伝して…とかって言ってた気がするっすね。まぁ涼香の場合SNSで有名なインフルエンサーなんで大抵の仕事は引っ張りだこなんじゃないっすか?今でも健一さんのサポートしてるっすし」
「え?最後今なんて言った?俺のサポート?」
「あれ涼香、健一に言ってないんすか?健一さんの絵の仕事が増えたの涼香のおかげっすよ?」
嘘だろ…?俺の仕事が増えだしたのって、たしか高校卒業してちょっとしてからだよな。もしかしてその時から俺の事を宣伝してくれていたインフルエンサーって妹だったのか?
やべぇ、もし本当なら妹に足向けて寝られないんだけど。最初の頃収入が乏しくて、親に心配されて戻ってくるか?って言われた時だったから運が良かったと思っていたが、妹に助けられていたのか…
今度、頭下げないとな。
「あっ、そろそろ入れそうっすよ。健一さん行きましょ!」
「あ、あぁ」
一気に情報が頭に入ってきたせいで処理が追い付いていない気がするが、順番が来て真緒に腕を引っ張られるようにして中へと入っていくのだった。
妹の事を考えるのは後だ後、今は真緒との時間を存分に楽しむことにしよう。
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次回:第49話 健一さんとアトラクション
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