第47話 健一さんと花の道②
俺と真緒は二つ目の目的地としてフラワーロードを歩き撮影をしていたのだが、真緒の要望でキス自撮りをしようという事になり撮っていたら先生に見つかってしまった。
『ちょっと来てもらえる?』
と美人教師に言われ逆らうのは得策ではないと判断し素直についていくことに。そして、少し歩いたところにある花畑のカフェという場所に来ていた。
ここはフラワーロードの中にあるカフェで外に座るベンチなどが配置されており、綺麗な花を近くで楽しみながらお茶の出来るスペースとなっている。
現在美人教師と真緒と共に机を並べて座り、買った飲み物を飲むがまだ何も話していない。沈黙がこれほどまでに怖いものだったなんて思いもしなかった。
真緒は俺の隣に座り、不安なのか机の下で先生には見えないように俺と手を繋いでいる。僅かに震えるその柔らかい手を安心される意味を込めて握り返すと、先生が話し始めた。
「えーっと、安達さんのクラスを担当をしている
そう言った渡部さんは深く頭を下げた後、顔を上げ背筋をピンと伸ばして続ける。
「本題に入らせていただく前にお名前を窺ってもよろしいでしょうか?」
「は、羽島です」
「ありがとうございます。単刀直入にお聞きしますが、羽島さんは安達さんと交際をされていると言う事で間違いないでしょうか?」
「はい」
「そうですか、ではもう一つ。真剣なお付き合いをされているという認識で大丈夫でしょうか?」
真剣なお付き合い?なぜそんなことを聞いてくるのだろうか。てっきり怒られたりするのだと思っていたのだけど…
「はい、それはもちろん。真緒のご両親とも一度挨拶をしていますので」
「ふぅ、それは良かったです」
俺の言葉に胸をなでおろし、先ほどまでの厳しそうな雰囲気は消え去り笑顔で話し始める。
「すみませんね、大切なデートのお邪魔をしてしまって。最近の女子高生は何かと事件に巻き込まれることがありますから心配で…。でもご両親ともご挨拶をされているのであれば安達さんの担任として安心しました」
「は、はぁ」
「安達さんとは去年からクラス担当をさせていただいておりますので、性格も知っています。ですので、交際されている方が変な方であれば直接対峙しようと考えておりました。先週から学校内で安達さんの噂を色々耳したこともあって、不安があったのですがもうその心配はいりませんね。安達さんこの修学旅行楽しんでね」
「は、はいっす…」
「あ、あの…少し気になったのですが、注意とかは受けないんでしょうか?」
「ん?あー、それに関しては問題ありません。教師陣に私からご連絡しますので。でも彼氏さんを連れて来るなら一度報告はして欲しかったところではありますね。そこに関しては怒っています。ですが、去年まで感染症の影響で修学旅行が中止になっていた事もあり、高校最後の大きなイベントとして思い出には残ってほしい…いい高校生活を送ってもらいたいという思いではありますので、今回の事に関しては注意などはありません」
「そうでしたか、そう言う事でしたら事前にご連絡するのが良かったですよね。でも、無断で高校の修学旅行に同行したことは事実ですので、そこに関して謝罪させてください。すみませんでした」
一応の謝罪をしてこういうことは事前に報告するべきだなと改めて反省だ。今回は先生たちの配慮で良くなったとしても、他の生徒からしてみれば不安の種になりかねない。自分のしてしまった事に対して深く反省し、先生との話し合いは終わった。
「ごめんね三十分も時間を取らせてしまって、あっ忘れてた。さっきの写真なんだけど安達さんいる?」
そう言って渡辺さんは俺たちがキスしている写真を真緒に見せた。それを見た真緒は綺麗に撮れていたのか大きく目を見開いて嬉しそうに頷き、真緒は先生から写真を貰うのだった。
*****
「健一さん怖かったっすけど、大丈夫だったっすね」
「そうだな、普通の学校なら問題になっててもおかしくないけどな。まぁ、これで真緒と気兼ねなくデートができるしいいんじゃないか?」
「そうっすね!あ、ソフトクリーム食べて行かないっすか?」
「いいな、真緒はどれにする?」
「私はチーズソフトにするっす、健一さんは?」
「俺は抹茶ソフトかな。じゃあ買ってくるわ」
渡辺さんは真緒に写真を渡すと、「まだ見回りしないといけないからこのあたりでお暇するわね」と一人席から立ちあがり行ってしまった。
取り残された俺と真緒は少し残った飲み物を飲んでいると、真緒はメニューで気になったものがあったのかソフトクリームを食べたいと言ってくる。
いつもの如く真緒は席から離れようとしないので俺が買いに行く。
買って戻ると真緒はお金を用意していて、毎度のことだが準備が早いなと思ってしまう。チーズソフトクリームを真緒に渡すと嬉しそうに感謝をしたのち食べだした。
「おぉ濃厚っすね。チーズの香りのするアイスクリーム初めて食べたっすよ」
「美味しいか?」
「美味しいっす!どうぞっす」
「貰うな…美味しいな。俺もそっちにすればよかったかな」
「半分個すれば良いっすよ」
といつもしているシェアをし食べ終わった。
まだ時間には余裕があるから、急がずにゆっくりと真緒と腕を組み次の目的地へと向かうのだった。
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次回:第48話 健一さんと待ち時間
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