第45話 健一さんに夜のお誘い
「可愛い!!健一さんモグモグしてるっすよ!」
「ほんとだ、動画とかでたまにモルモット見るけど触れられる距離でっていうのは新鮮でいいな」
「モフモフっすね…はぁ可愛い…」
真緒はご飯を食べてるモルモット数匹を見た後、寄り添ってきた一匹を撫でその可愛さに顔が蕩けてしまっている。
妹と川峯さんと別れ、真緒の宿泊していたホテルから一番近いアドベンチャーパークまで腕を組んで歩き、昨晩真緒の行ってみたいと言っていたふれあい動物コーナーに来ていた。
ここにはモルモットから兎、ハムスターといった哺乳類などに触れ合える場所になっている。一応一周してみて、亀にも餌やり出来るみたいだけど真緒は「モフモフがいいっす!」ということでモルモットと戯れている最中だ。
「健一さん、見てくださいっす!私が撫でると眼を細めて気持ちよさそうにしてるっすよ。めちゃくちゃ可愛いっす…」
「いいなぁ、俺の所には来てくれないから見てるだけしか出来ないよ」
「健一さんは私を触っててくださいっす」
「それいつもと変わらなくないか?」
「……ただ触ってほしいだけっす」
「あ、あぁそういことね。じゃあ遠慮なく」
「えへへ…手にモフモフを感じながら健一さんに頭を撫でられるの幸せっすね…」
真緒はモフモフを堪能しているのに、俺にも撫でられたいなんて欲張りだな。顔をだらしなく歪める真緒の表情を見ているとほんとに幸せそうなのが伝わってくる。そんな真緒を見ていると自然に口許が緩んでしまうな。
真緒も楽しんで、ある意味俺も楽しめているので此処に来てよかったなと実感している。
真緒がモルモットの子供を撫でる姿は、なぜか母性を感じさせる優しい目をしていた。もし真緒がママになってもいいお母さんになれそうだ。
「子供可愛いっすね…私も欲しいなぁ」
こ、子供が欲しい!?そ、それはまだ俺達には早いんじゃないのか。真緒はまだ学生だし、俺だって今は稼げているけど将来どうなっているか分からないからな。
「真緒、それは難しいんじゃないか?」
「そうなんすか?」
「あぁ、今の部屋じゃ狭いだろうし。お金だって掛かるだろうからな」
「それもそうっすよね…」
「あ、あぁ。因みにどれくらい欲しいんだ?」
「それはもう沢山っすね!五…くらいっすかね」
「五!?そんなに沢山!?多すぎないか?いや真緒が欲しいなら数は良いとして……時期はどうするかだよな」
「今からは難しいんすかね…」
「い、今から!?早くない?真緒まだ学生だし、子供作るのは準備も必要だしさ。名前とかも、部屋の数とかも足りないだろうし…学費だって考えないと…」
子供を作るなら色々考慮しないといけないことを挙げていくと、一度頭を傾けた後真緒は撫でる手を止めて俺の顔を覗き込むように質問してくる。
「健一さん何の話してるっすか?」
「え?俺たちの子供を今から作るって話だろ?」
「……さっきのペットの話っすよ?」
「………」
俺が盛大な勘違いをしていることに気づいた時には遅く、真緒はニヤニヤしながら口を開く。
「健一さんはそんなに私との子供が欲しいんすね?でも、私はまだまだ先でいいと思うっすけどね…子供出来ちゃうと健一さんと二人だけの時間が減っちゃうじゃないすか。寧ろ作らなくてもって感じっすよ」
そう言う真緒は真剣な顔で俺の手を握り続ける。
「私は健一さん一人を愛したいっす。重いと感じられるかもっすけど、私は健一さんと一生添い遂げたいと思ってるっすよ」
その意見には大いに共感できる。俺はそこまで器用じゃないから、人生で一人くらいしか幸せにできないと思う。それを俺は真緒にしたいと考えているからだ。
「俺も真緒だけを愛したい。子供は愛の結晶って言われるけど、真緒が欲しいと思わないなら俺もいいと思う。これからも二人だけで生きていけたらいいな」
「二人だけ…それは難しいかもっすけど、健一さんの傍を離れる気はないっすから」
二人だけは難しい、その言葉に少しだけ疑問はあるが真緒は話を戻したいのか「よし!その話はもう終わりっす」というとペットの話しに戻った。
「健一さんあのアパートってペットって大丈夫なんすか?」
「え?あ、どうだろ、防音対策はしてあるから音に関しては大丈夫だけど、匂いの問題とかあるよね。まぁ何か飼いたいならその時にでもまた言って?一応アパートの管理してる身としては他の住人に迷惑が掛からないように事前に聞いてみたりするしさ」
「そ、そうっすよね。他の住人も居るんすもんね…もし飼うなら色々考えないと…」
俺としては即OK出したい所だけど、そこに関しては他の人の意見を聞いたりしないといけないのがペットの難しい所だよな。
俺の管理してるアパートはペット要相談にして、これまで十人くらいの人が入居してくれたけど、まだ一度もペット飼ってもいいか相談を受けたことがない。真緒が飼いたいなら本格的に考えるのもありだな。
「真緒はもし飼うなら何がいいとかある?」
「うーん、難しい質問すっね…私、旅館三階に自分の部屋にあるんで人生で一度もペット飼ったことないすよね」
そう言えば同棲する前、荷造りするために真緒の部屋へお邪魔したことがあった。その時に旅館の三階の一番奥に瑠々華ちゃんと隣り合わせで真緒の部屋があり、中は何とも女の子らしいお部屋だったことを思い出す。
真緒の部屋は小さなぬいぐるみ数体と可愛い家具と大量の本…全体的に白とピンクを基調にしていてあまり居心地のいいものではなかったな。部屋に入ると真緒の匂いがして別に変なことをしているわけでもないのに妙にドキドキしてしまった覚えがある。
まぁ今はそんなことは置いといて、お客さんが宿泊する上の階でペットは飼えないよな。真緒の場合手に乗るサイズの小動物って言ってたし外に連れて行く感じでもないだろうし。
うーん、したことが無いのなら叶えてあげたい気持ちが強い。今度親に一度相談してみようか…
「健一さん?聞いてるっすか?」
「ん?あ、ごめんぼーっとしてた」
「もぅ、自分から聞いたんすからね?ちゃんと聞いててくださいっす」
「ほんとごめん、でなんだっけ?」
「私が何飼いたいかって話しっすよ」
「あーそうだった。真緒はペット初めてだからハムスターとかか?」
「ハムちゃんもいいっすけど、私はハリネズミっすね。ご飯をちまちま食べる時の鼻のぴくぴくが好きっすね。動画で見てて一度飼ってみたいって思ったっす」
「ハリネズミなんだちょっと意外。もっとモフモフしてる子をイメージしてたからさ、チンチラとかさ」
「そうだったんすね、でもハリネズミってぷくっと膨れた感じとか良くないすか?」
「あぁ、そう言われると可愛いかもな。あまり詳しくないから何とも言えないけど今日動画見てみるよ」
「あ、それなら一緒に見ないっすか?寝る前とかに部屋に来てもらえれば」
「え、いいの?普通は行っちゃいけないとかあると思うけど…」
「先生には内緒っすよ!今だってほんとは健一さんと居るのダメなんすよ?」
「え、そうなの!?」
「そうっすよ?だから一度や二度変わんないっすよ。健一さん、夜来るっすか?」
そう言った真緒は俺の手を両手で握ると上目ずかいで誘ってくる。正直ダメなのは分かっているけど、行きたい気持ちが強くあるのも事実。
どうしたものか。そう考えていると真緒は耳元に顔を近づけてきて、囁いてくる。
「来てくれたら、一緒に眠れるっすよ?私は健一さんが傍に居た方が安心するっすけど…健一さんは違うっすか?」
うっ、そんなことを言われてしまったら、拒否できないじゃないか…
俺は行く旨を伝えるために頷くと、真緒はぱあっと嬉しそうにし唇を重ねて来る。急なことに驚いたが、真緒も昨日一日出来なかったのだから我慢出来なかったのかな?そう思い込むことにして、今日の夜は真緒達の部屋にお邪魔することになった。
ほんとは駄目だからな!?見つかったら完全にアウトだけど、真緒と一緒に眠りたいという欲求には抗うことが出来そうにない…
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次回:第46話 健一さんと花の道
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