第44話 健一さんと待ち合わせ場所で

 始めはなかなか寝付けなかったが、自分が思った以上疲れていたみたいでいつの間にか眠っていた。


 目が覚めスマホで時間を確認すると、時刻は朝の7時前。真緒との待ち合わせ時間は8時なので支度を済ませても少しだけ時間がある。


 部屋についているシャワーで軽く洗い、髪のセットをし朝食を食べに行く。ホテルのご飯も美味しいが、やはりどれも真緒のご飯には敵わない。少しの間真緒の手料理が食べられないことが苦痛かもしれないと感じ始めた。


 まだ一日しか経っていないというのに、あと二日耐えられるかな。そう思いながらモーニングに手を付け、部屋に戻り歯磨きをしていると真緒からメッセージが来た。


 内容としては『少し早く来て欲しいっす』というものだ。俺としても真緒に早く会いたいという気持ちで準備をしていたので着替えれば出発可能。


 改めて身だしなみを整え、待ち合わせよりも15分早くホテル前に着き真緒に着いたことを報告すると1分もしないで真緒がこちらに走ってくる姿が見えた。


「健一さん、おはようございますっす!」

「おぉ、おはよう真緒。朝から元気がいいな」


 挨拶そうそう真緒は俺に抱き着いてきた。もう慣れたもので腰に手を添えると真緒は目を瞑り顔を近づけて来た。俺も顔を近づけその柔らかい唇にそっと唇を重ねる。朝の恒例行事になっているこのキスだが、やはり外となると周りが気になるな。


「やっぱりこれがないと朝って感じしないっすね。健一さんといつもしてるからつい癖で涼香にキスしそうになって大変だったっすよ。昨日の夜もなかなか寝付けなかったすし」

「あはは、妹も大変だな。まぁ真緒の言ってるのも分からなくはないよ、俺も昨日はなかなか寝付けなくてな」


「健一さんもっすか!なんか私、健一さんとじゃないと寝た気がしないっす、今日は健一さんと眠りたいっす」

「できれば俺も真緒と寝たいけどな、我慢だな」


「そうっすね…」


 真緒は不満そうにそう言うと、「そろそろ集合の時間なので一旦行ってくるっすね!」とぱあっと表情を変え奥の方へ駆け出して行った。


 今から一緒に回るが相当楽しみなんだろうな、と思いながら真緒の背中を見送りこれから行くルートの確認をしていく。昨日の寝る前の電話で行きたい場所の目星は着いたが最短ルートなどを見ていなかった。


 地図を確認していると、真緒の駆けていった方向から聞きなれた声と知らない声が聞こえてくる。


「あ!お兄ちゃんいた!」

「おっ!あれが安達さんの彼氏さんか…なんか普通」


「お兄ちゃんの顔はパッとしないよね」

「川峯さん、健一さんは中身がいいんすよ!…見た目は…うん、普通っすね」


「散々な言われようだな俺」


 と見慣れない金髪たれ目の…胸デカいな!?制服でもわかる胸の大きな妹の友達かな?に初対面なのに大分失礼な事を言われてしまう。真緒もそれに乗るのはどうかと思うけど…ん?


「真緒、その子は友達?」

「あ、はじめまして!安達さんのお友達になりました。川峯 明日香って言います」


「う、うん。よろしくね」


 ずいぶん明るい女の子って感じ。初対面の人にも気兼ねなく話せるのはすごいな。それにしても真緒は元気な子の方が話やすいのかな、俺の妹も瑠々華ちゃんもそうだし。


 まぁ何にせよ真緒に妹以外の友達が出来たのは嬉しい事だな…少し涙出て来るわ。


「そろそろ、健一さん行かないっすか?」


 と真緒の成長に涙腺を緩ませているとデートの催促が来てしまった。案外ボーっとしていたのかもしれない。


「んじゃ、お兄ちゃん真緒ちゃんをよろしくねー!!くれぐれも真緒ちゃんに淫らな行為しちゃいけないからね!?」

「え?あーうんわかった…」


 妹に何の注意か分からないが警告され、なぜか真緒は俺から顔を逸らしている。よく分からない状況に困惑していると、「い、行くっすよ!」と真緒に強く腕を引っ張られ最初の目的地へと向かいだす。


 急ぎ足な真緒を見ていると、相当動物と触れあえるのが楽しみなのかなと微笑ましく思えて来る。いつか真緒とならペットと一緒に暮らすのもありかもしれない、そんな事を考えながら真緒と腕を組み歩みを進めるのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回:第45話 健一さんに夜のお誘い


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