大好きな人と修学旅行
第42話 健一さんの為に挑戦してみたい
先週、真緒に二泊三日の修学旅行についてきて欲しいと言われ高校の三年生に修学旅行ってあったか?と質問すると去年まで感染症のせいで行けなかったんすよと言う事で三年生のこの時期に実施されることになったのだとか。
今は仕事も結構溜まってきていて、真緒の看病に時間を費やしていたからあまり進んでいないから最初は断ったんだけど…
『健一さんは私と数日離れ離れで寂しくないっすか?私は寂しいっす』
なんて事を甘い声で寝るまで言ってきたのだから、やむを得ないと思い同行することに。
真緒の甘え方は俺に拒否権を与えないようにしてくるからずるい。まぁ、俺も嫌じゃないのでいいのだけど。
そんな事より今だ今。
『健一さん!外見てください!海っすよ海!夏にでも二人で行きたいっすね』
『綺麗だな、海は真緒が夏休みの時にでも行くか』
『そうっすね、家の近くには海ないっすから一晩くらい泊まって朝から満喫したいっす!健一さんは海行ったら何したいっすか?』
『俺は海の家の中で焼きそば食べながらスケッチでもしたいな。水着のお姉さんを見れる機会なんてそうそうないしな』
『健一さんは根っからの変態っすね。彼女と海に行くのに他の人の水着で致すなんてどうかしてるっす』
『仕事で活かしはするが、致したりはしないわ。俺を勝手に犯罪者にしないでくれ。逆に聞くが真緒は何するんだよ』
『私は潮干狩りか釣りっすね』
『真緒はなに、食材調達しに行くの?』
真緒は学校指定の席に座る事になっている為俺の下へは来れない。という事で新幹線の中でメッセージアプリを使いやりとりをしてるのだけど、真緒からのメッセージが一向に途絶える事が無い。
『なぁ真緒、友達と話さなくていいのか?』
『友達?涼香の事っすか、今は他の子と話してるっすよ。なので私は一人で外眺めてるっす』
『真緒はもう少し友達増やした方が良いと思うぞ?難しい事は理解しているが…俺も仕事しないと急に予定入れたから納期やばいんだわ』
『健一さんは私を一人にするんすか!?酷いっす!!』
『すまんな、真緒との時間を作るためにちょっと頑張るから明日まで辛抱してて』
そう真緒に送り、俺は急がないといけない仕事に手を付けるのだった。
*****
「ぶー健一さんが構ってくれないっす」
窓の外を見ながら独りごちる。
まぁ急に修学旅行についてきて欲しいなんて言ったのは私なのだから、無茶な申し出だったことくらい理解している。
健一さんが会社勤めで出勤しないといけないならそもそも付いてきてくれなかっただろうし、少しくらいは寂しいけど我慢するしかないかな。明日の朝からの自由時間は健一さんと一緒に居られる予定だし。
「ねぇ安達さん、お菓子食べる?」
そう言って対面に座る女の子が話しかけてきた。私に綺麗にラッピングされたお菓子の袋を開け、差し出してくるのは同じ班になった
隣に座る涼香は別の人と話してるし、迷惑掛けられないよね。ここは頑張るしか。
「え、っと。はい…」
小さくお礼として頭を下げ、お菓子の袋に手を入れる。中に入っていたのはクッキーでひし形の物やハート型のものあって凄く可愛い。
一口で食べられるサイズで味は、
「おいしい…」
実に美味だ。サクサクの触感かなと思ったがもちふわと柔らかく、しっとりとした口触りでもう一つ食べたくなる。
「ほんと?嬉しい…これ手作りなんだー」
「え、手作りなんすか?」
「そそ、家がお菓子とパン屋やっててね。両親がパンで、私とお姉ちゃんがお菓子を作って出してるんだ。それで、朝の時間に今日持ってこようと思って作ってきたんだんけど安達さんのお口に合ってうれしいな」
「へぇ、パン屋っすか…」
健一さんに美味しいパン作ってあげたいかも…
「ん?どうかした?」
「えっと、それって身内だけで経営してるんすか?」
「お?もしかして家で働いてくれるの!?うれしいなぁ!人手足りなくてさ、あっ安達さん人と話すの苦手だよね…接客は私がするから中してもらおうかな…。安達さん調理実習の時めちゃくちゃ美味しかったし…もしかして新作のお菓子を…」
と私の手を両手で掴むとなぜか私が働く前提で話が進んでいる。途中から自分の世界に入っているようだけど、それだけお菓子作りが好きなのだろうか。
「よし決めた!修学旅行終わったら一度うちに来て!見学していってよ。その時にまたお菓子とか用意するし、あっもしかしてパンの方に興味がある?ならお母さんに連絡とるけどどうしようかな?」
「あ、えっと…」
「明日香ちゃん、真緒ちゃん困ってるよ?」
「あ、ごめんごめん。つい熱くなっちゃって…」
そう言って握っていた手を放してくれた。少し強く握られていた事を考えると、ほんとにお菓子作りに力を入れてるのがわかる。
私も健一さんのご飯を作るときに熱が入ることがあるし、気持ちわかるかも。
「えっと涼香…」
「ん?どうしたの真緒ちゃん」
「挑戦してみたいっす。お菓子とパン作り」
「え、もしかしてお兄ちゃんの為?」
「うん、頑張ってみたいっす。美味しいって言ってもらいたいっす」
「ふふ、いいんじゃない?明日香ちゃん、真緒ちゃんやりたいって」
「ほんと!?嬉しい!!安達さんよろしくね!」
「は、はいっす…」
少しだけ頑張ろうそう思った私。接客は出来なくても、美味しいお菓子やパンを作りたい!健一さんの為に。
「あ、ちょっと気になったんだけど。安達さんって涼香のお兄さんと付き合ってるの?」
「そ、そうっすね」
「へぇー、涼香のお兄さんって何歳だっけ?若いの?」
「えっと21歳かな…もう少しで誕生日だけど。あ、真緒ちゃん何か用意してる?」
「してるっす!喜んでもらえるように色々と…晩御飯をちょっと豪華にしたり、ケーキ作ってあげたり…あとプレゼントとかっすよね!」
「ほへぇ、安達さんって意外と喋るんだね。教室だと無口なイメージあったかも」
「真緒ちゃんお兄ちゃんの事になるとめちゃくちゃ喋るからね。ちょっと異常なくらいに…お兄ちゃんが羨ましいよ。真緒ちゃんたまにそっけないから」
「あはは、それだけ安達さんは涼香のお兄さんが好きなんだね。具体的にどこが好きなの?」
「それはっすね。普段優しいんすけど夜は結構積極的な所とか、たまに私が無理をしてるとちゃんと怒ってくれたり、私のご飯を美味しそうに食べてくれたり、この前私が熱を出したときは一日付きっ切りで看病してくれたり、眠れないときは優しく抱きしめてくれたりとかっすかね。もっとあるっすけど…」
「もう十分かな、安達さんがどれだけ涼香のお兄さんが好きかは伝わったから。涼香は今の聞いてどう思った?…ん?涼香?聞いてる?」
対面に座る川峯さんの質問に対して涼香はなぜか無反応。どうしたのかと涼香を見ると、固まって私の方をじっと見ている。
「どうしたっすか、涼香?」
「ま、真緒ちゃん…もしかしてもう初めてしちゃったの、お兄ちゃんと」
「え?あっ」
涼香の前では失言だったかもしれない。涼香も健一さんの事が好きなのだ兄弟だからと言ってそんな生々しい話は聞きたくないよね。
「真緒ちゃん早いよ!結婚するまでなんで待てないの!?お兄ちゃんも男だし迫られたのかもしれないけど、まだ真緒ちゃん未成年だよ!?自分の身体は大切にしないと!」
「えっと…」
初めては自分から襲ったなんて言えない…そして昨日もしたなんてもっと言えない。
そんな涼香にお叱りを受けたり、友達?との初めての恋バナを楽しんだり、川峯さんのご実家にはいつ行こうかという話しをして新幹線での長旅を満喫するのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次回:第43話 健一さんの温もりを感じたい
応援、☆☆☆レビューよろしくお願いします!励みになります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます