第41話 健一さんに付いて来て欲しい

 案の定、朝の事が学校の噂になっていた。私はクラスメイトに急に話しかけられるのに慣れていないからいつも、間に涼香が入って話を円滑に進めてくれる。


「いつもごめんね、凄く助かってるっす」

「いいよ、真緒ちゃんに変な虫が付かないようにするのも私の役目みたいな所あるしね。あ、そうだ来週の班一緒に組まない?」


「班?何のことっすか?」

「あれ、朝の先生の話聞いてなかったの真緒ちゃん…」


「健一さんと放課後にお買い物デートするから、その事考えてたから聞いてなかったっす」

「はぁ、真緒ちゃんお兄ちゃんの事好き過ぎでしょ…まぁ好きになるのは分かるけどね私も好きだし。でも、日常生活に支障が出ない程度にしないとね。この前のテストだって半分惚けてたとかで記入してなかったじゃん」


「えへへ、つい『ここ教えて貰った所だ』って思うと健一さんの顔が浮かんでて…いつの間にかチャイムなってたっす」

「もう重症ね…まぁテストの事は今は置いといて、班決定でいいよね?」


「あー、うん。よく分かんないっすけど涼香が居ないと私ダメだしお願いしたいっす」

「おけー、じゃあお兄ちゃんにちゃんと言っときなよ数日会えなくなるんだから」


「数日…会えなくなる?涼香どう言う事っすか!」



*****



「授業ってこの時間に終わるよな」


 真緒を朝学校の校門で見送った後、家に帰って仕事。まぁいつも通りと言ったところで今はいつもじゃない真緒の迎えに朝も着た校門に来ている。


「やっぱり何人かは俺の事を見てるよな…」


 高校の校門前に二十代前半の男が居たら、普通に不審者だと思われてもおかしくないだろうし、それに多分この視線の多さは朝の真緒がした奇行のせいかな。


 家では日常になってるが、外となるとやはり違う。俺と真緒みたいに朝から濃厚なキスをする習慣が出来ているのが一般的ではないのは自覚している。


 そもそも朝の挨拶としてキスをするのは良いとして、舌を入れて来るのは聊かやり過ぎだと思うのだけれど、今のJkには普通なのだろうか?多分そうなのだろう。


 そう思い込むことにして待っていると、後ろから男の声が聞こえてきた…誰だろと振り向くとそこには知らない男子高生。結構なイケメンだ…身長も俺より高いし、運動部にでも所属しているのかガタイがいい。


 そんな方がどうされたのだろう、もしかして俺誰かのストーカとでも思われて今から連行されるのか!?怖いよぉ…


「あ、あのすみません」

「え?は、はぁどうされました?」


「えっと、安達さんの彼氏さんですか?」

「そうですけど…」


「急にすみません、俺…安達さんの事が好きで告白したんですけどダメで。それで今日朝の噂を聞いてどんな方なのか一目見ようと来たんです」

「は、はぁそれでどうでしてた?こんなパッとしない顔の自分なんですけど納得されましたか」


「いえ!納得はしてません!」

「で、ですよねぇ…因みに真緒のどこが好きなんですか?」


「まずは顔ですね、可愛いです。それと運動が出来る所とか一緒に朝のランニングとかしてみたいですね。それと外せないのはあの笑顔、親友の涼香さんの時にしか見せないのでいつかあれを自分にも向けてもらえる日が来ればなといつも考えます」


 思った以上に真緒の事が好きなんだな。大体俺も真緒を好きな所が被ってて多少親近感を感じる。


 でも真緒は渡したくない。確実にスペック負けしている俺だけど、真緒を好きなのは誰にも負けたくないし、真緒の恋人として牽制をしておかないと。


「真緒が可愛いのは俺も知ってますし、毎日実感していますよ。でも真緒は渡しません。こんな冴えない人間を好きなってくれたあの子の事は、とても大切な存在で絶対に手放したくない…俺の大好きな恋人ですから」

「け、健一さん…」


 完全にスペック負けしているのは自覚しているがそれでも、大切な存在を守るために言い返しているとまたまた横から声が聞こえてくる。


「あ、真緒おかえり」

「ただいまっす、えっとその方は誰っすか?健一さんのお知り合いっすか?」


「え?真緒この人に告白された事あるんじゃ?」


 真緒は何を言われているか分からないという感じに首を傾けている。


「私知らないっすよこの人の事。見たことも無いっす」

「同じクラスの前沢だよ!?安達さんの隣の席じゃん!」


 真緒は興味ない人の事は徹底的に見ないようにしているのだろうか。今も俺の顔しか見ていないし、たまにチラッと見ては頭に疑問符を浮かべている。


「健一さんそんなことより、買い物行くっすよ!晩御飯何がいいっすかね?」

「あ、あぁ…」


 真緒は興味が無くなったのか俺の腕に抱き着いて引っ張るようにして歩みを始めだす。少し歩き、後ろを振り向くと放心状態の前沢君。可哀想に…好きな人に認知すらされていないなんて俺なら考えたくない。


 この後は近くのスーパーに行き晩御飯の材料調達をし、家に帰ってきた。真緒の作ってくれたご飯に舌鼓しながら今日の買い物の荷物の事を話している。


「なかなか重たかった…いつも真緒にあんな重労働をさせていたのか」

「そうっすよ?私は慣れてるっすけど、少しくらいは身に染みてほしいっすね」


「す、すまんな。いつも迷惑かけて、これからは荷物持ちとしてでも他の事でもなんでもこき使ってくれ」

「そんな酷い事しないっすよ。でも、たまにくらいは手伝って貰いたいっすね。いつか夫婦になった時に一緒に買い物したいっすし」


 夫婦か、まぁそんな未来も実際にありそうだな。多分遠くない未来だろう。


「あ!そうでした、健一さんに伝えたいことあったっす!」

「伝えたい事?」


「はい!来週付いて来て欲しいっす!」

「ん?いいけど。どこに行くんだ?」




























「修学旅行っす!」

「へ?」


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大好きな人と修学旅行  編

次回:第42話 健一さんの為に挑戦してみたい


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