第39話 健一さんと休日

 21時、真緒に晩御飯としてうどんを用意し今は一緒にベッドに入って眠ってしまった。寝る前にもう一度熱を測ったが38℃とあまり変わっていない。


 明日になればもう少し下がっているだろうか。そんなことを考えながら少し早いが俺も就寝する事に。


 朝、俺は特に体調に問題はない。肝心の真緒だが、昨日に比べて顔色が良くなっていた。


「今日中には下がるかな」


 独り言ちながら、真緒の額に手を当てると少し熱を感じる。今日も安静に過ごして貰って、明日は元気よく学校に行けるようにしてあげたいな。


 真緒を起こさないように頬を撫でるととても柔らかくいつまでも触っていたくなる。こんな無防備な真緒を最近はよく見るが、この部屋に住み始めて少しずつではあるが慣れてきていると言う事なのだろうか。


 もしそうなら、真緒にとって俺の傍が安心する所になっているといいな。


 そんなことを考えながら頬を触り続けていると、「ん…」と声を漏らしながら目をゆっくりを開き目が合う。


「おはよう真緒」

「おはようございますっす、健一さん」


「熱測るかちょっと待てよ」


 そう言ってすぐ測れるようにローテーブルに置いてある体温計を取り真緒に手渡すと、脇に挟み測りだした。


 暫くすると昨日も聞いた機械音がし、体温が表示される。


「何度だ真緒?」

「37.5℃っすね」


「良かった、熱も順調に下がって来てるな。朝どうしようか、何か食べるか?」

「そうっすね、昨日に比べて食欲もあるっすからいつもと同じトーストでいいっすか?」


「任せよけ!付けるのは何があったっけ?チョコだっけか」

「チョコとイチゴジャムっすね。たまにサンドイッチにするんすけど今日みたいに健一さんにしてもらえるなら楽な方でお願いしたいっす」


「楽な方って、ちょっと待ってろ少しくらいは料理してくる。昨日約束したしな」

「へへ、じゃあ期待してるっす」


 俺は真緒の期待した眼差しを背に炊事場に移動し、まず何を作るか考えることに。朝食となればフレンチトーストか?食欲があるって言ってたしカルボナーラトーストも…それとも、とスマホで食パンで出来る料理のレシピを調べているとあるものを見つけた。


「メロンパントースト?」


 俺はこんな物があるなんて知らなかった。たまに真緒は料理系の動画見て飽きが来ないように色んな物を出してくれるのだけど、これは食べた事がない。


 興味を持った俺はレシピに載っている材料を確認し、台所に並べていく。材料の種類は少なく食パン、バター、グラニュー糖、小麦粉の四種類だ。


 材料も量も十分にあるので早速調理を始めていく!


 ボウルにバターとグラニュー糖を入れよく混ぜた後、小麦粉を加えてさっくりと混ぜ合わせる。出来たものを食パンに塗り、メロンパンの様に格子状に切り込みを入れて表面にグラニュー糖を軽く振り焼くだけ。


 こんな簡単にできるのか…作業しながらそう思っていたのだが問題は味だ。美味しくない可能性もあるわけだし、そもそも俺の作り方が下手だった場合味を表現できないわけだよな…


 そんなことを考えていると、トースターから焼けた音と甘い香りがしてくる。


 それと同時に後ろから何を作ったのか興味津々なご様子の真緒はいつの間にか着替えており、ローテーブルの前にペタン座りをし待っていた。


「甘い匂いがするっす…何作ったっすか?」

「メロンパントーストってやつだよ、作り方も簡単だったから試しに作ってみた」


「あー、私も作ってみたいなぁって思ってたんすけど、メロンパンって作るより買った方が美味しいんすよね。一度パン屋さんに修行に行ってこようかな…」


「真緒はどこ目指してるんだよ…」


 俺は真緒のその発言に苦笑しながら、焼き上がったトーストを皿に乗せ、冷蔵に入っているカルピスと一緒にテーブルに運ぶ。


「「いただきます!」」


「んー、案外美味しいっすね」

「だな、思っていたよりサクサクしてて普通においしいな」


「今度私も挑戦してみるっすね!ちょっと興味出て来たっす」

「ほどほどにな、無理して倒れられても困るし」


「あ、はい…そこに関しては反省してるっす」

「すまんな、何度も言って…」


 少ししおらしくなってしまった真緒に掘り返しすぎたかもなと俺も反省。真緒は素直に話を聞いてくれるのでありがたいが、こう分かりやすく落ち込まれると居た堪れない気持ちになってくる。


 とお互いに反省し合ったところで、今日は何をしようかという話題になった。


「真緒も熱下がって来て、寝てるだけっていうのも退屈だよな」

「そうっすね、でも外に行くって気分でもないっすし」


「うーん、じゃあ久しぶりにゲームでもするか?」

「お?いいっすね、何やるっすか?バ●オっすか?ア●トラストっすか?それとも、サ●コブレイクっすか?」


「おいおい、なんで全部ホラーなんだよ。あとそれ全部ソロゲーじゃんか、二人で出来る奴やろうよ」

「流石にそうっすよね。やるならfpsっすか?それより私的には協力系のサバイバルゲームとかやってみたいっすね…あの、なんでしたっけ海の上で漂流物拾って暮らす奴…」


「ナチュラルにfpsだと敵同士なのは今は突っ込まないでおくわ。でもそうだな真緒の言ってる奴も面白そうだよな、今から購入してやるか」

「おおー、健一さん楽しみっす!」


 真緒は最近気になっていたゲームだったのか購入するというと嬉しそうに身体を子供の様に上下に震わせていた。


 その後は真緒と購入したゲームをすることになったのだけど、真緒はゲームになるに戦闘狂になるので穏やかなゲームでも常に武器を振っている。


 今やっているゲームは少し前に流行ったゲームで、イカダに乗ったプレイヤーが流れて来る漂流物を起用にフックを使って集め、イカダを拡張したり壁を作ったりして建物を作ることもできる。


 真緒に関しては武器を作るや「飯だー!!」と叫んでイカダを壊しに来る鮫に乗り攻撃したりして一日目では普通手に入らないだろう鮫の肉が大量だ。


 だがしかし、そもそも焼くグリルを二人分用意したりするのに時間が掛かり、運が悪いのかお目当ての素材が手に入らず俺たちは餓死寸前。


「真緒少しは手伝ってくれよ」

「す、すみません、あのタルっすよね。今取り――飯だー!!」


「あーうん。俺が間違えてたよ。一人で集めるから真緒は楽しんでて」


 人には人の楽しみ方があるのよな、そう心の中で思い今日は真緒と一緒に一日中、ゲームをして遊ぶのだった。


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次回:第40話 健一さんと病み上がり登校


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