第38話 健一さんのエッチ…
真緒にして欲しい事はあるかと聞くと、おもむろにパジャマの上を脱ぎ始めた。真緒は寝るとき下に何も着けない人で露になるその小ぶりの胸。
これは俺を誘っているのだろうか…
「ま、真緒?いいのか?」
「はいっす…出来れば早く…」
は、早く!?催促するなんて…だが、真緒の申し出なら仕方ない。別に俺が触りたいわけではないからな!?いやちょっとだけ触りたい欲はあるが。
「じゃあ、するぞ?」
俺がそう言うと真緒は目を瞑り小さく頷く。そんな真緒の胸に手を添えると「あっ…」と艶めかしい声がする。
熱でいつもより敏感になっているのか、触れただけで反応するなんて俺も我慢できなくなりそうだ。真緒の小さな胸のそのピンク色の中心に指を持って行こうとした時に真緒に呼び止められた。
「何…してるっすか?」
「え?何って…し、して欲しいんだろ?」
いつの間にか開いていた目を俺に向け、不思議そうに顔を傾ける。俺は目をぱちくりさせ、聞き返す。あれ何か想像してた反応と違う気がするが、どうしたんだろう?
「?健一さん…タオル使わないんすか?」
「タ、タオル?」
予想外のこの言葉についオウム返ししてしまう。タオル?人肌は刺激が強過ぎたのか?それか布で擦られるのが好きだったり?いつの間にそんな性癖に目覚めてしまったんだ真緒よ…
これは俺の描いている薄い本の影響なのか?しかし、そんな特殊性癖を描写した覚えはないのだが、いつ真緒は会得したというのか。
そんなバカな発想をしていると真緒は先程よりも辛そうに口を開いた。
「健一さん…早く、汗拭いてくださいっす…流石にこのままは、寒いっすよ」
「え?あぁ、汗ね…そ、そうだよな!す、すまない真緒は辛いのに」
「ほんとっすよ…もう、健一さんのエッチ…」
うぅ、何も言い返せない。いや冷静に考えればわかる事だっただろうに、真緒は食後で体温が上がっていて汗が出ているのくらい察しろよ俺!
気が利かない彼氏で申し訳ない…
少し冷静になった俺は傍に置いてあった汗拭きタオルを手に取り真緒の肩から拭っていく。奥側の肩を拭こうと腰を上げ真緒に近寄ると、
「はぁ、はぁ…」
と耳元で荒い吐息が聞こえてきて薄れてきていた邪な気持ちが再び湧き上がってくる。
だがダメだ。平常心、平常心…ここで我慢できなかったら真緒に失望されかねない。
理性を保つんだ…そう思っているのに俺はいつも間にか真緒の唇を奪っていた。
「け、健一さん!?」
真緒は驚いた顔をしている。これは言い訳のしようがないし、する必要があるのかもわからない。
「ごめん、ついしたくなって…」
「健一さん、風邪が移ったらどうするんすか…」
呆れ顔で言われてしまった。
「その時は、真緒が俺の看病をしてくれるだろ?」
「もう、仕方ないっすね…」
そう言った真緒は少し嬉しそうに俺の首に手を回し、舌が触れ合うキスをした。今の真緒も積極的だが、弱弱しく舌を絡ませて来て何度も何度も熱い息が掛かる。
顔を離してまた絡み合う。数回繰り返して、俺と真緒の口を結ぶ銀の糸が途切れるタイミングで、
「クシュッ」
真緒がくしゃみをしてしまった。キスに夢中で忘れていたが、今真緒は上半身裸じゃないか。こんな状態でずっといたら風邪が悪化してしまうのに何してるんだ俺。
「真緒ごめん、寒いよな服着ようか」
「そ、そうっすね…」
真緒が今体調を崩してる事を自覚しなくては。そう気を引き締めて、真緒の身体を軽く拭いてパジャマを着せるのを手伝う。このままではまだ寒いかと思い、もう一枚上着を掛け真緒にもう休むかを聞いてみた。
「はい…少し休みたいっす」
「わかった、じゃあ俺は洗い物してくるから安静に――」
真緒のお昼に食べた物の片づけをしようと俺が立ち上がると、服の裾を掴まれる感覚があり俺の言葉を遮るように真緒が口を開いた。
「手、握ってて貰えないっすか…眠るまで…」
「あぁ、そうだよな心細いよな」
俺も一人暮らし始めた時に一度熱を出したことがあるが、その時はただただ辛くて誰か傍に居てほしいなんて思った事もあった。
真緒の場合、家族と離れて初めての熱だ。今の真緒の気持ちは俺も凄くわかる。
再びベッドに腰かけ、真緒に布団を掛けて手を握ってあげると、
「熱を出して寝込んだ時は、お母さんに良く手を繋いでもらってたんす…」
「そうだったんだな、じゃあ寝るまでは絶対離さないから安心して眠りな。おやすみ真緒」
「健一さん…おやすみなさいっす」
そう言った真緒は目を瞑り、暫くすると規則正しい寝息がし始めた。真緒の寝顔は何度見ても可愛い。
真緒が寝たのを確認し、真緒の手を布団の中に入れ、
「おやすみ真緒」
再びそう言って、真緒の額にキスをしてから洗い物をしに炊事場に移動するのだった。
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次回:第39話 健一さんと休日
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