第37話 健一さんにして欲しいこと

 今健一さんは薬と飲み物、ゼリーを買いに外へ行ってしまった。私に熱いスープを一口一口ふぅふぅして口に運んでくれる…そんな幸せな時間が過ぎて部屋に一人。


「寂しい…」


 いつも傍に居る健一さんが居ない。体が怠くて寒気もするし喉も痛い、たまに鼻水と咳が出る。これは完全に風邪だなそう思いながら、少しでも健一さんを感じたくて胸に着けたネックレスを握り、人気のない部屋で一人呟くのだった。



*****



「ちょっと遅くなったかもな」


 ドラックストアやコンビニに寄って部屋の鍵を解錠しつつ呟く。いつもなら真緒の元気な姿を見られるのに、ベッドで眠っている。

 

 冷蔵庫に買ってきたものを入れていく。


 眠っている真緒に近寄ると掛け布団がずれ、服も乱れているのが見えボタンが外れてその綺麗な胸のピンク色の…ゴクッ、ダメだダメだ…いつも見ている真緒が汗を掻いていて非常にエロく見えてしまう。


 だが、弱っている真緒を見るのは辛い。深呼吸をして落ち着きを取り戻し、胸元のボタンを留め布団を掛け、額の汗を軽くタオルで拭く。


 真緒は眠ってしまっており、このまま安静にして早く治ることを祈るばかりだ。


 ベッドを背中を預け仕事をして時計を見ると、午前11時半過ぎになっていた。朝は遅かったとはいえスープのみというのどうなのだろうか?食欲があればおかゆを用意するが眠っている真緒のお腹の状況なんてわかるわけがない。


「今から作り始めて丁度お昼時かな?初めて作るし、美味しくなかったら申し訳ないがレトルトのおかゆだな」


 うーん、でも俺はおかゆのべちゃっとした触感は好きじゃないんだよな、真緒が全部食べ切れなかったら俺が食べる事になるし、という事で雑炊を作ることに。

 

 今回作るのはネギとショウガの雑炊でレシピを見れば一応作れるから失敗はしないと思う…味は問題ないはず。


 仕事を辞め、炊事場に移動し雑炊を作り始める。


 一人暮らしを始めた時に買った一人用の土鍋に水と鶏ガラスープを入れ沸騰したらご飯をいれる。再び沸騰するまでネギとショウガを刻み、加え溶き卵を回し入れると良い香りがしてきた。後は味目をしつつ塩を少々…完成だ。


 時間を見ると20分程掛かっていて丁度お昼時と言った感じ。火を止めて真緒が起きるまで待っておこうかなと振り返ると、


「美味しそうな匂いっすね…」

「あれ、起きてたんだ」


「はい、少し前から音がして起きたっす」

「ごめん起こすつもりはなかったんだけど…まぁ起きたしご飯食べられそうか?」


 俺が質問をすると、真緒は食べられるっすと言いゆっくりと身体を起こし始めた。真緒に近寄り背中に手に俺の手を添えて辛くないように壁にお垂れ掛かるようにし、俺は真緒の近くのベッドの隅に腰かけ、お盆と雑炊を膝の上に乗せる。


「熱いからちょっと待てよ…ふぅ、ふぅ。はい、真緒口開けて」

「はふはふ……ん、美味しいっす」


「良かった、初めて作ったから真緒の口に合うか心配だったんだけど…大丈夫そうだな」

「ふふ、凄く美味しいっす。初めて健一の料理食べたっすけど…また、食べたくなっちゃいそうっすね」


「はは、簡単な物しか作れないけど真緒が食べたいならたまにはいいかもな」

「約束っすよ?私記憶力には自信あるっすから」


「それならテストの点数ももう少し上げてもらわないと…いつも平均点より下なのはどうしてだろうな」

「うっ…、わ、私のは健一さんとの約束限定で記憶力がいいんすよ…」


 なんだそれ、なんて笑いながら真緒に食べさせていく。


 一口ずつ真緒の咀嚼が終わるまで待って半分くらい食べ終わった頃。下唇にお米が付いてしまっていた。真緒は気づいていないみたいだから使っていた木製のスプーンを置き、真緒の唇に手を持って行き親指で付いているお米を取ってあげ自分の口に近づけ食べる。するとさっきまで目が合っていた真緒は何か物欲しそうに俺の鼻下ぐらいを見つめ始めた。


 ふと思い出したが、目が覚めてから一度もキスをしていない。でも、今してしまってもし風邪が俺に移りでもしたら真緒は自分のせいでと落ち込むだろうし。


「真緒、風邪が治ったら一杯してあげるから…今は熱を下げることに尽力しよ」


 そう俺は言い真緒の頬へとキスを落とす。もし舌に触れてしまえば粘膜への接触で感染のリスクが上がるから唇へのキスはお預けだ。


 真緒は頬へのキスで少しは満足したのか、触れた頬に手を添え微笑み頷いてくれる。


 その後も真緒に食べさせ続け、1人前分が完食された。


「食欲は有りそうだしすぐ元気になると思うよ…ほかに何かして欲しいことがあればいつでも言ってくれ」


 お盆と空になった土鍋を近くのローテーブル置き、再びベッドに腰かけ真緒の顔を見ながら欲しいものは無いかを尋ねる。食後のデザートが欲しいとかあるかもしれないし、飲み物が必要な事もあるしね。


「じゃあ…健一さん…」


 そう言った真緒は顔が赤く少し荒く呼吸をしながら、パジャマのボタンを外し再び露になるその小さすぎる胸とピンク色…


「……て欲しいっす…」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回:第38話 健一さんのエッチ…


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