第30話 健一さんとペアネックレス

 俺と真緒は目的地のカフェへと足を運んでいた。少し並び入店すると全体的に落ち付いた感じの色合いで構成されており、店の雰囲気に合ったBGMが流れている。


 店内に入るとすぐ隣に雑貨コーナーがあり手作りのアクセサリーなどが並べられていて、あとで真緒と見に行こうかと話していると店員さんに奥の四人掛けのテーブル席へと案内された。


 「ただいま混雑していますので、相席になるかもしれません」と頭を下げられたが、お店が出来たばかりと言うことを兼ねるとそう言う事もあるのかもな。


 そんなことを一人考えていると対面に座る真緒が少しだけそわそわしているのか両指を合わせ周りをキョロキョロしていた。


「大丈夫だよ真緒、たとえ相席になっても知り合いでなければ特に話したりすることも無いだろうし、不安になるのも分かるけど今日は楽しもう?」

「そ、そうっすね。今日は健一さんとのデートっすもんね…緊張するっすけど、楽しむっす!」


 俺の呼びかけが良かったのか、少しだけ落ち着きを取り戻し何を頼もうかと一緒にメニューを眺めていた。


 メニュー表のデザインもよく派手過ぎず、ケーキの紹介とそれに合う飲み物の説明が丁寧に書かれていて初めて来る人でも注文しやすいようになっている。


 俺も真緒も甘いものは好きなので、真緒は苺のタルト、俺はチョコチーズケーキでそれぞれに合う飲み物も注文した。届いたら一緒にシェアしましょと真緒に言われ俺も苺のタルトが気になっていたから楽しみだ。


「私こういうお洒落なカフェ来るの初めてだったんすけど、雰囲気とか良くてまた来たくなるっすね」

「そうだな、家からもそこまで遠くないし。来たくなったら、また来ような」


「はい!楽しみにしてるっす。テスト終わった後とかでもいいっすよね」

「はは、別に此処に拘らなくても頑張ったご褒美として行きたい所連れて行くぞ?」


「うーん、健一さんと行きたい所…あり過ぎて決められそうに無いっす」


 とテスト明けにもう一度来てみたいなどと真緒と話していると、注文したケーキと飲み物が届いたようだ。


 真緒の苺タルトはサクサクのタルト生地に特製のカスタードクリームを付け大きな苺をふんだんに使った物だった。飲み物は少し香りの強い紅茶がついている。


 俺のチョコチーズケーキは濃厚な生チョコが中に入っているらしく、甘みと深みのある味わいを感じられるらしい(メニューの紹介参照)。飲み物はコーヒーだ。


 真緒は二つのケーキの写真を何枚か撮った後、二人でも撮りたいと言うので記念に数枚撮ることにした。


「それじゃあ食べようか」

「はいっす!いただきます…ん!美味しいっす!」


 とあまりの美味しさに驚いているのか目を見開き口に片手を持って行き感想を述べていた。口に含んだ瞬間にあの反応…食べてみたいな。


「健一さん食べるっすか?」

「いいのか?真緒まだ一口しか食べてないけど…」


「いいっす!それよりもこの美味しさを健一さんと共有したいっす!ですので、はいあーん」

「それじゃあお言葉に甘えて…んっ、美味しい…」


「そうっすよね!苺の酸味がカスタードクリームとあってて且つタルト生地の出来たてのサクサク感がたまらないっす!」


「真緒が幸せそうに食べるとこっちまで幸せな気持ちになってくるよ。と…自分のも食べようかな…ん、おっ濃厚で美味しい…真緒食べるか?」


「食べるっす!」


 可愛らしく開けた真緒の口にチョコチーズケーキを入れると、美味しかったのか今度は目を閉じて俺のフォークを加えたまま顔を左右に震わせていた。


 なんかこう見てると小動物にエサを与えているみたいで可愛いな。


 またこんな真緒の表情を見れるのならテスト明けに本当に来るのもいいかもしれないなんて考えをして真緒との甘い時間を楽しみ会計をする前に、雑貨コーナーに足を運んだ。


 ここには手作り感のあるアクセサリーやアロマキャンドルが数多く並べられていて、値段も安いものから高いものまで…


「真緒何か気になるものあるか?」

「うーん、このネックレス綺麗っす」

 

 そう言った真緒が手に取ったのは、金色のチェーンの先に小さい球体のガラスドームがついている。


 底近くに深い青から明るい青へグラデーションになっており、中にはキラキラと光る星のようなものが動いていて綺麗な夜空を表現している物になっていた。


 真緒は一緒にお風呂に入っていた時も星が見たいと言っていた事から星が好きなのだろうか。


「真緒は星が好きなのか?」

「好きっすね、なぜかわからないっすけど見てると自然と時間を忘れられるというか…私にとって癒しに近いものっすね」


 癒しか、俺と真緒の関係は妹にバレないように常に行動には慎重にならなくてはいけないから少しでも気も紛らわす為にも、普通に真緒にも似合いそうだし買ってあげようかな。


「そのネックレス、真緒にすごく似合うと思うよ。付き合い始めて一か月の記念にプレゼントさせてくれないか?」

「え、いいんすか?これ他の比べて少し高いっすよ?」


「いいよ、真緒が喜んでくれるなら。それにこれペアネックレスらしいし、真緒が嫌じゃなければ一緒に着けない?」


「ペアネックレス…いいっすね。やりたい事の一つに『ペアでアクセを付けたい』ってのがあるんすけど、結婚指輪を予定してて…でもネックレスでも凄く嬉しいっす。健一さんこれはお互いにプレゼントって事で割り勘しないっすか?」


「いいね、じゃあ一緒に買おうか」


 そう言ってネックレス代は俺と真緒半分ずつ出し合い、家に帰ってプレゼントという形でお互いの首に着け合った。


「凄く似合ってるよ真緒」

「えへへ、嬉しいっす。これで離れていても健一さんを感じられるっすね。これずっと身に着けておくっす!」


 真緒は学校に行っている時間、俺は真緒が帰ってくるまで時間それをこのアクセサリーがある事で少しは寂しさも和らぐと良いな。


*****


 翌日の体育前の時間、更衣室で服を脱いでいると隣の涼香が興味津々な表情でネックレスについて聞かれた。


「これ、恋人から貰ったものなんすよ」

「え!?真緒ちゃん恋人居たの…知らなかったどうしようお兄ちゃん…」


 最後の方は聞こえなかったけど私に恋人が居る事に凄く驚いているようだ。

 

「最近出来て…大好きな人からのプレゼントなんすよ。これで離れていても寂しくないというか」


 私は健一さんから貰ったネックレスを手のひらに乗せ、見つめながらそう言った。


「へ、へぇ…真緒ちゃんの恋人?ど、どんな人なの、私気になるな~?」

「教えない、秘密っす!」


 健一さんとは秘密の関係なので涼香には強く教えない旨を伝える。

 そんな会話を涼香としながら着替え、体育館へと一緒に向かっていたのだが隣の涼香が挙動不審に私のネックレスをチラチラ見て来る…どうしたんだろう。


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次回:第31話 健一さんと映画デート

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