第18話 お兄さんと移動中②
手を繋ぎながら降りる駅を待った後、俺と真緒は旅館までの道を歩いていた。今は15分程で着くとは言っていたものの体力の乏しい俺にとって15分とはとても苦痛でしかなく、少し休憩として自販機のある休憩スペースでベンチに座っている。
「お兄さんほんと体力ないっすね。かっこ悪いっす」
「すまなかったな体力無くて…でもそうだな何かあった時に真緒をすぐ助けられるくらいは鍛えとかないとな」
「ほんとっすよ、でもよかったっすねうちの旅館にはちょっとしたトレーニングスペースがあるっすから今日の予定が一つ増えたっすね」
「嬉しくない予定の増え方だわぁ」
あまりうれしく予定ではあるが身体を鍛えないといけないというのは本当だ。もし万が一でも真緒に何かあればすぐにでも助けてやれるほどの筋力は付けておいて損はしない。明日は多分筋肉痛だろうな。
「お兄さん何か飲むっすか?」
「んー?いや、大丈夫だよ」
疲れ果てている俺とは違い元気な真緒は数台並んだ自販機の前に立っている。そこには珍しい食材の缶詰やパンの缶詰、飲み物、アイスといろんなものが品揃えされているのが見え、真緒は何やらアイスの自販機を見ていた。
「真緒アイス欲しいのか?」
「うーん、ちょっと食べたくなったっす。このココアのやつとかっすね」
真緒が指さしながら言っているのは、ミルクココアの棒アイスだった。食べたいなら買ってやろうかなと俺は息を整えてから真緒の下へ。
「いいんすか?奢って貰って」
「いつもお世話になってるからな、このくらいさせてくれ」
「ありがたく頂くっす!」
買ってやると嬉しそうにアイスを手に持ち、俺と一緒にベンチに座るとゆっくり食べ始めた。アイスを食べている真緒を見ていると、物欲しそうにしていたとでも思ったのかおもむろにこちらにアイスを持った手を伸ばして、
「お兄さん食べるっすか?私の唾液がたっぷり付いたアイスっすよ」
「急に食べにくくなったわ!?でもまぁ少し貰うな」
溶けるといけないから真緒の唾液がたっぷり付いたアイスは置いといて少し食べると、思っていたよりもしつこくない甘さでびっくりした。
「おいしいな、思ったりより甘くなくてもう一口食べたくなるな」
「え、そんなに私の唾液美味しかったんすか!変態っすねお兄さん」
「アイスの感想だからな!?」
反応に困る…
いや最近本当に思うことなのだが、こういうちょっとした下ネタを真緒はどこで学んでくるのだろうか。大元を絶つことができればこういう発言も減るかもしれないからな。少し気になった俺は聞いてみることに、
「なぁ真緒、そういう言葉ってどこで学ぶんだ?ちょっとお兄さん知りたいんだが」
「え?あー、これっすか。ちょっと言いにくいっすね」
言いにくい?なんでだ、別に俺に隠す必要ないだろうに俺だってプロとしてエロを追及している身なのだから、現役女子高生がどこで学んでいるかにも興味がある。もしそれが、詐欺的な如何わしいサイトなら今からでも辞めて貰わないと危ないしな。
「そ、それがっすね…」
「うん」
真緒は俺から視線を逸らしながら、
「お兄さんの描いてる薄い本っす」
「あー、うん。お買い上げありがとうございます!」
俺はぺこりとお辞儀をすると、しばらくの無言が続いてしまった。
気まずい、俺の影響だったとは…でもちゃんと購入して見てくれているのは嬉しかった。
少しすると休憩も十分取れたことだしと真緒が差し出してきた手を握り、真緒のご両親に対しての挨拶に関して何も考えていないことに気づき緊張した足取りで旅館までの道をゆっくり歩くのだった。
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