第二章 ちょっとした旅行
第16話 お兄さんと準備
「まぁ真緒、そろそろ離してくれないか?」
「いやっす、まだお兄さんの温もりが欲しいっす」
目が覚めてから今日の予定について話していたときから真緒は俺に抱き着いて離ししてくれない。まぁ俺としては嬉しいけどね?
でも、ご飯を食べた後は真緒のご実家に行く予定なので離して貰わなければ準備もすることができない。そんな時だった、
ぎゅるるるるっ
俺のお腹の音が鳴ってしまった。まぁいつもは真緒が学校に行くということもあり、起きる時間を合わせているが今日は休日で少し起きるのが遅くなってしまったから仕方ない。
「はぁ、お腹空いたなら仕方ないっすね。起きるっすか」
そういうと真緒は残念そうに抱き着きを辞め、洗面所の方へ。俺も顔を洗うためについていくと真緒が大き目のあくびをしていた。あまり眠れなかったのだろうか。
「真緒、あまり眠れなかったのか?」
「そっすね、寝る前お兄さんにキ――あっいや、ただ眠れなかっただけっす」
そう言った真緒は恥ずかしそうに俺から目を逸らし歯磨きをし始めた。
何か言いかけたような気もするが、まぁ気にするとこでもないだろう。俺も顔を洗って歯磨きをし始める。すると真緒は終わったのかこちらに向き話しかけてきた。
「お兄さん、改めてなんすけど…今日から彼女としてよろしくお願いするっす」
「ん、うん」
まだは歯磨きをしているから喋れないが真緒がぺこりとお辞儀したので、俺も続けて小さくお辞儀した。真緒はそれを見るなり、俺の前で服を着替え始め下着姿に。
ゴクッ
俺はつい口に含んでいるものを飲み込んでしまった。
「お兄さん、そんなにみられると流石に恥ずかしいっす」
顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに胸元に制服を持っている。正直可愛い。
でも見ずにいられない理由はある、なぜなら洗面所と脱衣所は同じスペースにあるからだ。いやでも鏡に映ってしまい、彼女の綺麗な白い肌を目で追ってしまう。
そもそも今日までそんな事しなかったのだから気になる…
「お兄さんが見たいなら今日の夜、私の部屋で――」
「行かないぞ!?今日、俺は旅館の部屋に泊まるからな。あと、そういうのはまだ真緒に早い」
「むぅ、いつならいいんすか?」
「大人になったら…かな」
「じゃあお兄さん、今から私を大人にしてくださいっす!」
「年齢の話ね?」
いやそういう生々しい話は本当にもう少し年齢を重ねてからにしてくれないかな?俺も男だし興味もあるけど、まだ真緒は17歳…できなくはないが初めては大切にしてあげたいというか…
俺がそんなことを考えているともうすでに真緒の姿は無く、朝ご飯の準備をし始めているのか隣の部屋から可愛い鼻歌が聞こえる。
「俺、弄ばれてるのかな…?」
そんなことはどうでもよくて、俺も着替えて真緒の待つ部屋へ。部屋に戻ると朝ご飯を作っている真緒のエプロン姿があった。改めて思うけど、制服エプロンっていいよな。
「真緒、何作ってくれてるんだ?」
「んっと、朝は簡単なものでホットドックと昨晩のロールキャベツの残りで作ったスープっす、あとお昼にちょっとした散歩でもしようと思うっすからサンドイッチもっすね」
なんというか流石だな、俺だったら確実に菓子パン一択なのだがそしてお昼の事も考えているというのだからもう嫁にしてしまいたい程に優秀だ。
そんな真緒は手際よくホットドックとスープ、サンドイッチを作り終え、サンドイッチはお昼にと言っていたのでワックスペーパーで包み、少し小さめなピクニックなどでよく見かけるバスケットに詰めていた。
改めて思うが真緒の料理の速さは尋常じゃない、この作業を10分未満で終わらせてしまうし、俺が話しかけると手を止めて顔を合わせて話をしてくれる。こんな出来た彼女他のいるのだろうか…そう思ってしまう。大切にしないと。
「では、食べるっすよ」
「あ、あぁ。いただきます」
いつの間にかローテーブルに運ばれていたホットドックとスープ。俺は急いで真緒の向かい側に座り食前の儀式の言葉を口にする。真緒も続けて「いただきますっす」と言い手をホットドックへ。俺も食すとするか。
「ん、うまい。やっぱり真緒の作るものはどれも美味しいな」
「えへへ、お兄さんにそう言って貰えて嬉しいっす」
そういう真緒は本当に嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
今日の朝食のホットドックなのだが、少し表面を焼いているのかパリパリとした心地よい音のする食パンに熱々なのがわかる湯気を立ち込めた少し大き目で齧るとパキッと良い音を鳴らし、とても食べ応えがあるウインナーとそれを包み込むようにしているサンチョ。その上からマスタードとケチャップが掛けられている、一口齧るとほんのり甘い香りがするので食パンを焼くときにバターでも溶かして焼いたのかもしれない。とてもおいしい。
次はスープ、これは昨晩真緒が作ってくれたローキャベルを一つ崩しトマトとコンソメを入れて軽く煮込んだものだった。ほろほろと崩れるロールキャベツの具材にしみ込んだトマトの酸味とコンソメの香りが非常にマッチしとても食べやすくなっている。
お互いを交互に食べたくなるようにしているのかホッドドックを食べるとスープを自然と欲してしまう自分がいるのだ。
今日も最高においしかった真緒の朝食を食べ終え、出かける準備を始める。俺は外出時でも仕事が出来るようにタブレットの用意を、ほかに必要な物は特にない。最近はタブレット一つあれば仕事ができるから楽でいいよな。まぁ家から出ないからいつも液タブ作業なんだけど。
真緒はスマホを弄っていた。両親への連絡でもしているのだろうか?まぁ、急な訪問よりも一応伝えてた方がいいもんな。
「それじゃあ、真緒行くか」
「はいっす、あっその前にお兄さん」
準備も終え、玄関で靴を履いていると後から真緒の甘い声が聞こえてくる。振り返ると、
「ぎゅっとしてくださいっす」
両手を広げた真緒が俺からの抱擁を求めているようだ。俺の真緒の期待に応えるように優しく抱きしめると、「えへへ、いいっすねこういうの」と嬉しそうな声を上げる真緒。可愛いな。
それから5分ほど熱い抱擁をして、俺たちは旅路を急ぐのだった。
真緒は付き合い始めてから急に甘えることが増えた気がする…気のせいだろうか
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