第14話 お兄さんに内緒の楽しみ 真緒side

 今日私はお兄さんの恋人になって一緒のベッドで寝ている。恋人になってから初めての夜、すごくドキドキするし私もお兄さんに大人にしてもらえるんだなんて思っていたのに、何もされずにいつも通り一緒に寝ている。


 一年間ずっと狙っていたあのお兄さんの唇をやっと手に入れて、高まってちょっと興奮気味の気持ちの時にお兄さんが「寝るか…」なんて言うからそういう事をすると思うじゃん!


 何もされない寂しさと、私の身体を大切にしてくれている優しさが交じり合ってなかなか寝付けない。大人になったらしてくれるかな…少し不安。


「お兄さんのばか」


 そう小さく呟いた私の声は届かない。ぐっすり眠ってしまっている、私を抱きしめながら寝ているその顔がとても幸せそうに見えて、私まで幸せな気持ちになってくる。いつもと一緒の状況なのにドキドキして、又キスしたくなる。恋人なんだからしてもいいよね?


「お兄さん…」


 そう呼びながら、私はお兄さんの柔らかい唇に触れる。重なってまたドキドキして眠れそうにない。スマホで時間を確認してみると深夜3時を回っていた。いつもなら眠たくなる時間なのに変に目が冴えている。


「明日から…ううん今日から私はお兄さんの彼女、えへへ」


 自分で言って恥ずかしくなるけど、それ以上に嬉しさがあってこれからのお兄さんとの日々にどんな変化があるのかに期待を募らせていると、


「真緒…」

「ん?……」


 寝言かな、お兄さんが私の名前を呼んでいる。私を夢の中でも見ているのだとしたら、凄く嬉しい。どんな夢を見ているのだろうか少し気になる。

 前、涼香に教えてもらった事なんだけど『寝言に答えると面白い!』って、ネットで調べると睡眠の質が下がるから良くないって見かけるけど試してみたい気持ちもある。


「お兄さん…」

「……んぅ…」


「今からエッチしないっすか?」

「……しな…い……」


「むぅ」


 面白くない!寝ててもお兄さんはお兄さんで変わらない。でも、少し安心する気持ちもある。いつも私の事を大切にしてくれているのだと感じるから、改めて気持ちを伝えたくなってくる。


「お兄さん…大好きっすよ」


 私の気持ちが伝わったのか少しお兄さんの頬が緩んだ気がした。そんな表情を見ているとまた、少しドキッとして又キスがしたくなって顔を近づける。お兄さんの寝息が聞こえる距離…再びそっと唇を重ねる。


 これまでずっとしたかった事だからか、してもしてもし足りない。顔を離すとまたしなくなる。そんな悶々とした気持ちでいると、外からチュンチュンと鳥の鳴く声が聞こえてきた。


「もう、朝っすか…」

 

 少し名残惜しいけど、ご飯を作ったらすぐ帰らないと。そう思いお兄さんから離れようとすると、


「…行かないで」

「お兄さん…」


 お兄さんが何かにうなさているように感じた。お兄さんの昔のお話を聞いたせいか今この場から離れた方がいいのは分かっているけど。お兄さんのその辛そうな顔を見ていると、傍に居てあげたいと思ってしまう。


「しょうがないっすね、今日ずっと一緒に居るっすから、安心してくださいっすお兄さん」

 

 お兄さんに抱き着くようにして身を寄せるとお兄さんの表情が少し安心したような顔をした。


「そんな顔するなんてずるいっすよ、お兄さん…」


 そう言った私はまたお兄さんにキスをした。


 この日を境にお兄さんと一緒に寝る時は内緒でキスをするのが私の楽しみになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る