第13話 お兄さんの悩み事②
仕事も順調(忙しいくらい)でアパート生活も慣れ、お隣さんとも仲良くなり充実していたそんな時に妹が俺の部屋にやってきたのだ。
俺はひどく絶望した。また何かを壊されるのでは…そんな恐怖があった。
両親にも連絡してみたが、『教えていない』と言われ、1年程経った今…自力で探していたのか?もしそうならどこまで執念深いのだ、気持ち悪い、吐きそうだ、この時から妹を可愛いと思えなくて、俺はもう何も考えない方が楽になれるのではと思い始めていた。
『妹よ、どうしたんだ?』
『お兄ちゃんに会いに来たんです、絵のお仕事は順調ですか』
『あぁ、こっちに来てからは順調だな』
そんな他愛もないことを妹と話していると、お隣さんが俺たちに話しかけてきた。
『あれ、羽島先生こんにちは』
『…楓先生こんにちは』
『えっとこの女子高生さんは羽島先生の妹さんか何か?』
『はじめまして!お兄ちゃんの妹の涼香です!初対面で失礼かもなのですが、お聞きしたいことが…』
『元気でかわいい子ね、何かしら聞きたい事って』
『お兄ちゃんとはお付き合いしてたりしますか?』
『ううん、私は女の子が好きだから!むしろ涼香ちゃんの方がいいかなぁ』
『わわ、嬉しいです!じゃあ今からお姉さんの部屋にお邪魔してもいいですか?』
『いいわよ!羽島先生妹ちゃん預かるわね!』
そういうと妹はお隣の部屋へと消えていった。
それから楓先生を見かける回数が極端に減った。理由はお仕事が急に増えたからだそうだ、真相はわからない…
そして妹はいつの間にか毎週のように部屋に来るようになって、また妹と二人だけの生活をせざるを得ない状況になったある日。
仕事で遠方に打ち合わせに出ることになり、帰りに真緒を助けることになる。
翌日に妹が連れてくるとは思いもしなかったが。
『涼香には…内緒っすよ?』
それからの俺の生活はすごく楽しいものへと変わっていった。
半分ごみ屋敷だった俺の部屋を綺麗に掃除してくれて、
いつもカップ麺やお惣菜なのをみて、ご飯を作ってくれるようになった、
夜遅くまで、映画やアニメを見まくったことも、
休日に遊びに来た時は一緒にゲームもした、
たまに勉強を見てやったこともあった、
そんな妹には内緒の生活はとても心地よく、昔彼女や友達としていた事のように思えた。こんな些細なことを誰かとしたくてこの1年ずっと求めていて…いつの間にか俺の中で真緒は掛け替えのない存在になって、真緒もよく俺に好意を向けてくるようになった。
それに気づいた時無性に怖くなって、真緒と今以上の関係になれば見つかる可能性が上がる。
『もし今の関係が妹にばれてしまえば、また楽しい日々を壊されるんじゃないか?』
そう思い始めてからは現状維持をと決めて踏みとどまっていた。
*****
「そんな…涼香が」
「これまで言えなくてごめん、真緒との生活を守りたくて」
俺はこれまで言えなかったことを言った。家族にも内緒にしてたことだ。
「ううん、大丈夫っす、話してくれて感謝っす」
「それでさっきの話なんだが、俺の気持ち」
言いたい、でも怖い。
「聞かせてくれるっすか?」
「どこにも行かない、離れないって言ってくれるなら」
聞きたかった、ただそれだけの安心感が欲しかった。
すると真緒は俺の目をまっすぐ見つめて、でも不安なのだろうか唇を震わせながらこう言った。
「ずっとお兄さんの傍に居るっす。何があっても、離れないしどこにも行かないっす。だから…聞きたいっす、お兄さんの気持ち…」
真緒は弱弱しい声で俺の気持ちを聞きたいと言っている。
だから真緒を安心させたくて、俺も気持ちを伝えたくて…
「俺も…真緒の事が好きだ」
「嬉しいっす…でも、もっとほしいっす。だからお兄さん…」
そういう真緒はタブレットから出る少し弱い光に照らされながら目を瞑った。
それが何を意味してるか、分かっている。でも真緒の気持ちに答えたくて、俺も真緒とそういう関係になりたくて……顔を近づけ真緒の唇にそっと優しく唇を重ねた。
顔を離して俺はあの日、真緒を助けたみたいに強く抱きしめると強く背中に圧を感じる。
こうして俺たちは恋人同士になった、いつか壊されるかもしれない関係で合っても。
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