第6話 お兄さんの熱くて…
「そ、そうだな。他人の色恋沙汰にいろいろお口出しするのもよくないだろうし、真緒の気持ちも考えた方がいいんじゃないか?」
「………真緒?ねぇお兄ちゃん真緒ちゃんの事なんで呼び捨てなの?そんなに仲良かったっけ」
声は冷たくはなかったが何か聞きたい様子に俺は口を塞いでしまった。
「…………」
やってしまった…………これはどうしたものだろうか。妹の中で俺と真緒の関係は一年前に一度連れてきたときにちょろっと話した程度だと思っているだろうし、このままでは危機的状況かもな。どう言い訳したものか。
俺が四苦八苦しているとその時、妹のスマホが振動した。
「あ、真緒ちゃんからだ」
「な、なんだって?」
「宿題忘れたから見せて欲しいって」
「じゃあ早く行ってあげた方がいいんじゃないか?」
そういうと素直にうんと頷いて足早に部屋を後にした。はぁ、助かった…………
扉の閉まる音がするとベッド方からモソッっと昨日と同じで布団から顔を出した状態になった真緒。
「お兄さん涼香行ったっすか?」
「あぁ、助かったよ。真緒が居なかったらどうなってたことか」
本当に心臓に悪い、妹との時間は憂鬱でしかない…………
「なら、良かったっす。あ、朝ご飯…………」
机を見た真緒は自分の分の朝ご飯が無くなっていることに気づいたらしい。そこで俺は自分の皿に乗ったカツサンドをあげることに。
「これ俺が齧ったやつだけど、これでいいなら食べるか?」
「いいんすか?うーんでもこれだとお兄さんに作った意味が…」
「気にするなって、俺はコンビニとか行けばおにぎり食えるし」
「ダメっす!あ、いい考えがあるっすよ、半分個するのはどうすか?」
そう言った真緒は俺から皿と奪い取るように受け取るとキッチンへ包丁で切ってくれるようだ。
「なぁ真緒、質問なんだが今何をしてるか聞いてもいいか?」
「なんすか、あーんに決まってるじゃないすか」
「いやまぁそうなんだけどさ」
今真緒の手には俺から受け取ったカツサンドを半分にして歯型の着いていない方をさらに4等分して手をこちらに伸ばしている状態なのだ。
いやちゃっかり歯形ついてるの自分のにしてるのに驚きなんだけどね!?
「お兄さん早くしてください、遅刻したくないんすから」
「ずるくないかそれ!?」
「ほらはい、あーん」
俺はしぶしぶ付き合うことに…正直めちゃくちゃ恥ずかしいからな!?妹と同じ年の子にご飯作ってもらってしかも食べさせてもらって、これ何のプレイだよって感じ。
「お兄さん上手に食べられたっすね」
「食べやすく切ってくれてたからな、あと無性にむかつくからお前も食えほら」
俺は自分の恥ずかしさの隠すように、真緒にも味わってもらおうと切られた一つを手に取り真緒の口の前に。これで恥かしがれ!と思っていたのだが、
「ん、…おいしいっす、お兄さんの熱くて…口から溢れて――」
「変な言い方するな!?あともう冷えてるし、それ肉汁な!?」
真緒は思いのほかあっさりと食べて、少しエッチな感じに舌なめずりをしながら感想を述べてきた。俺からしたはずなのに俺が恥ずかしいのはなぜだろう…でもまぁ多少は真緒も顔を赤くしているので恥ずかしいのだろう。負けた感が否めないが…
まぁそんなこともありながら、真緒は学校へ行ってしまった。ちゃっかり歯形の着いたカツサンドを口に咥えながら…
今日も朝から真緒に翻弄されてしまったのだった。
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