第36話 クイズ研究会
六限が終わると、田原は廊下へ出てなにやら生徒と話し込んでいる。おそらく追加の情報が入ったのだろう。
これでクイズ研究会の面々が含まれていたら、かなり絞り込めるのだが。
田原は伝えに来た生徒へなにかを渡して、握手して別れた。すぐさま俺の席へとやってくる。
「
「おそらくテレビ番組で優勝したクイズ研究会の三人だよね」
「なんでわかったんだ。俺たちの話し声が聞こえていたとか」
「いや、六限中にあれこれ考えたんだけど、手紙を渡された人に共通する理由があるんじゃないか、と想定していたってわけ」
田原が首をひねっている。まあ当事者でもわからないものを部外者が解けたら、それは著名な探偵になれる。
田原の情報収集能力はじゅうぶん「名探偵」にふさわしい。だが推理力はからきしなのだ。名探偵を支えるパートナーとしては申し分ない。
「よくわからないな。なぜお前たち兄弟と絵梨香ちゃん、佐伯と結城の五人を考えたらクイズ研究会につながるんだよ」
「理由は七限後に皆に伝えるから、とにかくクイズ研究会の三人に会おうじゃないか」
「お前、どうして会談がセッティングされているとわかったんだ」
「田中さんからも直接話を聞けたし、佐伯くんと結城くんとも話せた。であればクイズ研究会の三人とも会えるんじゃないかと推理したまでさ」
「ゲーム実況はもったいないな。大学でしっかりと教養を身につけたら探偵になれるんじゃないか」
「探偵ね。ホームズくらいの洞察力があればいいだろうけど、たかが大卒では彼ほどの洞察力は身につかないだろう」
「まあいい、とにかく会いに行くぞ」
田原が先導する形で先ほど佐伯くんと結城くんに会った会談の踊り場へとやってきた。すると三名の先客が待っていた。
「田原さん、こんにちは。今日はどんなご用ですか」
「ああ、用があるのはこっちの
「ああ、あのゲーム実況で話題になっているという磐田さんですか。ご活躍は聞き及んでいますよ。大人気だそうじゃないですか」
「ということは、配信を観たことはなさそうですね」
「はい、僕たちは課題以外はクイズのために書籍を読み込んでいるので、なんの役にも立たないゲームをしている暇はないんです」
忌憚のない意見が飛び出したな。まあ他にやることがある人はゲーム実況など観ないんだろうけど。
「君たちクイズ研究会に灰色の封筒に入った手紙が渡されたと思うんだけど、届いていたんだよね」
「はい。ちょっと意味がわからなかったのでスルーしていたんですけど。田原さんが灰色の手紙を受け取った人を探していると聞きまして。その手紙を探して持ってきたんですけど」
現物を持ってきてくれたのか。これは説明が早そうだ。
「おそらく励ましの紙が一枚、生活指導室へ来るようにという紙が一枚、計二枚のコピー用紙があったんだよね」
「はい、そうですけど。よくわかりましたね。あ、そうか。磐田さんももらったんですね。この手紙」
部長を名乗る男子生徒が灰色の手紙を渡してきた。
「中を見てもいいかな」
「はい、かまいません。というより、磐田さんも同じものをもらっているんですよね」
「いや、僕と弟には生活指導室へ行くよう指示する紙は入っていなかったんだ」
「入れ忘れですかね」
封筒の中を改めると、そこには二枚のコピー用紙が入っていた。一枚目は俺と
「ところでこの手紙を持って生活指導室へは行ったのかな」
「いいえ、行こうとは思ったのですが、部員のひとりが昨日病欠だったので、今日の放課後にでも行く予定です」
「おそらく持ってきてもらいたいものがあるはずだから、まずは直接話を聞きたいんだと思うよ。おそらく探せばすぐに持ってこられるものだと思うんだけどね」
「おい
「あ、ああ。たぶんだけど理由には行き当たったようだよ。ただ、今のままじゃ、差出人を絞り込めない。おそらく僕たちも生活指導室に行けば出された理由はわかるはずなんだけど、物には順序があるからね」
「じゃあ今わかっていることだけでも教えてくれよ。わからないものを探しているこちらの身にもなってくれ」
「そうだな。今判明している受取人を整理しようか。僕と弟、アイドルの田中絵梨香さんに現役Jリーガーの佐伯くん、今秋のドラフト候補の結城くん。そしてクイズ研究会の三名。これで合計八名だね」
「磐田さん、僕たち以外にそれだけ配布されていたんですね。クイズの要領だと、関連するものをくくるか、違うものを弾くかして答えを導き出せばいいんですけど」
クイズ研究会の部長が聞いてきた。
「要は全校生徒九百人の中から、手紙を渡された八名がなぜ選ばれたのか。そして生活指導室へ行くように指示されたのが田中さんと佐伯くんとクイズ研究会の三名のみ。ここにも理由があるはずなんです」
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