第22話 他にもらった人を探せ
田原と
「女子生徒は憧れから、男子生徒は恋愛対象として、つねに好奇心の対象になっているんだよな。であれば、高等部校舎でどこかの教室に入って机を物色していたら、さすがに誰か気がつくんじゃないのか」
「そういえばそうだけど、そもそも
「女子はどの程度まで田中さんを知っているのだろう」
「ほぼ全員知っているはずだよ。女子は特別に集会で彼女のことを知らされていたらしいからね。学園長の指示で開かれたんだってさ」
「学園長の指示で、か。となれば学園長室を目的に高等部校舎へやってきた可能性が高くなるな。学園生活で学園長の庇護を求めるために」
「じゃあ校舎をうろうろしていた理由は」
「中等部三年ならそのまま進学すれば来年には高等部だろう。だから興味本位でいろいろ見てまわりたかっただけかもしれない」
「
「そもそも接点がない」
「彼女がゲーム実況の視聴者だった、という考えはなしか」
「もし視聴者なら、文面でもゲーム実況の生配信の感想が書いてあって然るべき。それがないということは、ゲーム実況でつながっている人物ではない、と考えられる。田中さんとの接点がゲーム実況だというのなら、彼女が差出人ではないと見るのが妥当だろう」
「今、手紙を持っているか。文面を確認したいんだけど」
「ちょっと待ってくれ。カバンの中にあるから」
カバンに手を伸ばして中から手紙を取り出した。封筒からコピー用紙を出すと田原に渡した。
「うーん。確かにゲーム実況にはいっさい触れていないように読めるな」
田原は長田へ渡した。
「どこへ行くのかとかなにをするのかとかはプレイしてほしいゲームがあるって読めないかな」
「それはちょっと難しいな。もしそうなら〇〇をプレイしてください、って直接書いたほうが確実だからな」
もう一度田原が手紙を求めた。
「これがラブレターには読めないなあ。ゲーム実況のファンレターにも読めない。近況報告をしてほしいのかもしれないけど」
「田中さんが俺たちの近況を知ってどうするんだよ」
「だよなあ。ということは。やっぱりこの手紙は絵梨香ちゃんから出されたものではない、と考えるべきか。色気がなくて不満は残るけど」
田原の言葉に返した。
「お前がもし、見知らぬ女子から近況を知りたいですと言われたとして、快く近況を話すか」
「俺なら話すな。お知り合いになるチャンスじゃないか」
「そう考える男子がいるのなら、この手紙はそういう人に出すべきだろう。田中絵梨香なんて知らない俺に出してどうするんだよ」
「ということは、絵梨香ちゃんを陥れるための何者かによる犯行の可能性が視野に入るんだが。絵梨香ちゃんをよく思っていない何者か、か。探せば何名か見つかるだろうけど、問い詰める材料がないな」
「その手紙はどうなんだ。物証には違いないだろう」
「これは誰にでも書けるようなものだし、コピーして使っているってことは、他に何通も出している可能性が考えられる。そうなれば、他に同じ手紙をもらった人がいないかを探したほうが早いかもしれない。そうして手紙を受け取った人物の共通点を結べば、犯人も見つかるはずだ」
「手紙を受け取った人物を探せ、か。なかなか難しい問題だな。そもそも意味不明な手紙なのだから、読んでもすぐに捨てた人が多そうだし」
「なんのための手紙なのか。それがわかれば一気に突き崩せるだろうけど」
「誰が出したのか、ではなく、なんのために出したのか、か」
「そういうこと。それがわかれば誰が出したのかにも自然とたどり着くはずだ。そしておそらく田中さんがなんのために出したのかにつながらない以上、彼女からの手紙と考えるのはおかしいってこと」
「ゲーム実況の生配信者と中学生アイドルの熱愛っていうのを期待したんだけど、どうやら的外れなようだな」
「少なくとも
「靖樹も可哀想に。誰にハメられたんだろうな」
「それは他にも手紙をもらった人を探せばわかるはずだけど」
俺にも確たる自信があるわけではない。だが、なんのために手紙を出したのかを考えれば、アイドルが出したとはとても思えない。
いや、ゲーム実況を観ている人が出したとは思えない。なにか探りを入れているような印象は受ける。
となると、なにやら犯罪の臭いまで漂ってきそうで薄気味悪さすら感じた。
犯人はいったいなにが狙いなのだろうか。
手紙の受取人が俺と靖樹のふたりだけだとしたら、ゲーム実況の生配信で得た収入をかすめ取ろうまたは脅し取ろうとしている可能性も考えられる。
靖樹のように浮かれているとどんな目に遭うかわかったものではない。
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