Men Walk In The Night

6-1

 ディーンにはああ言ったものの、百パーセントの確信があったわけではなかった。というのも、あれから彼が電話に出なくなったからだ。留守番電話にすらならない。ノーラン氏に限って、事故に遭ったとか警察に逮捕アレストされたとは思えないから、なにかべつの理由があるのだろうけれど……。

 しかし、悪いほうの想像が次第に頭をもたげてきた。

 ディーンが学校に行っているあいだにペントハウスのある建物をつきとめて訪ねてみると、最上階の住人はもういないと言われたのがきっかけだった。

ノーラン氏ミスター・ノーランは私の教会に通われていたかたなのですが、どちらへ引っ越されたかご存知ありませんか?」

「すみませんが、神父さん」きちんとした身なりのドアマンは気の毒そうな表情をうかべた。「私たちもなにも聞いていないんです。急でしたしね。もしそのかたから連絡があったら、あなたが訪ねてこられたとお伝えしますよ」


 その夜のことだった。

「クリスあのさあ……」

 ディーンがスマートフォンを片手にリビングにやってきた。

「どうした?」

「え、いや、さっきレナから電話があったんだけどさあ、ワケのわかんないこと言うんだよ」

「わけのわからないこと?」

「うん。最初はさ、ふたりとも元気にしてるかってフツーの話だったんだけど、元気だよっていったら、ああそう、それならいいけど、神父さんには気をつけてって言ってねっていうんだ。なにに気をつけるんだよって聞いたんだけど……」ディーンは落ちつかなげに頭を掻いた。

「具体的に言わねえんだよ。なんか、ふたりがどうしてるのかなってふっと思ったら、神父さんのイメージに黒い影みたいなのが重なって見えたから、って」

「黒い影……」

「そうそう。んなこと言われたらイヤでも気になるだろ? だってレナはなんだっけ、ああそうだ、だし、あのエロオヤ……バロン・サムディの件もあったしさあ。だから、じゃあ俺はどうなんだって聞いたら、あんたは人狼ルー=ガルーなんだから平気でしょって、そりゃねえだろ。ひどいと思わねえ?」

 ディーンは唇を尖らせたが、すぐに、

「そうそれで、その黒い影が見えたから、今度はマリアおふくろさんが実際バロン・サムディをび出したんだって。で、やつがマリアさんに言ったのは……」以前のことを思い出したのか、ちょっと身を震わせる。「自分ワガハイじゃない、って。けど、すごく近しいにあるやつだから、困ったらいつでも吾輩を頼むといいぞ、悪いようにはしない、美しい司祭に伝えてくれ、ってさ」

 ディーンは怒りの発作に襲われたように勢いよく両腕を振り回した。

「――ったく、ジョーダンじゃねえ、死神の言うことなんて信じられるかよ! アイツとすげえ近いカンケイにあるやつっていったら、あのインケンな吸血鬼野郎のことに決まってるじゃねえか! なーにが“ワガハイを頼むといい”だよ、大体、てめえに頼む前に終わってるっつーの。言うのが遅えんだよ!」

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