3-4
「
その夜、ジェレミーがタラとホタテのフライを切り分けながら言った。
「まさか
やつは夢見心地でしゃべっている。ナイフを振り回すのはやめろ、危ないから。
「なんていうかた?」クリスが聞いた。
「あ、僕としたことがうっかりして、まだ名前を言ってませんでしたね。モーリス・セラフィン・リュカ神父です。ご存知ないですか?」
「私がここへ来て四年と少し……もうすぐ五年になると思うけど、ちょっと記憶にないな。どんなかただっけ?」
「僕もまだ数回しかお目にかかったことがないんですけどね。なんでも心臓かどこかが弱くて、しばらく入退院を繰り返されていたとかで。だからあんなに優秀なのに助任司祭でいるんでしょうけど――見た感じは五十代半ばくらいで、細身の長身で黒髪の……眼鏡をかけてますよ。ああそうだ、それがめずらしいことに、両
「そんな
「たしかにめずらしいけれど、遺伝子やなにかの関係で、人間でも左右の虹彩の色が異なることはあるよ」
その人の前で猫みたいとか言うんじゃないぞ、とクリスは言った。心配性だな。
「ええ、僕もはじめて見たときはちょっとびっくりしましたよ。眼鏡をかけているのはそのせいもあるかもしれませんね」
「たぶん、お会いしたことはないと思うよ。それだけ印象的ならさすがに忘れるはずはないだろうし」
「それじゃ今度カテドラルに来られたときにはぜひ。あなたのこともお話ししておきますから」
「そうだね」クリスはちょっぴりうつむいて、「……ちょうど、しばらく告解もしていなかったことだし」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます