第17話 いなくなったペットを見つけよう!

 アオハル仕掛人として投稿した、新たなアオハルチャレンジ。

 捜索願いが出されてるペットを見つけるという前代未聞のチャレンジ内容には、たくさんの意見が寄せられた。


【ペットを見つけるって、今回のチャレンジ難しくない?】

【いつもと毛並みが違う。けど良いかも。うちも前に飼ってた小鳥が逃げ出したことあったけど、探してくれるんなら助かる】

【調べてみたけど、隣町で行方不明になった犬がいるみたいだから、どこかその辺にいないか探してみる】

【俺の住んでるとこら辺では迷子のペットなんていなさそうだから、チャレンジ無理かも。皆、代わりに頑張ってくれー】


 やっぱり、多くのフォロワーさん達は困惑しているみたい。

 だけど呟きを見ると、やる気になっている人もいる。

 今回のチャレンジは、フォロワーさんの周辺の町で迷子になったペットがいないと、そもそもチャレンジするのが難しいという、厄介なもの。

 だからそれに対する不満意見もあったけど、チャレンジできないって事は、そもそも迷子のペットがいないってことだから、良いことなのかも。


 ただ今回のチャレンジ、間違いなく過去最高に難しい。

 だっていなくなったペットを見つけるのって、ちょっと探して見つかるほど、簡単じゃないもの。

 その証拠に、いつもなら1、2時間もふればチャレンジ達成しましたって投稿がくるのに、今回はお昼になっても、達成したという報告は一件も来なかった。


「やっぱり皆、苦戦しているみたいだね」


 昼休みの教室。私の机の横には安達くんが来ていて、二人でスマホを見ながらアオハルチャレンジの状況を確認していた。


「いなくなったペットを探しているっていう人は多いみたいだけど、やっぱりそう簡単じゃないか」

「でも、おかきの目撃情報はたくさん集まってきてるよね。やっぱりアオハルチャレンジで紹介されたおかげだね」


 安達くんが見てるのは、アオハルチャレンジにリンクで貼り付けている、おかきくんを探していますの呟き。

 さすがは流行りのアオハルチャレンジ。おかげでこの近所に住んでると思われるフォロワーさんから、どこどこで見た気がするだの、似たような猫を見かけただのと言った情報が、たくさん届いたの。

 昨日私や安達くんが普通に呟いた時にはほとんど反応がなかったのに、アオハルチャレンジって凄い。


「それにしても驚いたよ。アオハルチャレンジを見たら、おかきの写真が投稿されているんだもの。まさかおかきを探すのを、アオハルチャレンジにしちゃうだなんて。天宮さん、発想が飛び抜けてるなあ」

「う、うん。私もぶっ飛んだアイディアだとは思ったけど、ダメ元でお題募集に応募したの。けど、採用されて良かったー」


 まあ本当は応募したんじゃなくて、私がアオハル仕掛人なんだから、チャレンジ内容は自由に設定できるんだけどね。

 けど正体は隠しているから、安達くんには『トモシビ』アカウントを使ってお題募集に応募した事にしている。

 お題募集をしておいて良かったー。これなら正体バレが防げるものね。

 隠し事をしながら話すのはドキドキだけど、幸い疑われてはいないみたい。


「けど、ちゃんと見つかるかなあ? 一応情報は集まってきてるけど、本当かどうか分からないものも多いし。こうしてる間にも、移動してるかもしれないし」


 せっかく目撃情報まであるのに、生憎私達は中学生。学校をサボるわけにもいかないから、すぐに探しにいけないのがもどかしいよ。

 アオハルチャレンジのおかげでちょっとは希望が増えたけど、キリエちゃんから見つかるわけ無いって言われたのも、やっぱりショックだったし。

 だけどモヤモヤしていると、不意に安達くんの手が伸びてきて、ぐにっと頬を引っ張った。


「ひゃっ!? あ、安達きゅんにゃにを?」


 頬を引っ張られているせいで、上手く喋る事ができない。

 て言うか、今私、絶対変顔になってるよね? それを安達くんに見られてるって思うと恥ずかしくて慌てたけど、安達くんは諭すように言ってくる。


「不安になるような事は言わない。焦る気持ちも分かるけどさ。やれるだけの事はやってるんだから、どっしり構えておかなきゃ。放課後、おかきを探しに行くんでしょ。なのに今からそれだと気疲れして、体力なくなっちゃうよ」


 心配する私とは反対に、安達くんは落ち着かせるように笑顔を向けてきて。それを見てると、ドキドキしてくる。

 あと、まずは手を放してくれると助かるんだけど。


「わきゃった、わきゃったから手をはにゃして」

「おっと、ごめん」

「やっと戻った……もう、女の子のほっぺを何だと思ってるのさ」


 両頬を頬を手で押さえながら、表情を整える。

 さっきまで変顔を見られていたって思うと、恥ずかしいよ。


「ごめんごめん。けど良いじゃん。さっきの顔、可愛かったよ」

「ふえっ? も、もう。何言ってるの。安達くんのバカー!」

「えー、誉めたのに何で? ごめん、謝るから許して」


 今度は安達くんが慌てる。だけど私は悪態をつきながらも、内心彼に感謝していた。だっておかげで、元気が出たんだもの。

 怒ったふりをしながら。オロオロする彼を見て、内心キュンキュンしてる。

 いきなりほっぺを引っ張っぱるのはどうかと思うけど、やっぱり安達くんの事好きだなあ。


 おかげで不安にならずに和むことができて、午後の授業もしっかり受けることができた。


 そして捜索願いの呟きに、【それっぽい猫を見つけました】って返信が来たのは、放課後の事だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る