第15話 おかきくんがいなくなった!?
アオハルチャレンジ・卒アルを見せ合うを完了させた後、私達はそれぞれ、ツブヤイターに写真を投稿した。
そして調べてみると、今回もたくさんの人がチャレンジに参加してくれていて、大きな賑わいを見せている。
そして賑わっているのは、お題募集の方も同じ。【河川敷でダンスを踊る】や、【折り紙を百体折る】といったお題が集まってきて、次はどれを採用するか迷っちゃうなー。
低迷していたアオハルチャレンジだったけど、一気に復活だね。
だけどそれでも、毎日更新するってわけじゃなくて。一夜明けた次の日、今日はアオハルチャレンジの更新はお休み。
新しいお題を出すにしても、ある程度間をおいた方が、多くの人がチャレンジを成功させられるしね。
その代わり今日は学校が終わったら、フミ子さんの家に行くの。
この前借りた傘を返さなくちゃいけないし、それに現像に出してた安達くんの写真も出来上がったから、届けに行くの。
授業が終わって放課後になると、私達はすぐに学校を出て。雨の中傘をさしながら、フミ子さんの家へと向かった。
「フミ子さん、喜んでくれるかな」
「絶対喜ぶって。おかきくん、可愛く撮れてるもの」
安達くんと二人、話をしながら並んで歩く。
安達くんの撮った写真は学校で見せてもらったけど、おかきくんが可愛く写っていたもの。
私達はワクワクさせながら、フミ子さんの家に行くと、インターホンを押す。
するとすぐに玄関の戸が開いて、フミ子さんが顔を出した。
「あら、あなた達……」
「こんにちは。おかきくんの写真ができたので、届けに来ました」
笑いながら告げる安達くん。
するとフミ子さんは……あれ? 何だかあまり喜んでいないような……。
「そう……ありがとう、上がってちょうだい」
「はい。お邪魔しまーす」
安達くんはさしていた傘を閉じて、招かれるまま家に入って行くけど。私はちょっと、引っ掛かるものを感じた。
なんかフミ子さん、元気がないような気がするけど、気のせいかな?。
写真を持ってきたって言った時、笑ってなかったような気がする。いや、一応笑ってくれてはいたんだけど、無理をしていると言うか。
「どうしたの天宮さん。入らないの?」
「あ、ごめん。今行く」
ちょっとモヤッとしたけど、気のせいかな。
考えるのを止めて、安達くんに続いて家の中へと入って行く。
前と同じようにお茶の間に通されて、フミ子さんがお茶を運んでくと、安達くんはカバンから現像した写真を取り出した。
「はいこれ。おかきの写真です」
「ありがとね……ふふっ、おかきかわいい」
丸くなってるおかきくんや、ゴロンと横になっているおかきくんと、愛らしい姿がたくさん写っていて、フミ子さんもそれを見て笑ってくれてるけど……。
(どうしてかな? やっぱりどこか、無理をしているみたいに見えるよ)
もちろん私の勘違いかもしれないけど……そうだ、安達くんは気づいているかな?
隣に座る安達くんに、そっも視線を向けてみると。
「いやー、やっぱり被写体が良かったおかげか、自分でもよく撮れてるって思うんですよ。ほら、このあくびをしてるやつなんて特に。おかき、狙ってあくびしてくれたのかなー」
フミ子さんの様子なんて全く気づいていないみたいで、笑いながら写真について語っていた。
ダメだー! 安達くん、全然気づいてないやー!
安達くんはたまに、空気を読んだ上で流れに逆らうような行動をする事があるけど、きっと今回は素で気づいてないよ。
フミ子さんの笑顔がぎこちないって、分からないかなー?
たまらなくなって、肘でコツンとつついてみたけど、「え、なに?」ってキョトンとした顔をされた。
もぉー、頼りにならないんだからー!
しょうがない、ここは私がしっかりしないと。
「そ、そういえば。おかきくんは今はとこに。お昼寝中? それとも、お散歩に出掛けてるとか?」
フミ子さんの様子はとっても気になったけど、いきなり「何かあったんですか?」とも聞きにくくて、とりあえず話を変えてみたけど。途端に、フミ子さんの顔がゆがんだ。
「ええと、それがね……実はおかき。一昨日からうちに帰ってないの」
「えっ?」
「でも心配しないで。今までも、散歩が長い時はあったから。きっと今回は、特に長いだけよ」
なんて言ってるけど、フミ子さんの声には元気がない。
それにたしか一昨日の夜から雨が降っていて、今も止んでいない。こんな中出掛けたまま帰って来ないって、大丈夫なの?
安達くんもさすがに空気を察して、私達は顔を見合わせる。
「それで、手掛かりはないんですか? おかきくんが普段行きそうな場所とかに、いませんか?」
「それが、心当たりは見て回ったんだけど、いなくて。近所の人達にも聞いてみたんだけど、知らないみたい。ああ、でも本当に大丈夫だから」
そうは言うけど、やっぱり心配だよ。
だいたいフミ子さんだってそう思ってるから、探してまわったんだろうし。
元気の無かった理由がよーく分かった。おかきくんがいなくなったんだもの。そりゃあ不安にもなるよね。
どうしよう。私達も何か、力になれたらいいんだけど……。
すると安達くんが、思い付いたように口を開いた。
「そうだ。フミ子さん、おかきの写真、ツブヤイターに投稿してもいいですか?
「え? ええ、別に構わないけど」
「安達くん、いったい何をするつもりなの?」
「迷い猫を探していますって呟いて、写真を載せて、情報を募るんだよ。もしかしたら、見かけた人が教えてくれるかもしれない。幸いおかきの写真は、スマホでも撮ってあるしね」
そういえば迷子になった犬や猫、小鳥を探していますって言う呟きを、度々見たことがある。私達もそれをするんだね。
安達くん、ナイスアイディア。
よーし、それなら私も投稿しよう。
だけどスマホを操作してすぐ、指を止めた。
「あっ……私のアカウント、フォロワー数少ないんだった」
前にキリエちゃん達の心無い書き込みに嫌気が差して、アカウントを削除しちゃったから。
アオハルチャレンジをするにあたって新しくアカウントを作り直したけど、縁が切れちゃってる人は少なくない。
しかも新アカウントでは、前みたいに友達をどんどんフォローしているわけじゃないから、フォローしてる人もフォロワーも少ないんだよね。
ああーっ、こんな事なら削除するんじゃなかったー!
アオハル仕掛人のアカウントならフォロワーさんもたくさんいるけど、こっちでいきなり猫探しの呟きなんてしたら、変だよね。
しかもおかきくんの写真なんて投稿したら、さすがに安達くんに正体がバレるかもしれないし。
「ごめん。私じゃあんまり、役に立ちそうにないや」
「そんな事ないって。何もしないよりずっと良いよ。とにかく、なるべく多く拡散させて、なるべくたくさんの人に見てもらおう」
安達くんに言われて、ちょっと気持ちが楽になった。
そうだね。小さくても、まずはできることから始めないと……あ、そうだ!
「そういえばデジカメで撮った写真もあるから、あれをプリントアウトして、探していますってポスターを作ってもいいかも」
「あ、それいいね。学校で配ったら、何か情報が集まるかも」
写真をプリントして簡単な文章を添えるだけなら、そう難しくは無いはず。
今から学校に戻ってお願いしたら、許可してくれるかな?
「あなた達、いいの? おかきのために、そこまでしてくれなくても……」
「気にしないでください。俺達が好きでやってるだけですから」
「私達だって、おかきくんの事は大事ですから。協力させてください」
「……ありがとう。おかきもきっと喜ぶわ」
フミ子さんは感極まったのか、声が震えている。
とにかく、やる事が決まったら即行動だよ。
私達は学校に向かうべく、フミ子さんの後にした。
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