第32話 昇格と配信機能
「と、ルーシーさんが言っているので、EXランク昇格で~す」
「どこがどうなったらEXランク何ですか!?」
10分前、ギルド長に呼び出され、そのままいろいろとあったことを説明していった。しかし、洞窟の中に入ったくらいのところからルーシーが急に説明を交代してきた。別に俺は何も文句はないのだが、話を聞くギルド長は徐々に顔を顰めていった。瘴気と遭遇した。人型瘴気魔とご主人様がタイマンをした。序盤は五分五分だった。瘴気に認められた。この5つがギルド長が顔を顰めた原因。いや、実際負けてるんだよ?と口をはさむとルーナに「シリルちょっと黙って」と怒られた。解せぬ。洞窟を出た時の話になった。俺がゴブリンの群れを瞬殺した話は別にいいみたいな顔をして聞いていたギルド長だが、俺がエリートドラゴンを2体、5分もしないで殺したという話をするとギルド長はもうどっちかっていうと恐怖みたいな顔をしだした。こいつ人間?みたいな目をルーナからもむけられた。翼が生えたとかその他の話をし終わった後、現在に至る。
「だってねぇ、そこまで強いって知らなかったので」
「知ってたらもともとEXランクにしてるつもりだったんですか!?」
「だって、瘴気を取り込んだ体は今ステータスが大幅上昇してるんですよね?」
「まぁ、そうですけど」
「そんなことをする前に、瘴気と拮抗した戦いを行えたんですよね?」
「だから瘴気がなんなんですか?」
気になること、瘴気がどうのこうの。なんか瘴気の話を人にするたびに白い眼をされる。正気に負けたという事実は変わらないのに勝手に過小評価されていると言われたら誰だってびっくりするもんだ。俺は、瘴気は何かという質問をする。......そんなさ、3人でため息一緒につくことないじゃん。そんなに俺常識はずれてます?
「今、この世に登録されているEXランク魔物は全部で8体」
「それはどういう意図ですか?」
「瘴気、邪念、クラーケン、フェンリル、九尾、鳳凰、神龍、そして死神」
「結構いますね...まさか全部討伐しろと?」
「俺多分その前に君に殺されるから安心して、自ら命を落とすようなことはしないから。話を戻すけど、この中で強い順に並び変えると死神、瘴気、邪念、神龍、クラーケン、鳳凰、九尾、フェンリルとなる。死神なんて、今まで向かわせたEXランクの冒険者ですら手に負えなかった。瘴気も邪念もだ。神龍は1度だけだが討伐記録が残っている。クラーケン3回、鳳凰4回、九尾は6回、フェンリルは8回」
「だからどういうこと?」
「はぁ、ほんっとに鈍いですね。これはルーナさんもルーシーさんも大変ですね」
「「大変です」」
おいおい、今大事な話しているのにそうやってボケないでくれよ。え?ボケてない?何、ほんとに俺のこと鈍いと思ってる?なんか俺変なことしたか?
「つまりです、今まで向かわせたEXランクの冒険者の中で瘴気に勝てた冒険者はいませんでした。しかし、今あなたは生きています。今までの冒険者は瘴気と遭遇した瞬間に死んでいたのに、あなたは拮抗した戦いをした。そして、敗北したけれどあなたは生きている。瘴気はあなたの強さを認め、あなたを器として認めた。これは、偉業なんです」
「えっと、あんまりピンと来ないんですが」
「もっとわかりやすくしましょう、鈍感なあ・な・たでもわかりやすく」
「そこ強調しなくても...」
「誰もできたことがないことを、あなたが行ったんです」
くそぅ、これでもあんまりピンとこない。つまり?俺が戦った瘴気は、本当はめちゃくちゃ強くて、誰もが倒せない魔物に俺は認められたってことでOK?いいね?その解釈で行くよ?
「だから、俺はEXランク?」
「そうです、もはや決定権はありません。このことはギルド全体に伝わります。あなたがこの世で1番強い冒険者だと」
俺は足を組み、手を額に当てた。はぁ、とため息をつくと、さっきまで流し込まれた常識が頭の中でうまく処理が開始される。さっきまではいろいろと詰め込みすぎでうまく入っていかなかったが、1度冷静になるとじゃんじゃんギルド長の言葉が流れ込んでいく。うん、すべてを理解した。
「あなたは、ものすごくつらい依頼を任せられるかもしれない。もしかしたら、その報酬が見合っていないものが出るかもしれない。そこで、より稼げる方法をあなたに教えようと思います」
「それはもうぜひぜひ」
「シリル、それは少しみっともない」
「ご主人様お金のことになると真剣になりますから」
ルーシーの失礼な言葉を完全に無視し、身を乗り出してお金のことについて知りに行く。ギルド長はアハハと言いながらも割と乗り気な顔をしている。すると、横からギルド長の専属秘書?みたいな人がある物体を机に置いた。直方体の物体に4つの棒がついており、その棒の先端にはファンがついている。もう1つ、平べったい板みたいなもの。これは見たことある。1回だけ国で発見したことがある。ゴブリンの群れの倉庫みたいなところに乱雑に置かれていた。使えるか試したこともあるが、使えなかったためとってすらいない。
「君たちは、1番の先進国として、1番の文明国として有名なリセス王国を知っていますか?」
「トダコリ大土地ですよね?」
「その国で発明されたものの中に、このドローンとタブレットというものがある。このドローンを使って、全世界に今の自分を見せることができる、これを配信という。このドローンはカメラという俺もよくわからん機能を搭載していて、このカメラというので配信を開始することができる」
「正直、意味が分からないんですが」
「ですよね、このタブレットというもので、ほかの人が配信しているんです。見てみましょうか」
そういうと、ギルド長はタブレットをいじり始めた。ギルド長は小声で「これでいいか」というとタブレットを俺たちに見せてきた。タブレットには、1人の男性が変な魔物と戦っている映像が流れていた。男性の方が優勢で、徐々に追い詰めている。
「これ、現在進行形」
「え」
「現在進行形をこうやって見れるようにするのがこのドローンの役割、配信だ。この配信というのは、登録というものがある。あ、この人面白いなと思ったら登録する。この登録者数が増えれば増えるほどお金がもらえるようになっていくんだ。これあげるから、動画配信して稼いでください」
「いいんですか?」
「お金もらってもっと難しい討伐依頼をこなせてもらったら万々歳なので」
「結局ですね」
配信、ねぇ。気が向いたらやってみようかな。
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