第31話 生存報告とスキルの話

「おい!あそこになんかいるぞ!」


俺は翼をはばたかせながら、ナルアリ王国の真上を飛んでいた。さっき気付いたことなのだが上から入国すればいろいろとめんどい持ち物検査とかしなくていい。見つかってされる可能性もあるが、格段とこっちの方が楽である。俺はそんなことを思いながらも、冒険者ギルド上空まで移動。まだまだ飛べるが、ここで降りる方が体力消費もしない。飛べるからと言って飛んでいく場所ないけどな。俺はルーナたちになるべく負担をかけないようにゆっくり降りていく。翼ごと消して落ちたほうが早いが、耐えきれる高さじゃないからな。


「うっしょ」

「上空、楽しかった」

「ご主人様ぁもうあんな高いところに行きたくありませんよぉ」

「いい経験になったか?」

「なる訳ないですよ」


翼を消して、全員を地面にゆっくりおろす。ルーナは楽しかったと顔を綻ばせながら言っているが、ルーシーはあんまり高いところが得意じゃないのか所々弱々しい言葉を言ってきた。涙目ちょっとかわいいと思ったのはなるべく内緒にしといてほしい。クラウドさんがほかのパーティーメンバーに質問を投げかけているがよさそうな回答は得ていないようだ。このスキル嫌だったか?そんなことを考えていると、やっぱ飛んできたからか注目が集まる。周りにいる冒険者や子供たち、道行く男女問わず視線が俺に向かっている。


「なぁ、あれってここに来た新しい冒険者だったよな?」

「確かシリルだったよな?」

「今翼生えていなかったか?」

「あの兄ちゃんかっけぇ~!」


そんな憧れな視線を向けないでくれ。俺みたいな存在になってもあんまり徳はないぞ。何なら死にかけまくるぞ、それでいいのか少年。俺はなるべき気にしないように集中しながらギルドの扉を開いた。1番最初に俺の視線を向けたのはお世話になった受付人。俺と目が合うとアワアワしだし、俺に駆け寄ってきた。


「ご、ご無事だったんですか!?」

「はい、ギリギリでしたけど」

「そ、そうでしたか。ぎ、ギルドちょーー!ギルドちょーー!」


彼女は顔をハッとさせてからギルド長と叫んだ。必死そうに何回も何回も叫んでいると、奥から目をこっすている眠そうなギルド長が出てきた。「んに~」と何がしっかり言えていない。何ならふぁぁと欠伸をしている。あ、絶対に寝てたなこいつ。


「あ!『不死身アンデット狂戦士バーサーカー』!」

「その名を叫ばないでください!」

「ごめんごめん、言わずにはいられなくてねぇ」

「何やってんすか」

「そんなことより、生きていてくれて助かった。まだまだ君に任せたい依頼が何個もあるからね」

「後の文がすっごくいらないです」


俺を見るや否や俺に指をさして大声を上げる。いいけど、異名だけはやめてほしいなぁ。少しいじり気味なギルド長、俺の目の前にやってくると、働いてくれと言わんばかりの本心が俺の耳に届いてきた。思うのは自由だけど、言わないでくれよ。働かないぞ、いいのか、働かなくなるぞ!


「まぁ、とりあえず生きてることはギルド協会に伝えとく」

「勝手に殺さないでくださいね」

「今持ってる?」

「何をですか?」

「討伐依頼受けたでしょ」

「グッ....」


核心を突かれた。確かに俺はハイドラゴンの討伐依頼を受けた。生きてるだけでいいじゃん!いやまぁ確かにDOUBLEダブルSシグマランクだったけど。なんならエリートドラゴン討伐してるから。心の中で講義を申し立てていると、ルーシーが一歩前に出た。


「これで、証明できないでしょうか」

「ちょっ!」


ルーシーは俺の手を持ち上げ、一部の服を引っ張った。俺は何をしたいのかわからなかったが、服を強調している部分を見ると、何を申したいのかがよく分かった。俺の右腕にはエリートドラゴンの脳みそのカスが、そしてルーシーが強調してる服にはエリードラゴンのうろこらしきものがあった。まぁ、最初会った時から俺血まみれだったけどな。


「これは、エリートドラゴンのうろこ?」

「はい、こちらは戦闘時にご主人様についたものだと思われます。ちなみにこちらについている脳みそはエリートドラゴンのものです。もし気になるのだったら取って調べても構いませんし研究につなげてもらっても構いません」

「ほう?」


ギルド長は首をかしげて俺の手についている脳みそをじっくり観察。すると、脳みそを取ってもう眼球に着くんじゃないかと思うレベルまで近づけた。ことあるごとに脳みそをまわし、全体を見渡している。ギルド長は徐々に顔を輝かせていき、俺に顔を向けてきた。


「その手についている脳みそとうろこを私にくれませんか?」

「え?」

「エリートドラゴンを討伐した人なんて少ないですし、何なら脳みそを持ってきた人なんていません。大体のエリートドラゴン討伐者は原型がないくらいまでにドラゴンぐっちゃぐちゃにしてますから。お願いします!」

「え、えぇ?」


どうしようか、正直あげてもいいんだが俺にもメリットが欲しいんだよなぁ。なんかいい方法ないか?頭をひねっても、俺の脳みそは動いてくれない。何で戦闘中はあんなにも脳みそ活性化するのにこういうときだけ俺は役立たずになるんだよ。俺は眉間にしわを寄せて数十秒考えると、ルーナが沈黙を破った。


「私に案がある」

「ルーナから?」

「うん、その脳みそはあげる。その分、今回の依頼を達成ということにしてほしい。あとできれば報酬も増やしてほしい」

「もちろんです!」


ルーナはもちろんと即答するギルド長の声と聴いて、さりげなく右手でガッツポーズをした。あ、目合った。いや、そんなに顔をそむけなくても耳赤いから恥ずかしいの丸わかりですよ。ギルド長は俺の手についている脳みそとうろこを生き生きと取りだした。.....生き生きとすることじゃない気がするの俺だけだろうか?


「すいません、いろいろと考えないといけないので、報酬などはもう少しお待ちください」

「大丈夫です、俺もルーナと話したいことがあるので」


取り終わったのか、少年のような笑顔を作りながら報酬は後でとギルド長は言った。俺もルーナと話したいことがあるから別にいいと伝え、そのままギルド長は戻っていった。俺もルーナとルーシーを連れて椅子に座る。視線すっげぇ感じるけど、気にしないが吉気にしないが吉。


「何?話したいことって」

「ちょっとこれを見てほしい」


そういい、俺はステータスを開きそのままルーナに見せる。ルーナは....固まった。まぁそりゃそうだ。旅同業者のステータスが耐久力以外1万越え、ユニークスキルを持ちになっている。驚かないわけがない、固まらないわけがない。すると、ルーシーが俺より先に口を開いた。


「先ほど、ご主人様を認めた瘴気が、ご主人様の体の中に侵入した結果、このユニークスキルを獲得するまでに至りました」

「さっき使ってるところちょっとだけ見たけど、あれが瘴気?」

「はい」

「ルーシー、そんな暴露しなくても俺から言うよ?」


少し悲しい顔をしているルーナ。少しうつむいた後に、ルーナは俺と目を合わせてきた。どうしたんだと思いながら待つと、ルーナはため息をついた。しかもクッソ長い奴。はぁぁぁぁぁぁとワンチャン死ぬんじゃないか?と不思議に思うレベルである。


「これは、世間的に大丈夫?」

「わからないです、もしかしたら危険かと」

「ちょっとまって、そんな高度な話しないで。何の話か俺分からないんですよ」

「瘴気はEXランク認定されている魔物の中でもトップクラス、それと張り合っている邪念もトップに君臨している。そんな魔物に認められたんでしょ?」

「え、瘴気ってそんなにすごいのか?」

「ちなみに、どれくらい応戦してた?」

「完全とは言えませんが、大きな攻撃は防ぎきっていました。小さな斬撃は掠り程度で当たっていましたが」

「シリル、EXランク昇格おめでとう」

「だから何のお話!?」


この会話文、俺は理解できるものはなかった。しかし、ギルド長との会話で、この言葉の意味を1から100まで思い知ることになる....

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