第29話 脱出後の戦闘は激し目に

「久しぶりの日光は気持ちいな」

「そうですね」


俺が瘴気魔化の後の痛みが治まったとき、ルーシーがそろそろこの洞窟を出ないかと言ってきた。確かに、ここに来たのはエリートドラゴンから逃げるため。こんなに長い間ドラゴンが待っているわけがない。あれ、今更だけど以来のハイドラゴンの頭ってとってない気が...途中に狩ればいいか。そんなことを思いながらも俺は瘴気との戦闘場を後にして出口に急いだ。その場は変わっておらず、俺らが話したまま残っていた。岩をどけてみると、さっきまで雨が降っていたのか少しぐちょぐちょの雪が一面に広がっていた。短時間で相当な量が降ったのだろう。今も降っているが少ない。久しぶりに見る日光に興奮しながら、俺らは森を歩きだした。


「ご主人様」

「どうした」

「西方向にキングゴブリンの群れがあります、どうしますか?」

「狩るか、せっかくステータスが上がったんだ。試す価値はあるだろ」


ルーシーから近くにゴブリンの群れがいるという報告。俺の感覚でもさすがに『自然看破』には勝てない。上がったステータスの感覚をつかむべく俺はゴブリンの群れへ向かう。ルーシーの言う通りゴブリンの群れ。16体で地面に散らばっている武器は様々だ。短剣に大剣に銃に弓、爆薬などもある。俺は瘴気武器を作ってみる。普通の剣だ、形は。刀身が黒く、禍々しい雰囲気を醸し出している。俺は鑑定をした。


【瘴気の剣】

ランク・測定不能

切りつけた相手は体力が抜かれ、徐々に体に力が入らなくなる。とても軽量で扱いがしやすく、使用者の想像によって刀身が伸びたり縮んだりもする。強さも未知数。


物凄い端的な説明だが、ランクが強さを物語っている。俺は右手で剣を握りしめて、左腕でクナイを持つ。取り合えず一番強そうなボス的なキングゴブリンにクナイを投げつける。狙い通りに動いていくクナイはボスキングゴブリンの頭を貫き、後ろの気にぶつかった後に俺の手元に戻ってきた。ゴブリンは徐々に体の力が抜けていき膝から崩れ落ちていきながら頭がドスッと地面に打ち付けた。もちろんそれを見たゴブリンはクナイが戻った方向に視線を向けた。しかし、そこにはもう俺はいない。


「ガァァァァァァ!」

「よし、2匹目」


俺はルーシーを抱えて群れの真後ろへ移動。そのままルーシーを木の上に預け2匹目に向けて飛び込んだ。心臓を穿かれてたゴブリンは叫びながらそのまま頭を前へ倒して絶命した。残りの14体のゴブリンはすぐさま武器を取り俺に襲い掛かってきた。俺は1体1体冷静に一突きで殺していく。何回か一撃で殺せなかったこともあるが瘴気の剣のおかげで掠りだけでもした攻撃が徐々に重症へと変わっていく。俺はダメージを食らうことなく戦闘を終えた。感想としては、やっぱり体が軽い。剣を思いっきしふって、斬撃が出たくらいに成長した。....いやこれは成長というのだろうか。まぁ剣だけでの中距離での戦闘が可能となった。あとやっぱりステータス通り体力がえぐい。割とつかれる殺し方を何回かしたが疲れる感覚は1ミリもない。


「どうでしたか、成長の感覚」

「相当成長したのが分かるな。体力が相当多いとやっぱり疲れも感じない。ほんとに疲れるときは瘴気魔法とか毒魔法を長時間使ってないといけないな」

「そうですか。~っ!南と南西からエリートドラゴン!こっちに向かってきています」

「今の戦闘音で寄ってきたのか、いいな。借りを返す時が来た」


成長の感覚を大雑把だがルーシーに伝えると、ルーシーが焦った声でエリートドラゴンの存在を叫んだ。俺はすぐさまさっき俺らを襲ったエリートドラゴンだと解釈して瘴気武器を作成。ガントレットが俺の両腕にはまり込む。大きくごついガントレットではなく、コンパクトで、使用者の技術力を大いに使うガントレット。力よく握りしめると紫色の光俺の体力がより吸われていく。このタイミングで、俺の頭上にエリートドラゴン2体がこんにちはしてきた。やはり、さっきのエリートドラゴンだ。俺を見るや否ややっと見つけたという顔を見せ翼を開き大きく叫んで見せてきた。俺はニヤァと口角を上げて力よく飛びあがった。俺の体はエリートドラゴンの顔に到達する。食う気満々なのか口を開け寄ってくる。もちろんそんな潔く食われるわけなく、鼻を思っきし殴りつけた。ドオォォォンという響きに乗りエリートドラゴンはグォォォと叫ぶ。2体目は俺向けて炎のブレスを吐いてくるが俺は下に降下してブレスを除ける。こいつらには痛い目を負わされたからな。それ相応に見合った絶望を見せる。俺は『瘴気魔化』を発動。俺についているガントレットはより強化し黒光るようになった。エリートドラゴンは瘴気魔化した俺の姿を見ても違和感を感じただけで何も面構えは変わっていない。食う気満々の顔をしている。その顔が、妙にむしゃくしゃするんだよなぁ!


「死ねぇ!」


俺は今までにない叫び声を不謹慎な言葉に乗せていった。俺は浮遊魔法を発動してドラゴンの首元を全力でストレート。もちろんそれでは足らない。俺はもう一度殴り、顎にアッパーをかましてやった。突然の出来事すぎるためもう1体は唖然としていたが正気に戻ると俺に魔法を放ってきた。風魔法、風の斬撃が俺の周囲を横切るが当たるわけがなく、俺は瘴気弾を目に向けてはなった。俺が殴ったドラゴンは一撃一撃が重すぎたのかそのまま翼を使って飛ぶことができなくなり地面に落下。瘴気を目に放たれたドラゴンは宮中で叫びまわっている。俺はそんな叫んでいる口の中に毒魔法でガスグレネードを突っ込む。入った瞬間にそのまま起爆。口の中で広がるガスは叫ぶときの口呼吸で一気に吸い込み上げる。すると、ドラゴンの動きが止まりそのまま落ちていった。俺も浮遊魔法を解除して下に落ちる。下には俺の分身もいる。2体のドラゴンはダメージを与えたが生きている。


「分身、お前はこっちのやつを殺せ。殺し方は問わんが、あまり激しくないないものを頼む」


俺は分身に毒に侵された方のドラゴンを殺めろと命令。それを素直に従った分身はすぐに向かっていった。俺は、こっちを殺す。俺はまだ立てるがギリギリなドラゴンを目の前にして、頭の頂点にトップスピードで移動した。そのまま頭を思いっきり殴りつけると、今度は叫び声をあげずに気絶していった。でも、気絶だけで殺せてはいない。俺は倒れこんだドラゴンの頭に向けて何度も何度も殴りつける。血しぶきが俺の服に付着しようが、頭がい骨が粉砕しようが、俺の体が血まみれになろうが、脳みそまでもぐちゃぐちゃになろうが、俺の腕に脳のかすがこびりつこうが殴り続けた。割と、快感があるもんだ。気づけば俺の目の前には貫通した頭。腕は血塗れじゃない、布が限界まで血を吸っている。横を見ると、瘴気を徐々に体に入れて行っている分身の姿。もうすでに死んでいるが、やめろと言っていないからやめてないのだろう。俺はそのまま瘴気魔化を解除した。俺に痛みが襲ってくるが、さっき洞窟で経験したほどの痛みではないし、先ほどの快感がまだ体に残っているため、普通に問題ない。俺はルーシーの方に視界を向ける。もっと、ルーシーの奥には....ルーナと数名の冒険者が見える。

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