第27話 忠誠(ルーシー視点)
私の目の前で、奴隷商たちが話し合いをしている。私をこれから奴隷としてどうするか。使うのか、高値で売るのか、それとも殺すのか。そんな会話が檻越しに聞こえてくる。何人もの奴隷商人が私が欲しいといい私を捕まえた商人がそれを抑え込んでいる。結局、私は3日後のセリに出されることになった。2日、いろいろな奴隷が保管されている場に監禁され、1日一食のパンだけの生活を味わった。町の生活の時は、毎日たらふく食べていた私にとっては苦痛であった。冷たく、硬い。優しさが込められている気がしない。まぁ、捕まったものの末路だから仕方ない。私はそのパンを3つに分けて朝昼晩と分けて食事をした。
セリ当日、私は眠れることがなくずっと座り込み起きていた。絶望だった。私はついに買われるのかと思い込むと震えが止まらなかった。この首輪で逃げ出すこともできない。檻の中で絶望に暮れていると、私を捕まえた奴隷商人が前に来た。
「セリだ、こい。なるべく高く売ってやるから安心しろ。まぁ安かったらお前の価値はそれほどということだろうけどな」
情がない、冷血な声が私の鼓膜と脳と直で刺激を突き付けてくる。でも、私はやり返すことはできない。言葉の通り私はあけられた檻から出て、セリのための檻に入り込む。入り込んですぐ、私の檻はどんどん移動していく。そして、私のセリ場のステージへと到達した。スポットライトは私に全部向き、買い手たちは大声で喜びだした。すると、私以外にもスポットライトが向き、ついにセリが開始した。
「さぁ!エルフ奴隷のセリを開始いたします!最初は金貨1枚からです」
司会台を大きく叩き、開始という合図を大きく見せている。最初は金貨1枚、私が無意識になっている間にどんどん額は跳ね上がる。金貨2枚、3に4、一気に6。私の価値は上がっていくばかりなのに、全くうれしくない。ここら辺で、会場の入り口にわずかな光がさしかかった。でも、もうすでに生きる気力がなかった私はそんな光を気にする暇はなかった。でも、この光が私の気力になったのはあったかもしれない。
気づけば、私は落札されていた。いくらかはわからない。意識をセリに向けた瞬間に、人たちはぞろぞろと帰っていった。でも、そんな中でも一番出口に近い2人組は出口に向かうこともなく、突っ立っている。たぶん、あの人たちが買い手なのだろう。その2人の目は、優しさにあふれており今にも包まれそうな見つめ方だった。私は、少しだけ希望を持てた気がする。
「失礼します」
「では、こちらに座ってもらっても」
「はい」
私の買い手だった2人組、ソファに座り奴隷商とは会話をし始めた。会話の内容からすると、私は相当な額で買い取られたと商人が言っている。買い手、男の子の方はエルフの命は大金貨じゃ足りないといった。彼は、私を選んだのか私の種族を選んだのかわからない。エルフという種族にあこがれを持って買った場合は、こんなにやさしい見た目でも恐怖心がふつふつを湧き上がってくる。でも、所々に私を優しい目で見てくる。こんな優しい人がエルフと異種族に惚れたとは思えない。そんなことを考えていると彼は購入手続きに署名をしていた。
「それでは購入代金である白金貨5枚を徴収します」
「すいません、黒金貨1枚でお願いします」
「毎度ありがとうございます。それでは白金貨5枚のお釣りです」
「ありがとうございます」
白金貨5枚、5枚!?そんな値段が商人の口から出た時、私は目を丸くした。白金貨5枚は簡単に手が出せるものではない。そんな値段で、彼は私を買ったのだろうか。しかし、彼は白金貨を出すのではなく、黒金貨を出した。もしかしたら、彼はどこかのお偉いさんなのかもしれない。思考をまわしていると、先ほど聞いた冷血な声がおりいっぱいに響きだした。
「ほら、早く出ろ」
そんな短い文字なのに、私の心臓をキュっと締め付けるような怖い言葉。目はごみを見るような、低くドスが聞いた声。そんな声を聴いて、私は硬直してしまった。すると、私が出るのが遅かったのか。商人が怒鳴り声をあげた。
「おせぇよ!早く出ろ!主人が待ってんだぞ!」
思った以上の怒声により、私はビクッと体を身震いさせた。すると、買い手の方の瞳に合った光が消えた。それを理解したとたん、さっきまでとは打って変わっての優しい声ではなく、怒りに身を任せて低い声が部屋中に響いた。このエルフのは俺のだと、手を出したら容赦しない、簡潔にまとめるとこんな感じ。私は、この人の奴隷になると考えるとまた少し恐怖を覚えた。すると、彼は檻に近づいてきた私からしたら出口、その出口で手を差し伸べて彼はシリルの名乗った。
「さ、表通り行こう。えっと」
「ルーシーって言います」
「ルーシーね、これからよろしく」
「はい、よろしくお願いします」
「私、ルーナっていう。よろしく」
ご主人様に、私は名乗った。もう片方のご主人様のお仲間らしき人物はルーナと名乗った。私の目の前で敬語云々の話をしているため、もしかしたら付き合っているかもしれない。または許嫁。一応、敬意を払っておく。すると、ご主人様は私の服について話し始めた。ルーナ様は一応服を貸してくださると言っていましたが、サイズが合わないと自分で却下していた。あと、ご主人様が謝っていた。
「ご主人様、私の服は大丈夫です」
「いやいや、大丈夫じゃないだろ。あと、ご主人様はちょっと抵抗があるような感じだなぁ」
「買ってもらった以上、ご主人様と呼ば差せていただきます」
「....まぁそれはいいとして、服は大丈夫じゃない」
私の服は大丈夫と言うと大丈夫じゃないと抵抗された。あとご主人様っていうことも抵抗された。しかし、奴隷となった以上ご主人様はご主人様なため、ここら辺は無理やり突き通した。しかし、服に関しては許してくれることはなかったためご主人様が来ていたローブを私に着させてくれた。ついでにフードもとお願いされた。逆らえないので、素直にフードを付ける。そして、私たちは表通りに出た。
宿屋に着いて、なぜか全員相部屋になった。そこらへんは別に構わないのだが、ご主人様と同じベッドなため少し緊張する。そんなことを思っていると、ご主人様は椅子に座り作業を始めた。バックから取り出したのは、素人の私から見ても質の高い武器3つ。1つだけ錆びており微妙だがほかの2つが圧倒的だ。禍々しい鎌に暗殺などで使われそうなクナイ。全く持って図れない。私は、ルーナ様に話しかけた。
「ルーナ様」
「ん?何かあった?」
「ご主人様が持っているあの武器って何ですか?」
「あぁ、あれはすごい。エンシェントワイバーンのかたい首を一刀両断した鎌、音もなく忍び寄って背後をとれるクナイ、錆びていても関係なく群れを瞬殺できるバタフライナイフ。正直、かないっこない」
説明を聞いて理解した、強い。あの武器は強い。そして、あの武器を扱っているご主人様もすごい。おそらく、相当な実力者なのだろう。私は、ご主人様の気になるところを片っ端からルーナ様に質問した。付き合ってるんですかと聞いたときだけ、ルーナ様がタジタジしていた。まだだそうです。そんな会話をしていると、ご主人様は寝てしまった。....あれ?私をそういうことシたいから同じベッドにしたんじゃないの?
次の日、私は襲われることなく爆睡をかました。自分の容姿には割と自信があったのだが、ここまでされるとさすがにしょげそうになる。あ、口に出てしまった。....申し訳ございません!私に暖かい食べ物が出された。足りなかったとは言いたくない。今日は冒険者ギルドに行くらしいので、私も支度をする。ご主人様、そのクナイを私の手に置いてどうしたのですか。ちょっと待ってください!先に行かないでください!結局、行き途中で返した。
到着すると、ルーナ様が頑張っていた。ファイトです。ご主人様とルーナ様はは受付に向かい、いろいろと書類やらなんやらを書いていた。すると、なぜかご主人様がギルド長に呼ばれた。ギルド長と会話していると、まぁいろいろな単語が飛び回った。『
ステータスをのぞかせていただくと、失礼ながらも興奮してしまいました。ですが仕方がなかったので、呪い削除なんてこの世を探しても多分2人いるかどうかですので。ハイ、今後も気を付けます。
えっと、あんまり覚えていませんが整理します。私は確かドラゴンノブレスを浴びてボロボロになったはず。確かに傷があるが、生きている。起きれば、洞窟の中であおむけで寝ていた。起き上がれば、私よりも重症なご主人様が目に映った。右腕がなく、確かにステータス通り再生はしているが出血が止まっていない。私は怒った。確かに奴隷になった身で言うのはおこがましいことだが、こればっかりは言わないといけないと感じてしまった。まだ、ご主人様には完全な忠誠を誓っていなかったがあのやさしさからしていつか誓うものだと思っていた。しかし、なぜこんなところで自分の身を削ってしまうのか。私は...怒った。しかし、ご主人様は私を生かしてくれた理由を長文で言ってくれた。正直、うれしかった。ここまで私のことを必要としてくれることがうれしかった。私は、ここで彼への、ご主人様への忠誠を誓った。
でも、私は忠誠を誓ったはずなのに守ることすらできなかった。瘴気、戦闘時は瘴気魔として遭遇した。まさか瘴気なんかに会うとは思ってもいなかった。逃げようとしたが、ふさがれた。気づくと、ご主人様は飛ばされていた。私の視界の真ん中で壁にぶつかった。私はすぐに助けようと動くも、瘴気魔に腹部を思いっきり殴られてしまった。飛びそうになる意識を何度も戻し、目の前にいる瘴気魔に対抗しようとした。すると、ご主人様が私を助けてくれた。瘴気魔は完全にシリルに夢中になっており、シリルとの激闘が目の前で繰り広げられた。しかし、シリルは1度も傷を与えられることもなく敗退した。目の前では忠誠を誓ったはずのご主人様が倒れており、瘴気に乗っ取られている最中だった。止めたかった、でも恐怖で動くことも、声を出すこともできなかった。私は、吐血しながらご主人様が痛みに耐えるところを見ることしかできなかった。
私は、弱かった。
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